Wannabe Girls(“女の子”になりたくて)
ガラガラガラガラ
「ふー…夜でもやっぱり暑いの…」
夜のベランダへと一人出てきた少女、くるみである。
「でも…風呂上りの身体には…気持ちいいの」
言われてみればくるみの髪にはお団子が無く、全ての髪が下ろされている。
と、そこに…
ガラガラガラガラ
「あれ?くるみ、どうしたんだい?ベランダに出てるなんて」
「あ、ご主人さま…。何でもないの、なんでも」
「そうなのかい?」
「うん、そうなの」
「(何だか可愛いな、くるみ…)」
風呂上りの少し艶かしいくるみに、つい見入ってしまうご主人さま。
「ん?ご主人さま、くるみの顔に何かついてるの?」
「え・いや、何でもないさ。くるみがちょっと可愛かったから見惚れてただけさ」
「えっ…(ぽっ…)」
俄かに顔が紅くなるくるみ。
「髪も下ろしてるしさ、普段と違った雰囲気で可愛いよ」
「ご主人さま、えっと…ありがとうなの」
ぎゅっ
くるみは手すりに手をかけていたご主人さまへと抱きついた。
「くるみ、どうしたんだい?」
「えっとえっと…ご主人さま」
「何だい?」
「くるみって、女の子らしいの?」
「えっ!?」
「くるみ、分からないの。いっぱい食べたり、子供っぽかったり…」
「えっと…」
「同じ歳くらいの子に比べて、女の子らしくないと思うの…」
「そんなことで悩んでいたのかい?」
「えっ…?」
「何て言うか、くるみは心配性だな…」
「…そうなの?」
ぎゅぅっ
ご主人さまはくるみを抱きしめ返した。
「くるみは、何をするのが好きかな?」
「えっと…いっぱいご飯を食べたり、お昼寝したり…色々あるの」
「そうだよね、それがくるみの個性だと思うんだ、僕は」
「個性…なの?」
「うん。じゃあその個性を失くして、女の子らしくなりたいかい?」
「…よく分からないの、でも…」
「ん…でも?」
「でも、ご主人さまが好きなくるみになりたいの」
「僕の好きなくるみになりたいんだね」
「そうなの」
「じゃあ…」
ぎゅっ
ご主人さまは抱きしめる腕を一層強めた。
「んっ…ご主人さま!?」
「僕は…僕は、くるみは今のままで良いと思うよ」
「今のままでいいの?ご主人さま」
「うん、何て言ったらいいのかな…くるみはくるみのままで居て欲しいなって思うんだ」
「こんなくるみでもいいの?」
「もちろんさ。今のくるみが、僕は大好きだからさ」
「ご主人さま…ご主人さま…」
ぎゅぅっ
くるみはご主人さまへ抱きつく力を強め…
「ぐすっ…ご主人さま…うん…分かったの…」
「泣くことはないだろ、くるみ」
「ううん、嬉しかったの。嬉しくて泣いてるの」
「えっ…嬉しくて?」
「うん、嬉しいの。だってご主人さまがくるみのことを見ててくれてるって分かったからなの」
「くるみ…」
くるみはしばらくご主人さまの胸に幾本もの線を描き続けた。ご主人さまはその気持ちをしっかりと抱きとめていた。
………
しばらくした後のベランダ、床へと座っている二人の姿がそこにはあった。
「くるみ、明日はどうしたい?」
「え?明日って何なの?」
「明日はくるみの誕生日じゃないか、忘れてたのかい?」
「あ〜、すっかり忘れてたの。エヘヘっ」
すっかり笑顔を取り戻したくるみの顔。
「くるみね、ご主人さまと一緒に過ごせればそれでいいの」
「んー、じゃあどっかに出かけようか」
「うん、そうするの」
「それじゃあどこに行きたい?」
「んー…どこでもいいの?」
「いいよ、くるみが行きたい場所ならどこでもね」
「それなら………に行きたいの」
「別に誰も聞いてないんだし、そんなひそひそ話さなくたっていいのにさ」
「ううん、ご主人さまだけに聞いて欲しかったの」
「…そっか」
くしゃっくしゃっ
ご主人さまはすっかり乾ききったくるみの髪を撫でた。
「んっ…くすぐったいの…」
「じゃあやめようか?」
「ご主人さま、意地悪なの。気持ちいいから止めないでほしいの」
「僕もだよ。くるみの髪、触り心地がとても良くて気持ちいいよ」
「そうなの?何だかちょっと恥ずかしいの…」
「もっと触ってていい?」
「うん、もちろんなの」
二人の間は時間がゆっくりと進んでいるかのように、その営みはしばらく続いていた…
………
「あれ?寝ちゃったのかな?」
くぅ…くぅ…
くるみはご主人さまの肩に頭を預けて眠りに入っていた。
「可愛いよ、くるみ」
チュッ
ご主人さまはその頬へと唇を被せ、お姫様だっこで寝床へと運んでいった…
………
翌朝…
「それじゃあ行ってくるね」
「行ってくるの〜!」
二人の声が朝の玄関へと谺した…
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あとがき
久々の当日仕上げ、しかも短いときたもんだ。雅です。
誕生日SS7本目(管理人BSS含む)、今回はくるみの女の子らしさを引き出したくこういうSSにしました。
なので、ちょっと長く書けなかったんですよ。
くるみは女の子らしさを引き出すことで、本当のらしさが出るキャラな気がします。
次はみか・あかねですね、夏季休業期間中ですのでゆっくり確かなものを書こうと思います。
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2005・08・06SAT
雅