Touch Yourself(あなたに触れていたい)
それは風が少しずつ温もりを増した3月も下旬のこと…
「んんーっ…」
「あ、おはようございますご主人さま」
「おはよう、ら…んっ!?」
「どうかなさいましたか?ご主人さま」
「どうしたもこうしたも…らん、その格好はどうしたんだい?」
「え…この格好って駄目でしょうか?」
そう、らんは自分のメイド服とはちがう、どちらかと言えばP.E.T.S.のみどり型の茶色っぽいメイド服を着ていた。
「いや…いいんだけどさ、いきなりだったからびっくりしちゃってさ」
「でも、この格好…ある方を真似ただけなのですけどね」
「え…それって…」
「ご主人さま、そんな事より朝ご飯食べましょう」
「う…うん、そうだね」
いつもと少し違うらんの魅力に少し心奪われたご主人さまであった。
………
「行ってくるね、みんな」
「行ってきます、皆さん」
「「「「「「「「「「「行ってらっしゃ〜い」」」」」」」」」」」
と、一緒に家を出た二人。
「こうしてご主人さまと二人だけで出かけられるなんて…夢みたいです」
「う…うん、そうだね…去年も一昨年も…ね」
「はい、だからご主人さま…」
と、らんは手を差し出した。
「うん、いいよ」
ぎゅっ
ご主人さまはらんの手を握り返した。
「ご主人さまの手…温かいです…」
「らんの手だって…気持ちいいさ」
二人は手を通して互いの温もりを感じあった…。
「それで、どこに行きたい?」
「…そう…ですね、ご主人さまの行きたい所でいいです…」
「そんな…らんは、行きたい所は無いのかい?」
「らんは…ご主人さまのそばに居られる事が一番の幸せですから…」
「そっか…でもさ、たまには自分の意思っていうのを持って欲しいな」
「そうですか…それなら…」
「ん、それなら?」
「それなら…らん、ちょっと行ってみたい所はあるんですけど」
「ん、どこだい?」
「隣の市の商店街…なんですけど、駄目ですか?」
「そんな所でいいの?」
「はい、そこに可愛い物がいっぱいのお店が、リニューアルして出来たみたいなので」
「そっか、じゃあとりあえず駅まで行こうか」
「はい、ご主人さま」
二人は手をぎゅっと繋いだまま駅に向かって歩いていった。
………
と、駅に着いた二人…
「えっと…隣の市は…」
「そうですね…あの駅になりますでしょうか」
「そうだとすると…320円か…」
「そうなりますね」
「じゃ、320円2枚っと…はい、らん」
「ありがとうございます、ご主人さま」
「えっとじゃあ次の列車は…10分くらいで来るか、ホームで待ってようか」
「そうですね」
そして隣町の駅に着いた二人。
「はぁ…やっぱりここは駅も大きいですね、ご主人さま」
「うん。そういえばらんはここに来たのは初めてかい?」
「いえ、でも久しぶりになりますね」
「そっか…じゃあその商店街の場所は分かるのかい?」
「はい…ここからバスで10分くらいの場所です」
「それだとあの商店街か…うん、じゃあ行こうか」
「そうですね、ご主人さま」
二人はバス乗り場へと向かっていった。
………
「やっぱり地元の商店街より大きいですね」
「うん、やっぱり少し都会になるからね」
その商店街は、地元でもかなり大きな市にあるだけあってやはり広い。休日も重なってそれなりに混んでいる。
「これだけ大きいと、迷ってしまいますね」
「うん。そうだらん、店の位置は分かるの?」
「はい、大体の場所は分かります」
「じゃあ行こう」
「はい。その前に手…繋いでくれませんか」
「…うん、いいよ。大事な僕の天使と離れ離れになったら困るしね」
ぎゅっ
二人は手を繋いで、目的の店へと向かっていった。
………
「あ…ご主人さま、この店です」
「こんな店、あったんだ」
「はい、前に一回来た事があったものですから」
「じゃ、入ろうか」
「そうですね」
カランカラン
「いらっしゃいませー」
その店の中はファンシーグッズが数多く陳列されていた。
「………」
「どうかされましたか?ご主人さま」
「いや…ちょっと気恥ずかしくてさ」
「確かに…そうかもしれませんね…」
確かにこんな店の中に居る男性は珍しいものである。
「でもたまにはいいかな、こんな感覚も」
「それじゃあご主人さま、一緒に店の中を見て回りましょう」
「うん」
………
しばらくして店を出た二人…
「ご主人さま、今日は一日ありがとうございました」
「いや、いいんだよ。でも良かったの?それだけしか買わないでさ」
そんならんの手にある紙袋の中には可愛い金魚型の枕が2つ入っている。
「いいんです…これで毎日、ご主人さまのことを想って眠れます」
「僕のこと?」
「ご主人さまと同じ枕で眠れるなんて…らんは…とても幸せですから…」
「あ…そっか…」
「だから今日からご主人さまも…」
「うん、この枕で眠ってあげるよ」
「…ありがとうございます…」
「じゃあそこまで僕のことを想ってくれているらんに…」
チュッ
「ご・ご主人さまっ!?」
すっかり顔を紅くしてしまったらん。
「…じゃ、帰ろうか」
「…はい…ご主人さま」
そして二人は家路へとついた…
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あとがき
2004年度誕生日SSFINALです。
予定通り2003年中に終わらせました。
はぁ…自分にお疲れ様です。
あとBSSは残り1本書いて終わり…ですか…。(オリジナル守護天使の紅玲菜BSS)
とりあえず、これでBSSは一段落という事で、ある物に挑戦します。
最後にBSSシリーズを読んでくれた皆様、本当にありがとうございました。
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2003・12・14SUN
雅