trust you(あなたを信じます…)
ガタンガタン ガタンゴトン
あゆみとご主人さまの二人は、帰りの電車の隣同士で座っていた。
「あ…雪…ですわ…」
「あ…本当だ…」
「綺麗ですわね…」
「うん…本当に…」
「今年のクリスマスはホワイトクリスマスになりますでしょうか?」
「さあ?どうだろうね。ま、僕はどんなクリスマスでもいいけどね」
「それはどのような意味ででしょう?」
「守護天使のみんながいてくれるクリスマスなら、どんなクリスマスでも大歓迎だってこと」
「それも…そうですわね…」
「君たちがいなかった頃は…一人でずっと…寂しかったからね…」
「そう…ですわね、ご主人さま…それまでに…12回の別れを経験されてたんですものね…」
「うん…でももうみんながいてくれる…それだけで十分だから…」
「まあ…」
その時…
がたんっ ちゅっ
電車が揺れた所為で、話すために横を向いていた二人の唇が重ね合わされた。
「…あゆみ…」
「…恥ずかしいですわ、こんな公衆の面前でこんな事をしてしまうなんて…」
「ま…いいか…大好きなあゆみの唇だったし…」
「そんなこと言わないで下さいな…恥ずかしいですのに…」
あゆみはいっそう顔を紅くして、そう応えた。
がたたんがたたんがたん シューーー プシューー
どうやら二人の乗った電車は、ある駅に到着したようだ。
たーたたーたたた たーたたたーたたた たーたーたーたたたたー
プシュー
ところが電車はドアが閉まっても、なぜか動き出そうとしない。そこに放送が入り…
『えーお客様にお知らせをいたします。ただいま当駅と次駅の区間におきまして、架線の氷着による一時運休を行っております。ただいま当駅と…』
「止まっちゃったのか…」
「そう…ですわね」
「ま…しょうがないか…」
「ん…でも…」
「でも…何だい?」
「ご主人さまと一緒に居られる時間が…それだけ長くなるので…私は…嬉しいです」
ぴたっ
「ん?あゆみ?」
「寒いので少しだけ寄り添わせて下さいな…」
もちろん、車内は暖房が効いていて寒いはずなどはない。
「えっ…そんなにさむ…」
ぴとっ
あゆみはご主人さまの唇に人差し指を付けた。
「いいんですの、少しだけ…こうさせて下さい」
「え…あ、うん…」
………
5分後…
「くぅ…すぅ…」
あゆみはご主人さまの肩に頭をあずけながら、寝てしまっていた。
「あ…あゆみ…寝ちゃったのか…」
「すぅ…ふぅ…」
「まあいいか、このまま寝かせてあげておこう…今日は色々あってあゆみも疲れただろうし…」
ご主人さまは肩に心地良い重みを感じながら、未だに座席についていた。ふいに…
がたんっ
『大変ご迷惑をおかけしました。架線の氷着が無くなりましたので、運転を再開いたします』
発車したために、電車が大きく揺れた。
「んくっ!」
「あ、あゆみ…おはよう」
「あ…ご…ご主人さま。ご主人さまの肩に頭をあずけるなんて…私としたことが…」
「いや、いいんだよ。だって今日は色々回ったから疲れただろ、あゆみ」
「は・はい…ですけど…」
「だからいいよ、そんなこと気にしなくてもさ」
「ん…それなら…甘えさせてもらいます…」
ぴたっ ぽんっ
あゆみは再び、ご主人さまの肩に頭をあずけた。
「あ…温かいです…ご主人さま…」
「うん…あゆみも…温かいよ…とっても…」
二人は暫く何も話すことなく…電車に揺られ続けた。
………
「あ…もうこんな駅か…」
二人の乗った電車は、降りる駅の何駅か前に止まっていた。その頃、雪はすっかり止んでいた。
「そろそろあゆみを起こさないと駄目かな…」
つんつん
ご主人さまは寝ているあゆみの頬を突付いた。
「くぅ…くぅ…」
「んー、だめか…じゃあやっぱりこれかな」
チュッ
ご主人さまはうまく顔を回して、あゆみの頬にキスをした。(公衆の面前でするなっつーのby 作者)すると…
「あ…ご主人さま…」
「おはようあゆみ、もうすぐ着くよ」
「あ…本当ですわね…私そんなに眠ってましたか?」
「う…うん」
「はあ…でもご主人さまの温もり…とても気持ち良かったですわ」
「えっ、そうかい?」
と、少しだけ顔を紅くするご主人さま。
「はい、とても。何か暖かい物に包まれた…そんな感じがしましたわ」
「でも僕も…」
「はい?何ですの?」
「可愛かったよ、あゆみの寝顔」
「う…そんな…恥ずかしいですわ…」
「そうかい?とても気持ち良さそうに寝てたけどさ」
「でも…いいです…。ご主人さまになら見ていただいても」
「え…そうかい…?」
「はい…。あ…また雪…ですわね」
「本当だ…」
「このままクリスマスまで降り続いてくれるかな…」
「そう…ですね…このまま…ホワイトクリスマスに…なって欲しいですわね…」
そして二人の乗った列車は、降りるべき駅のホームへと滑り込んでいく…。
………
電車を降りた二人、この駅で降りた乗客は彼らだけであった。
チュッ
ホームの上で二人はもう一度だけキスをした。
そんなあゆみの指には今日ご主人さまがプレゼントした、6角形のトルコ石が付いた銀色の指輪が光っていた…
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あとがき
ああ…久しぶりの新作になります…雅です。
まあ、新潟は電車が遅れるような事があっても止まる事はありませんがね。
助けてください…グラフが…Excelのグラフが相当やばい事に…
あ、そうそう。今回は共通点を発表します。
共通点はずばり、「林原めぐみさんの曲名」です。(英題・和題のいずれかが)
ちなみに、みどり・るる・もも・くるみ・あゆみは英題の方が、みか・あかね・ななは和題の方が曲名です。
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2003・10・25SAT
雅