VIVA! NOVA!(星々が騒ぐ日)
それは梅雨も明けきらぬ七夕の日の夕方のこと…
「ご主人さま、準備できました?」
「うん、オッケーだよ。ジュンの方こそ大丈夫かい?」
「うんっ、バッチシだよっ!」
二人は夕涼みとあることを兼ねて、出かける予定を立てていたのだ。
ばたんっ ガチャンっ
家を出たジュンの手にはお弁当と両手サイズの箱が、ご主人さまの手には荷物があった。
「んー、まだ暑いね…」
「そうだな、ジュン。梅雨とは言え、もう夏だしな」
「うん、もう夏なんだね」
「じゃあ行こっか。はい、鍵だよジュン」
「ありがと、ご主人さま」
かちゃっ がちゃんっ
二人は自転車の鍵を開いた。
「あっとジュン、行く前にっと」
シューーー シューーーー
ご主人さまはジュンと自分へと虫除けスプレーをかけた。
「あ・ありがとうございます、ご主人さま」
「よし、今度こそ行こう」
「はいっ!」
ガタンッ ガタタンッ
二人はストッパーを外して、小高い丘の方へと自転車を走らせ始めた。
「着いたね、ご主人さま」
「うん、結構かかっちゃったね」
二人が来たのは街の中でも小高い丘の上。七夕の今宵、二人は天の川を眺めにここへ来た。
「じゃ、暗くなる前にご飯を食べちゃおうよ」
「そうだね、暗くなったら見えなくなっちゃうしね。」
バッ ぽふんっ ぽふっ
ご主人さまはシートを広げ、二人はその上へと腰を下ろした。
「はいご主人さま、おしぼりだよ」
「ありがと、ジュン。はい、コップね」
「ありがとうございます。ご主人さま、どっちを飲む?」
「んー、じゃあ麦茶を貰おうかな。ジュンはどうする?」
「アタシもご主人さまと同じにするよ」
コポポポポポ コポポポポポ
二人のコップへと麦茶が注がれていく。
「それじゃあ、ジュンの誕生日を祝って…」
「「カンパーイ」」
とんっ こくんこくっ ごくっごくっごくんっ
「はあっ…誕生日おめでとう、ジュン」
「はぁ…ありがとうございます、ご主人さま」
そう、今日は七夕であると共にジュンの誕生日でもあったのだ。
カチッ ぽっ…ぽっ…
二人だけのための小さなケーキの蝋燭に火が灯される…
「さ、消してよジュン」
「あ、ご主人さま。二人で消しましょ」
「え、いいのかい?」
「うん、だってアタシの大事なご主人さまだから…」
「え・あ、うん…。それじゃあ、せーの…」
フーーー
「ん、あらためて誕生日おめでとう、ジュン」
「ありがとうございます、ご主人さま。もうすぐ暗くなっちゃうしご飯食べましょ」
「あ、そうだね。せっかくの料理が冷めちゃったら美味しくなくなっちゃうし」
「え・あ…そんなでも…。
「ううん、ジュンが作ってくれたものなら何でも美味しいさ」
「そ・そんなこと…」
ぴとっ
ご主人さまはジュンの唇へと人差し指を置いた。
「それ以上は言いっこなしだよ」
「(ぽっ…)は…はい…」
「それじゃあ食べようよ」
「そ・そうだね、ご主人さま」
………
「ふー、食べた食べたっと」
「おそまつさまでした、ご主人さま」
「あ、ちょっと。ご飯粒が付いてるよ、ジュン」
「え、どこにですか?」
「取ってあげるよ、動かないでね」
チュッ
「ご・ご主人さまったら…」
「ごちそうさまでした、ジュン」
ご主人さまは少し紅い笑顔でそう答えた。
すっかり辺りも暗くなり…
「星…綺麗だな、ジュン…」
「そうだね…ご主人さま…」
満天の星々…空に流れる天の川…二人は唯々その空を見入っていた。
ぽふっ
「ご主人さまったら…」
「ジュンも寝転びなよ、こっちの方がよく見えるさ」
「え…でも…」
「ほら、ここに頭を乗せてさ」
ご主人さまはジュンへと右腕を差し出した。
「え・えっと…いいの?」
「ダメだったら出さないさ。それに今日はジュンの誕生日なんだしさ」
「そ・そうだけど…」
「ほら…さっ!」
ぎゅっ ぽふっ
ご主人さまは躊躇っているジュンを引き込んで、隣へと寝かせた。
「キャッ!ご主人さま…」
「ほら、よく見えるだろ」
「…そうだね…(ご主人さまの顔がこんなに近くなんて…)」
「ん?どうしたんだい、ジュン」
「何でもないから…うん、何でも…」
「???…(そっか…ジュンの顔がこんなに近くに…ジュンもそう思ったんだな。)」
二人は何をすることもなく、唯々相手を意識しながら空を見上げていた…
………
「なあ…ジュン…」
「何ですか…ご主人さま…」
「僕はジュンが…僕の守護天使で良かったって思ってる…」
「アタシも…アタシもご主人さまの守護天使になれて…嬉しいよ…とっても…」
ぎゅうっ ぎゅっ チュゥゥッ
二人はどちらからともなく抱き合い、口付けを交わした。
「…帰ろっか…」
「…うん…」
二人が居た大地へと挿された笹、そこには唯二枚の短冊が下がっていた。
一陣の風…二枚の短冊は寄り添うようにぴったりとくっ付いた。
『いつまでも ジュンと一緒に 居られますように』 『いつまでも ご主人さまと一緒に 居られますように』
満天の 星霜の下 一陣の 風に寄り添う 二枚の短冊
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あとがき
まずはワンダバ・ダンさん、申し訳有りませんでした。ジュンを勝手に使用してしまいました事をお詫び致します。
よし、まずは謝罪終了っと。
で、今回のは少し短めになりました。学校で草稿を考えていたので手書きだったもので…。
しかしながら、ジュンでこれだけ長いのは私自身初めてだったので、言葉遣いとか微妙なとこが多いです…。
これで今期5本目(うち1本オリジナル守護天使小説)、今回のタイトルはちょっと特徴的かなぁ…。
ゆっくりゆっくり少しずつ…ですね。
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2005・06・28TUE
雅