Sunny on occasion sunny(晴れときどき晴れ)
それは11月最初の朝のこと…
「ご主人さまぁ、朝だよーっ」
「うっ…ううっ…もう少しだけ寝かせて…なな」
「駄目だよご主人さまぁ、だって去年も一昨年もそう言って寝たんだからぁ」
「だからあと5分だけ…」
「うーん…じゃあ今年はどんなふうに起こしてあげようかなぁっと」
「………」
ご主人さまは再び夢の世界へと旅立っていった。
5分後…
「ご主人さまぁ、五分たったよー」
「………」
「よーし…へへへっ…」
ちゅうぅっ ちゅっちゅっ
ななは口に含ませた水を、ご主人さまの瞼に押し付けて垂らすキスをした。
「うわあっ!な…ななぁっ…」
「ごくんっ…おはよっご主人さまっ!」
にぱっ
ななは満面の笑みで応えた。
「何だか今年の起こし方は手が込んでたね」
「うん、みか姉ちゃんに教えてもらったんだよ」
「なるほどね…」
「とにかくご主人さま、起きてよー」
「うん、分かった」
「はい、ご主人さまの分」
「ありがとう、なな」
ななが差し出した皿の上には、いい色のフレンチトーストが乗っていた。
「あー…美味しそうな匂い…」
「ご主人さま、ななの自信作だよ」
「えっ!?なながつくったの?これ」
「うん、少し前にらん姉ちゃんに教えてもらったんだ」
「へー、そうなんだ」
よくよく台所の方を見てみるとらんやあゆみ等の姿は無い。本当になな一人で作っていたようだ。
「ご主人さま、食べようよっ!」
「うん、そうだね。冷めたら美味しくないしね」
「「いただきまーす」」
はむっ
まずは一口。外は若干のカリカリ感がありながら、それでいて中はしっとり…少し蜂蜜の甘めの気持ちがほわっとする味だ。
「どうっ?どうっ?ご主人さま」
「うん、美味しいよとっても」
「やったあっ!大成功だよっ!」
ななは満面の笑みになった。
「えっと、この甘みは蜂蜜かな?」
「そうだよ、あゆみ姉ちゃんがね、砂糖より体にいいって教えてくれたから使ったんだよっ」
「はあっ…ごちそうさま、なな」
「んぐっ…じゃあななも、ごちそうさまっ」
「あ、そうだなな」
「なあに?ご主人さま」
「今日はこれからどうしたい?」
「えっとぉなな、散歩に行きたいな」
「よし…なな、散歩だけでいいの?」
「うんっ、でも…」
「でも?」
「ご主人さまと一緒にいっぱい遊びたいな」
「じゃあ…遊び道具いっぱい持っていこうか」
「うんっ!」
ななは満面の笑みをもって応えた。
「「いってきまーす」」
ななとご主人さまは小声で出掛けの挨拶を言った。もちろん『河原に行っています』の書置きを残して。
時計の針はまだ7時を回ったばかり、まだみんな寝ている時間だった。
バタン
「よし行こ、なな」
「うん」
二人は遊び道具を持って、河原に向けて歩みを進めて行った。
「ご主人さま、ご主人さま」
「ん?何だい、なな」
「草に水がいっぱい付いてるね」
「そうだね…まだ朝早いからね」
「どうして朝早いと水が付いてるの?」
「それはね、『朝露』って言うんだよ」
「あさつゆ?」
「うん、朝早い時間に草の上にいっぱい付く雫のことだよ」
「へー、そうなんだぁ」
「うん」
「クンクン…あ、いい匂い…」
「えっ?」
「何だかおみそ汁の匂いみたい…」
「あ、そっか。まだ朝早いからね」
「ご主人さま。なな、何だかお腹空いちゃったな」
「えっ?朝ご飯食べたばっかりなのに?」
「う…うん」
「ななは食いしん坊さんなんだね」
「あ…う…ひどいよぉ、ご主人さま」
「ゴメンゴメン。えっとじゃあ、そこのコンビニで何か買っていこう」
「うんっ」
ヴィーン
「いらっしゃいませー。あ、ななちゃん、久しぶりだね」
「あ、お姉ちゃん、久しぶりだねっ」
「今日は何しに来たのかな?」
「えっとね、朝ご飯だよっ!」
「へー、そうなんだ」
「なな、何にする?」
「あ、ななねー、このパンとオレンジジュースにするー」
「じゃあ僕は…カフェオレにしようかな」
「ご主人さま、早く飲みたいー」
「うん、分かってるよ。会計してからね」
「はいこちら、378円になります」
「じゃあこれで」
「500円お預かりいたしましたので、122円のお返しとレシートです」
「ご主人さま、行こっ!またねー、お姉ちゃん」
「またいつでもいらっしゃい、ななちゃん」
ウィーン
「よし、じゃあ河原に行ったら食べようね」
「うんっ」
二人は再び河原に向かって歩き出した。
「着いたー」
「うん。着いたね」
「ご主人さま、早くご飯ー」
「分かってるよ、はいなな」
「ありがとっ」
パクパク あむあむ んぐんぐ ごきゅんっ
「あー、美味しかった」
「あれっ?もう食べちゃったの?」
「うん、小さかったからね」
「ま、いいか…」
「それよりご主人さま、早くボール、ボールっ」
「あ、そうだった。河原で遊ぶために散歩してたんだったけ」
「だから早くー」
「あ…でもその前に…はい、これ」
「これって…ななの誕生日プレゼント?」
「そうだよ。開けてみて、サイズは多分合ってるはずだから」
ぱこっ
「これ、前からななが欲しかったのだ…」
その中には真っ白いスニーカーが一足入っていた。
「うん、だって前から欲しそうにしてたでしょ?」
「う…ご主人さま…ありがとっ!」
チュッ
ななはご主人さまに軽くキスをした。
「じゃあご主人さま、遊ぼっ!」
「うん、じゃあいくよー、それっ!」
………
時計の長針が4回ほど回った頃…
「ご主人さまぁ」
「何だい?なな」
「なな、お腹空いちゃったよぉ」
「あ…そうだね、あんなに動き回ってたしね。それじゃあそろそろ帰ろうか」
と、その時…
「ご主人たま〜!」
「えっ!?」
ご主人さまとななが振り返ったその視線の先には…
「るる…それにみんな…どうしたんだい?」
「朝起きたら書き置きがあって、『河原に行っています』とありましたので、
それならばここでななちゃんの誕生日パーティーも一緒に開こうかと思いまして」
「あ…そういうことなんだ…。それなら話は早いな、ななもお腹空いてるって言ってたし」
「なな、お腹と背中がくっ付いちゃうー」
「あらあら、それじゃあ早く準備しちゃいましょう」
「そうだね」
そして河原で催されたななの誕生日パーティーの後には…
「くぅ…すぅ…」
背中にいるななの小さな寝息と、ななから伝わってくる温もりが、ご主人さまに残っていた…
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あとがき
2004年度誕生日SSの後半戦、7作目です。
このSSでついに1年越え達成いたしました。
正確には380日前(1年と14日前)です。
この2004年度が始まる頃にはまだ、7ヶ月前という記録だったのになぁ…。
あ、そうそう。今回のシリーズのタイトル、共通点の答えは…次作で発表します。
多分もう、ほとんどの方が分かっているとは思いますがね…。
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2003・10・18SAT
雅