Let's go to town(街へ出よう)

雪もようやく溶け始めてきた、2月も下旬の事…
「ん〜…やっぱりコタツは気持ちいいですね、ご主人さま」
「うん、そうだね…温かくて…」
「でも…」
ぽふっ
たまみはご主人さまの腿の上に頭を預けた。
「ここが一番温かいです…」
「………」
「ご主人さま…気持ちいいですぅ…」
「…そうかい?」
「そうですよ、ご主人さま…温かくて…気持ち…いい…で…すぅ……」
どうやらたまみは、そのまま眠ってしまったようだ。
「ああっ!たまみ起きてよ、明後日の事決めるんでしょ」
「…んにゃあ…そうでした…」
「だから起きて、たまみ」
「ん…分かりました」
少し残念そうに、ご主人さまの腿の上から離れるたまみ。
「でもそんなに気持ちいい?僕の上」
「はい、ご主人さまの匂いとご主人さまの温もりが直に伝わって、気持ちいいんです」
「そっか…」
「ご主人さま、本題に移りましょう」
「あーそうだった。それで、明後日はどうする?」
「んー、そうですね…また一緒にお買い物がしたいなぁ…なんて」
「うん、いいけど…大丈夫かい?」
「え…何がですか?」
「車…大丈夫?去年は大丈夫だったけどさ」
「あ…そうでした…」
「んーとじゃあ、今年は歩きにしよっか」
「そうですね、そうしましょう」
ぽふっ
たまみは再びご主人さまの腿に頭を預けた。
「それではおやすみなさい…ご主人さまぁ…」
「ちょっ・ちょっと…まあ…いいか…」
ご主人さまも腿から伝わるたまみの重みと温もりを感じた…。
 
2日後…
「たまみー、起きてよー」
「ん…んにゃぁ…くぅ…すぅ…」
やっぱり寒さには余り強くないたまみ。
「だから起きてってば…」
ゆさゆさ
「ん…あ…ご主人さま…おはようございます…」
「おはようって、もう10時だよ」
と、時計を見るたまみ。
「ええっ!?どうして起こしてくれなかったんですか、ご主人さま」
「だって、いくら起こそうとも起きないからさ」
「だって…今日は寒いですし…」
「ま、とにかく行こうよ、もう店も開いちゃってるしさ」
「そうですね。あ、ちょっと着替えるまで待ってください」
「うん、さすがにパジャマじゃ無理だろうしね」
「ご・主・人・さ・ま?」
「ん、何だい?」
「女の子の着替えを見てる気なんですか?」
「あ、ごめんごめん。今出るから」
ばたんっ
ご主人さまは脱兎の如く、その場から立ち去った。
「まったく…でも早く着替えないとですね」
たまみは急いで着替え始めた。
………
「「行ってきまーす」」
「「「「「「「「「「「いってらっしゃーい」」」」」」」」」」」
ばたん
と、10時半くらいにようやく出かける事になった二人…
「それじゃあどこに行く?」
「そう…ですね…たまには大きいお店に行きたいです」
「じゃあ、デパートにしようか」
「そうですね、ご主人さま」
「よし、行こう」
「あ…でもその前に…」
「何だい?たまみ」
「手、繋いでください」
「どうしたんだい?たまみ」
「こうすれば、少しは車が怖くないと思いますから…」
「…そっか…はい」
ぎゅぅっ
たまみはしっかりと、ご主人さまの手を握った。
「よし、じゃあ行こうか」
「はい」
二人は街へと歩みをいった。
………
そこは交差点、やはり車通りは多い。
「ううっ…ご主人さま、怖いです…」
「大丈夫だって、別に車が襲ってくるわけじゃないんだしさ」
「はい…でも…」
「ほらたまみ、次に信号が青になったら渡るよ」
「はい…」
「大丈夫だって、何のために手を繋いだんだい?」
「そうですね。たまみ、頑張ります」
…と何だかんだこんな事があって、普段なら40分くらいのところを1時間くらいかけてデパートに着いた。
「それで、何が欲しいんだい?たまみ」
「えっとですね…」
と、考え込んでしまったたまみ。
「ん、どうしたんだい?」
「実は何も無いんです」
「え…買いたい物がかい?」
「そうです、たまみが欲しいものが…思いつかないんです」
「うん…えーっと、じゃあ…」
ご主人さまは何かを閃いたようだった。そしてその売り場まで、たまみを連れていった。
………
デパートから出てきた二人。
「ご主人さま。こんなに良いカバン、ありがとうございます」
ご主人さまがプレゼントした物…それは、新しいカバンだったのである。
「もう何年も使ってたでしょ、前のカバン。だからそろそろ、休ませてあげてね」
「はい、ご主人さま」
「それじゃあ帰ろうか」
「そうですね。あ、その前にちょっといいですか?」
「ん、何だい?」
「ちょっとだけ…たまみのこと持ち上げてください」
「…えっと…こうかい?」
ご主人さまの唇とたまみの唇が最短距離になった瞬間…
チュッ
「たまみっ!?」
「これは…今日のお礼です」
「…ま…いいか…」
「それでは帰りましょう、ご主人さま」
「そうだね、それじゃあ…はい」
と、ご主人さまは手を差し出した。
ぎゅうっ
「ご主人さまの手…温かいです…」
たまみはご主人さまの手をおもいきり握り締めて、家路へとついた…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
2004年度誕生日SSの11作目です。これであとはらんを残すのみ、今年中に終わりそうです。
また今回も、ギリギリでさし切りました。
2005年度はおそらくBSSは書きません。
なのでこの2004年度分でBSSは最後になります。
今回はある程度までは悩まずに素直に書けました。唯一睡魔との闘いが(笑)。
あと、1作。今年中には…終わらせますっ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2003・11・29SAT
短編小説に戻る