Angelic Serenade(天使の歌う小夜曲)
それはある日のこと…部屋にはみどりとご主人さまのみしかいないようだった…。
「ご主人さまぁ」
「ん?どうしたんだい、みどり」
「みどりさん、ご主人さまに聞いて欲しい歌があるんれすけど」
「え?珍しいな、みどりが聞いて欲しいって言うなんて」
「むー、それは偏見れすよ」
「いや、ゴメンゴメン」
「それじゃあ聞いてくれるれすね?」
「うん、勿論だよ」
と、みどりはCDラジカセを取り出した。
「え?マイクを持ってるってことは、みどりが歌うのかい?」
みどりの手にはどこから取り出したのか、マイクが準備されていた。
「そうれすよ。れも、みどりさんだけじゃないれすけどね」
「え?」
「それじゃあ聞いてくらさい、天使の歌う小夜曲れす」
ピッ ウィーン
CDのボタンが押され、曲が流れ始めた。
♪フー…フー…フーーー… (前奏) …ツっタンっ
「♪は〜ねに〜にみ〜ちびかれ〜…」
部屋に響き渡るみどりの歌声…
ガタガタガタっ
その歌声を合図に、押入れから二人の天使が出てきた。
「あれ?ももにつばさ、どうしたんだい?」
「ボクたちもこの曲を歌うんだ」
「あの…その…ももが2番を…歌うんです」
「それでボクが、3番を歌う事になってるんだよっ」
「どうしてなんだい?」
「それは…この曲の…2番の歌詞が…ももにぴったり…なんです…」
「この歌に出てくる『羽』ってボクにぴったりだと思うし、歌うのが好きだからだよ」
「なるほどね」
「…か〜なしみの〜セレナーデ〜♪」
と、みどりが一番を歌い終えた。
「はい、ももちゃん。バトンタッチれすよ」
「え…もも…マイクは…電気だから…」
「んー、しょうがないれすねぇ…。じゃあももちゃんの下で、持っていてあげるれすよ」
「あ…ごめんなさい…みどりお姉ちゃん」
「いいのれすよ。あ、そろそろ2番が始まるれすよ」
「はい…」
♪…(間奏)…ツっトントンっ
「♪こ〜とば〜に〜出来ないの〜…」
部屋に通るももの歌声…小さいけれども優しい歌声であった。
「あ、本当だ。もものことを歌ってるみたいだな…」
「みどり、どうやってこの曲を手に入れたの?」
「それはれすねぇ…近所のお兄さんに聞かせてもらったのれす」
「へえ…それで?」
「それれ、みどりさんがその曲が欲しいと言ったら、このCDをくれたのれす」
「そうなんだ。あれ?そういえば、この曲の題名って何だったっけ?」
「天使の歌う小夜曲だよ、ご主人さま」
「天使の歌う…かぁ…」
「きっと…みどりさんたちのための歌れすよね」
「うん、そうかもしれないね」
「…あ〜たらしい〜セレナーデ〜♪」
と、2番を歌い終えたもも。
「恥ずかし…かったです…」
「上手だったよ、もも」
「そ…そんな…」
「ちゃんと伝わってきたよ、ももの想い」
「………」
すっかり顔を紅くしてしまったもも。
ぽふっ
ももはそのまま、ご主人さまの胸に顔を埋めてしまった。
「みどり、マイクくれる?」
「はい、つばさ姉さん」
「ありがと」
♪…(間奏)…ラーラー
「♪手〜を〜伸ばして〜…」
つばさの澄んだ歌声が、部屋に響き渡る…。
「…あ〜な〜たとなら〜♪」
そしてつばさだけでなくももとみどりも、ご主人さまを見つめて…
『『『怖くない…』』』
その重なり合った言葉には、底知れぬ「何か」が込められていたようだった。
「♪伝えたいの…」
「それにしても、何でみどりが持ってきた曲を二人とも知ってるの?」
「それは…ご主人さまのいない時に、みどりお姉ちゃんに…聞かせてもらったんです…」
「つばさ姉さんにも聞かせてあげたのれすよ」
「もも…こんな曲だったら…歌ってみたいなって思ったんです…」
「それで練習したんだ、3人とも」
「そうれす、一生懸命ご主人さまに想いが伝わるように練習したれすよ」
「うん、充分伝わってきたよ」
「ほ〜しぞらへ〜きえてゆく〜♪」
…(後奏)…タタタタタターン…♪
後奏が流れ終わって、曲が終わりを告げた。
「どうだった?ご主人さま」
「うん。みんなの気持ち、伝わったよ」
「やったぁ!」 「やったれす!」 「…よかった…」
「えっとじゃあ、4人でどこか行こうか?」
「え、どうしてれすか?」
「だって、『手を伸ばして連れ出して欲しい』んでしょ?」
「確かに歌ったけど…いいの?ご主人さま」
「うん、何だか出掛けたい気分になっちゃったし」
「…もも、ご主人さまがいれば怖くないです…」
「うん、じゃあみんなで出掛けよ」
「うんっ!」 「はいれすっ!」 「はい…」
めいめいに出かける準備を始める4人であった…。
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あとがき
私の好きなゲーム、AS〜エンジェリックセレナーデの歌詞から、突如思いついて書きました。
さすがに歌詞を全部載せるのは拙いので、こういう形のSSといたしました。
しかしながら今回は、微妙にバランスが取り辛い3人の組み合わせだったなぁ…。
つばさもちょっと微妙になってしまったし…。
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2004・05・17MON
雅