See through Be true(ずっと真を見つめて)
『天敷〜…天敷〜…』
「あ、この駅れすね」
プシュー とんっ プシュー ガタンゴタンっ
みどりと数人を降ろして、その列車は次の駅を目指して走り始めた。
ガサガサっ
みどりは何やらポケットから紙を取り出した。その紙は…
時は今日の朝へと遡る。
「ん〜…朝れす…」
みどりは小さく欠伸をしながら起きた。そしてちょっとした異変に気が付いた。
「ふえ?ご主人さまが居ないれす」
そう、昨日から隣に寝ていたはずのご主人さまが居ないのだ。とりあえず起き上がり、周りを見渡すと…
「ん?あの紙は何れしょう?」
テーブルの上に一枚の紙切れと2枚の千円札を見つけた。そこには…
《みどりへ ここで誕生日プレゼントを渡すから、13時にここに来てね。このお金は、交通費とお昼ご飯代だから。》
と書かれていた。
「んー、どうしたんれしょう…れも行くしかないれすね」
と、そこに…
「あら、みどりちゃんどうしたの?」
「あ、あゆみ姉さんおはようれす。実は…」
と、みどりはあゆみに事情を話した。すると…
「いいですわ、いってらっしゃいみどりちゃん」
「いいんれすか?」
「もちろんですわ、確かここは…」
あゆみは行き先近くの駅までの電車を、みどりに教えてあげた。
「…あとはそこからバスが出てますわ、確か」
「ありがとうれす、あゆみ姉さん」
「それでは用意しましょうね」
「はいれすっ」
…と、まあそういうわけである。
「さて、行くれすかね」
みどりは改札口で切符を渡し、駅入口へと出た。時は11時半、多少の余裕はありそうだ。
「んー、バス停は…あ、あれれすね」
バスターミナルを見つけ歩いていくみどり。
「ふえぇ…どのバスれしょう…」
ちょっと大きな市ということもあり、バスターミナルは12番線ほどあった。
「んー…あ、案内所れす、あそこれ聞いてみるれすか」
と、みどりは案内所へと向かっていった。
………
「あのー、すみませんれす」
「はい、なんでしょう?」
「ここに行きたいのれすけど、どのバスに乗ればいいのれすか?」
と、さっきの紙を差し出すみどり。
「凛珠神社ですね、少しお待ち下さい」
しばらくして…
「えっと、8番線の升田行きですね、凛珠神社前で降りて下さい。だいたい50分くらいで、料金は180円です」
「お姉さん、ありがとうございましたれす」
「どういたしまして」
みどりは案内所隣の券売機で乗車券を買って、バスの時間を確かめた後、とある場所へと向かった。
「ん、これれOKれすね。あ、もうバスが来てるれすっ」
みどりはバスターミナルへとコンビニの袋を手に持って駆けていった。
「確かにこのバスれすね」
バスの横の表示を確かめつつ、バスへと乗り込んだ。バスの中はそこまでメインの路線でないのか、人影はまばらであった。
「ここに座るれす」
みどりはバスの真ん中らへんの左側の座席に腰を下ろした。
【11時50分発升田行き、発車します】
プシュー ブルンっブルロロロロロ
運転手の声とともにドアが閉められ、バスが発車した。
ポーン
『毎度ご乗車戴きましてありがとうございます、このバスは桃山・胡桃橋・沙雪大経由、升田回転場行きです。お降りの際はお近くのブザーでお早めに知らせ願います。次は天敷駅前通、天敷駅前通でございます』
繁華街を走り抜けていくバス、その風景に
「んー…何らか都会って感じれす」
そんな言葉を漏らすみどりであった。このバス停でも少し乗客が増えて、少し車内が賑やかになった。
『次は台琉瑠璃記念館、台琉瑠璃記念館でございます。お探しのペットが必ず見つかる、ペットショップCABINはこちらでお降りが便利です』
と、左を見るとそこには…
「うわぁ…大きい建物れす」
大き目の建物、記念館が見えてきた。そしてバスは海岸方面へと住宅街を進んでいく…
『次は北七瀬町、北七瀬町でございます』
キンコーン
【お待ちどうさまでした、北七瀬でございやす】
どうやらこのバス停で2・3人降りたようであった。
『次は七瀬町、七瀬町でございます。南七瀬町の風見歯科医院はこちらでお降りが便利です』
と、ここでみどりは前に向き直り、車内の人の観察を始めた。
「んー、あそこに居るのは親子さんみたいれすね…そこは学生さんれすかね…スーツ姿の人も居るれすねぇ…」
『次は桃山町1丁目、桃山町1丁目でございます』
その間もバスは目的地に向けて進んでいく…
『次は桃山郵便局前、桃山郵便局前でございます。あなたの心の休憩場、喫茶ECHOESはこちらです。癒しの空間で皆さんのお越しをお待ちしています』
「この匂い、もうすぐ海れすかね?」
みどりは少し窓を開けて、春の風の匂いを感じていた。
『次は湧玉港公園、湧玉港公園でございます』
と、急に視界が開け…
「あ、海れす…」
陽光にキラキラと光る静かな春の海、その景色にみどりはしばし見とれていた。
『次は緑町、緑町でございます。ホビーショップKennelは緑町一丁目、豊富な品揃えで皆さんのお越しをお待ちしています』
「ふえ?みどりさんの町れすか?」
[みどりちょう]の名に素早く反応するみどり、そして…
「あ…緑町だったんれすね」
前の電光掲示板を見て少し顔を紅くした。
『次は緑町二丁目、緑町二丁目でございます』
キンコーン
【お待ちどうさまでした、緑町二丁目でございやす】
バスはその停留所にて3人降ろし1人を乗せて、次の停留所へと住宅街を走り抜けていった。
『次は茜淵中学校前、茜淵中学校前でございます。結婚式は茜淵中学斜め向かい、聖Sanctuary教会で。最高の幸せのお手伝いを致します』
「あ、教会れすね」
みどりがふと右を見ると天辺に十字架のある建物、ステンドグラスの綺麗な教会が見えた。
「大きいれす…ここれご主人さまと…」
そんなことを少し想像してみた、みどりであった。
『次は胡桃橋西詰、胡桃橋西詰でございます』
バスは川へと差し掛かった。
「うわぁ、何らか綺麗れす…」
海とは違った水の光。緑も萌え出る時を向かえ、川辺は綺麗な対比色を描いていた。
『次は胡桃橋東詰、胡桃橋東詰でございます。高速バス雪守行きご利用のお客様、こちらでお乗換え下さい』
キンコーン
【お待ちどうさまでした、胡桃橋東詰でございやす】
バスはその停留所にて5人ほど降ろし、次の停留所へと向かっていく。
『次は厚場三丁目、厚場三丁目でございます』
「何らかお店屋さんも多いれす」
この辺は高速道が近いためか、郊外型の大きな店が多く立ち並ぶ地区になっていた。
『次は厚場ランプ橋、厚場ランプ橋でございます』
「んー、今日は車も多いみたいれすね」
それもそのはず、ここは高速道路の出入口。今日は休日の初日ということもあり、この辺に来ている車でどこも混雑しているようだった。
キンコーン
【お待ちどうさまでした、ランプ橋でございやす】
バスはその停留所にて4人ほど降ろし、高速道路をくぐっていった。
『次は鮎海小学校前、鮎海小学校前でございます。輸入食材の店、板紅マーケットは鮎海小学校バス停すぐそばです』
「何か段々と山の方に入ってきたれすね」
周りを見渡せば目の前はもう団地に入ってきている。
『次は三日月団地入口、三日月団地入口でございます』
「そういえば、今は何時れしょう」
そう、待ち合わせは午後の1時。ふと周りを見回せば…
「あ、あんな所に時計があるれす」
外に見える公園に時計が建っていた。その時計は12:25と表示されていた。
「まだ大丈夫そうれすね」
そのまま外の景色を眺め続けているみどりであった。
『次は三日月団地、三日月団地でございます』
キンコーン
【お待ちどうさまでした、三日月団地でございやす】
バスはその停留所にて4人ほど降ろし、さらに坂を上って行く。
『次は沙雪大学前、沙雪大学前でございます』
「あ、大きい学校れすね」
そこは総合大学のようで、広い区画に色々な建物が見えた。
「大学なんれすね、ここは」
『次は沙雪大学病院前、沙雪大学病院前でございます。天原調剤薬局は厚場二丁目にございます、各病院・医院の調剤処方箋を受け付けております』
キンコーン
【お待ちどうさまでした、大学病院前でございやす】
バスはその停留所にて5人ほど降ろした。
「ふえ、もうみどりさんだけれすか!?」
そう、もうバスに乗っているのはみどりだけになっていたのだ。
『次は山根鼠ヶ峰、山根鼠ヶ峰でございます』
バスは徐々に田舎の方へと入っていく。
「ん〜、田んぼれすね…」
もう代掻きを終えた田んぼに水が張られていた。
『次は龍陽氷入口、龍陽氷入口でございます』
「ん〜、もうすぐれすね」
料金表示を見ると[なし]は[320]と表示されていた。
『次は龍陽氷本村、龍陽氷本村でございます。アンティークショップBell Soundsはこちらです』
田舎道を直走っていくバス。みどりはまた少しだけ窓を開け、その少し温かい空気に…
「ん〜っ!」
誘われるかのように小さな欠伸をした。
『次は潤路児童公園前、潤路児童公園前でございます』
「公園れすね、みんな遊んでるれす」
公園の方には小さい子供たちが楽しそうに遊んでいる光景があった。
『次は凛珠神社前、凛珠神社前でございます』
「あ、ここれすね」
キンコーン
みどりはボタンを押した、そして…
【お待ちどうさまでした、神社前でございやす】
「ありがとうございましたれす」
みどりは料金箱へと乗車券を入れてバスから降りた。と、そこには…
「みどり」
「あ、ご主人さま」
ご主人さまがバス停前で待っていた。
「おつかれさま、どうだった?電車とバスの旅は」
「ん〜、楽しかったれすっ!」
「うん、それは良かったよ。みどりにはこの旅行もあわせてプレゼントしたかったんだ」
「そうだったんれすか…」
くぅぅぅぅぅ
「あ…恥ずかしいれす…」
「ん?まだお昼ごはん食べてなかったのかい?」
「はいれす、このバスさんが11時50分発だったんれ、食べ逃してしまったのれす」
「じゃ、一緒に食べようか。僕もまだだからさ」
「はいれすっ!」
………
二人の一緒のバスの帰り道、みどりの腕には新しく〔腕時計〕が巻かれていた…
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あとがき
2005年度BSS開始ですっ!
てなわけでトップバッターのみどりさん、とんでもなく長くなっちゃいましたね。
バス停をもう少し飛ばした方がよかったかなぁ…、でも考えたバス停を無にしたくはないし…。
結局全部入れました。何でこんなバス停名なのかは考えてください。
今回のシリーズのタイトル共通点は…まあいずれ分かると思います。
しかし、2005年度最初のBSSを2004年度の最終日に出すとは…
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2005・03・31THU
雅