As for start from here(はじまりはここから)

「不吉な予感…」
あかねは自分の誕生日の前日に水晶で占いをしていた。するとそこに…
「ただいまー、あれ、あかねだけかい?」
ご主人さまがびしょ濡れになって帰ってきた。
「お帰りなさい、ご主人さま。どうしたの?そんなに濡れて帰ってくるなんて」
「いやちょっとね、仕事の帰りに川に落ちちゃってさ…」
「ご主人さま、早くシャワー浴びてきて。私が着替え出しておくからさ」
「うん、頼んだよあかね」
………
ご主人さまがお風呂に入っている間、タンスの中から着替えを出すあかね…
「えっと…シャツに…パジャマに…」
そして少し躊躇いながら…
「えっと…ここだな…ぱ…パンツは…」
やっぱりあかねも年頃の女の子。いくらご主人さまの物とはいえ、パンツに触るのは恥ずかしいようだ。
「おーいあかねー、着替えはまだかーい?」
と、そこにバスルームからのご主人さまの声。
「あ…ごめんなさいご主人さま、今行くから…」
と、あかねは着替えを持ってバスルームへと向かっていった。
………
「はいご主人さま、着替え…だよ」
「ありがとう、あかね」
すすすすす
とりあえず服を着たご主人さま。
「あかね、ちょっとお茶を入れてくれないかな?身体がまだだいぶ冷えてるみたいだからさ」
「うん、私が淹れるのでいいなら…」
………
コポポポポ
「はい、ご主人さま」
「ありがとう、あかね。んぐっ…こくっこくっ…はぁ…生き返った」
「よかった…でもどうしたのご主人さま、川に落ちるなんて…」
「いやちょっとね、河原に寄ったら急に強い風が吹いてきてさ。それでそのまま川に落ちちゃって」
「え?今日は風が穏やかなはずなのに…どうして…」
「ま、いいさ。こうしてもうお風呂にも入ったしさ」
「そうだね…」
「あ、そうだあかね」
「ん…何だい?ご主人さま」
「明日はあかねの誕生日だよね」
「うん…」
「明日はどうしたい?」
「ん…そうだなぁ…街に出掛けたいな」
「そっか…じゃあ明日は一緒に買い物だね」
「うん。あ、ご主人さまお茶いる?」
「じゃあもう1杯貰うよ」
 
翌日…
「じゃあ行ってくるね、みんな」
「行ってくるよ…みんな」
「「「「「「「「「「「いってらっしゃ〜い」」」」」」」」」」」
バタン
「で、どこに行きたい?あかね」
「うん…一昨年行った場所…覚えてる?」
「あ…あの吉水さんの店?」
「うん…あの店にまた行きたいな…」
「いいけど…いいの?他のところじゃなくて」
「いいんだ…本当は私、ご主人さまと一緒にいれれば…それだけでいいんだ…」
「そっか…じゃあ行こ」
「うん…」
二人はそのお店へと向かって行った。
 
ガラガラガラ
「いらっしゃいませ」
「お久しぶりです、お姉さん」
「あ、お久しぶりです吉水さん」
「あら、あかねちゃんとご主人さまかい。またずいぶんと久しぶりだね」
「うん…」
「あ、そっか。今日はあかねちゃんの誕生日だったっけ」
「うん、そうなんだ」
「で、今日は何を買っていくんだい?」
「えっと…」
とその時…
ガシャーン
店の外からガラスの割れる音が聞こえた。
「まったく…何が起こったんだ!?」
その言葉とほぼ同時に吉水さんは店の外に飛び出して行っていた。
「あ・あかね、どうする?」
「私たちも行くしかないでしょ」
二人も店の外へと出ていった。
 
その二人は一触即発な状態になっていた。
「や…やめておけよ秋葉…。相手は一般市民だぞ」
「お母さん、こんな街中で騒ぎをおこさないで〜」
「秋子さん…こんなところで、些細な事じゃないですか」
「いいえ、いくら兄さんでも聞けません。あんな言いがかりをつけられるなんて許せません!」
「名雪、祐一…人には戦わねばいけない時があるのよ。それではどうしましょうかね…フフフ…」
「ご主人さま…これは…どうしよう…(これだったのか…不吉な予感って…)」
「どうしたも何も…何だかうちらが止められるものでも無さそうだよ、これは…」
二人が飛びかかろうとしたその直前、千晶さんは…
「ΣιΝεχοσΙνΕτΑΝγΕντ...ΙηΟΠεπΕαΧε!!」
呪文が唱えられた瞬間…
「あれ…ここは…どこですか?兄さん」
「あら…私は何でこんなことをしようとしてたのかしら、名雪」
すっかり戦闘意欲を無くした二人。
「え…お姉さん…今何をやったの?」
「たいした事でもないわよ、ただ二人のここ数分の記憶を消しただけ」
「そんなこと出来たんですか、吉水さん」
「うん、でもこんなに上手くいくとは思わなかったけどね」
「いつ、そんなことを覚えたの?」
「んーと、それは秘密」
「私も魔法…覚えたいな…」
「でもこれ、魔法って物でもなくて実はただの暗示なの」
「暗示…?」
「そうよ、あかねちゃん。二人の記憶の一部を暗示で閉じ込めただけなの」
「そうなんだ…私も覚えてみたいな…」
「うーん…そうね…あ、あかねちゃんのご主人さま」
「はい、何です?」
「ちょっと店の方に来て下さる?」
「いいですけど…」
………
「何ですか?吉水さん」
「えっと…この本なんですけど…」
と、吉水さんは店の本棚から古めかしい本を一冊出した。
「これ、あかねちゃんにプレゼントしてあげたらどうです?」
「え?この本って…」
「さっきの暗示とか、お呪いが色々と載っている本です。大丈夫ですよ、悪い呪いは載ってませんから」
パラパラパラ
その本には何語か分からない文字が羅列されていた。
「それから、この辞書は私からのプレゼントです。私もう使わないんで」
それは希−日・日−希辞典であった。
「あ…じゃあこの本戴いていきます。おいくらですか?」
「えっと…確か…4800円ですね」
「じゃあ、これで」
「はい確かに、ありがとうございましたー」
「いえいえこちらこそ、色々とありがとうございました」
「それじゃあ、あかねちゃんによろしく言っておいてください」
「はい」
ガラガラガラ
「ごめんあかね、遅くなって」
「いいんだ…私へのプレゼントを相談してたんでしょ」
「う…やっぱりばれてたね。はい、これ」
「ありがとう、ご主人さま…。え…この本って…」
「吉水さんが僕に勧めてくれたやつ。暗示とかお呪いの関係の本だって」
「あ…でもこれって…読めないよ、文字が」
「だから一緒に譲ってくれたよ、辞典も」
「あ…ホントだ…」
「ね、じゃあ帰ろうかそろそろ、色々あったしさ」
「うん、そうだね。あ、そうだ」
「ん?何だいあかね」
ぴょんっ チュッ
あかねはジャンプでご主人さまの首に腕をかけて、キスをした。
「あ・あかねっ!?」
「今日はありがと、ご主人さま」
「あ…う…どういたしまして…。じゃ、帰ろうか」
「うん」
二人は仲良く家へと戻っていった…。
 
これは後日談…
「あかねさん、あかねさん」
「ん、何だい?みどり」
「最近、何らか家の中れの喧嘩が少ないのれすけど、あかねさん何れか知らないれすか?」
「え…知らないけど…いいじゃないか、それでも別に(家族があまり仲違いしない様なお呪い…掛けたんだっけ…)」
「ん〜…それもそうれすね」
今日もご主人さまの家は平和であったという…
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あとがき
2004年度誕生日SSの折り返し地点、6作目です。
ていうか、レポートやらなくちゃなぁ…。
吉水千晶さん、再登場です。2年度前のBSSに出して、好評だったためであります。
このSS、おそらくはOsanpoさん行きになります。
あ、ちなみに「希」というのはギリシャの略らしいです。
今作品で348日前、おかげで次作品への猶予もかなりになりました。
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2003・10・11SAT
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