Vernal Solfege(青春のソルフェージュ)
年も明けて正月も三が日最終日の事…
「ご主人さま、テレビ見ているみたいだけどちょっといい?」
「え?つばさ?…いいよ、どうしたの?」
「ボクの誕生日なんだけど、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど…」
「いいけど、何か欲しいとかってこと?」
「ううん、連れてって欲しいとこがあるんだよ」
「いいよ、あまり遠くない場所ならどこでも連れてってあげるさ」
「でも…ちょっと遠いかなぁ…でも行ってみたいし…」
「まあ言ってみてよ、言ってみなくちゃ始まらないんだしさ」
「えっと、ここなんだけど…ダメかな?」
カサッ
つばさは後ろ手に持っていた一枚の紙を、ご主人さまへと差し出した。
「ここってちょっと前にオープンしたテーマパークだよね」
「うん、一度行ってみたかったんだけど…ダメだよね、こんな子供っぽい場所」
「そんなことないさ、つばさが行きたいって言うなら行こうよ」
「こんなに子供っぽい場所でもいいの?」
「いいさ、恋人同士でこういう場所に行くってのもあるしさ」
「だけど…」
「それじゃあ一つ質問したいけどいいかな?」
「え・うん」
「つばさは今より大人っぽくりたい?それとも今より子供っぽくなりたい?」
「え…えっと…大人っぽくなりたいかなぁ。でもこれどういう意味なの?」
「どうしようかな、まあそれは後で答えるさ。じゃあ明後日はそのテーマパークに行く事にしよう」
「う・うん、気になるけれどまあいっか。うんっ、それじゃあご主人さま、水着とかも用意してね」
「え?ここってプールとかもあるの?」
「うん、温水プールもあるんだって。だからいっぱい泳いで遊ぼうよ」
「そうだね、いっぱい遊んで楽しもう」
と、そこに…
♪たったたー たたた たーたたったったー たたーた たたたた たたたたたんっ♪
ピッ
「はいもしもし」
『もしもし、晶です』
「あ、ちょうど掛けようと思ってたところだったんだ」
『それはちょうどよかったです、じゃあ先輩から用件をどうぞ』
「あ、うん。また車を貸してくれないか?日付はたぶん分かると思うけど」
『あ、いいですよ。1月5日ですよね、たぶん』
「うん、その日だな。良かった、大丈夫か」
『はい、確かに今のところは。で、こっちからいいですか?』
「おう、何だ?」
『ちょっと、20日あたりに3日ほど家を留守にしなくちゃいけないんで、うちの2人を預かってもらえません?』
「え?ああ、いいよ。2人くらい増えたところでどうってことないし…って、人形にして連れて行けないのか?」
『いえ、ちょっと連れてくとまずそうな場所なので…お願いできますか?』
「まあいいさ、歓迎するよ」
『ありがとうございます、詳しい事は追って連絡しますね。あ、明後日は何時くらいに行きましょう?』
「ちょっと早めがいいかな、そうだな…8時半で大丈夫か?」
『はい、何とかその時間なら。あ、車が替わったんで気をつけてくださいね』
「ん、分かった。じゃあ明後日は頼むな」
ピッ
「ご主人さま、誰からの電話だったの?」
「晶からだよ、ちょうどこれで車も確保できたな。代償もあるけどね」
「え?何かあるの?」
「あいつの二人の守護天使を2・3日預かって欲しいってさ。うちは二人くらい増えたところでどうってころないけどさ」
「え?琴瑞ちゃんと胡瑤ちゃんが来るんだぁ。うん、いいと思うよ」
「よし、じゃあ明後日は…」
「うん、一緒にここに行こうね、ご主人さま」
ぎゅうっ むにっ
つばさは座っているご主人さまの後ろから抱きついた。
「…つばさ、心地好いって言えば良いんだけどさ…」
「え…?どうしてご主人さま、顔を紅くしてるの?」
「つばさ…胸が大きくなったなって思ったんだけど」
「んあっ!…ごめんっ!ご主人さま…」
2人とも暑さと恥ずかしさで顔を真っ赤にしてしまった。
「でも…ホント?ボクの胸、大きくなってた?」
「うん、それだけでよくわかるくらいにさ。また少し女の子らしくなったね、つばさ」
「ありがと、うん。そう言われると何だか嬉しいな」
「それじゃあ5日は…ね」
「うんっ」
チュッ
二人はそのまま軽めの口付けを交わした…
そして当日…
「お、ホンダのLIFEにしたのか」
「はい、前のが今回の車検でけっこう値段がかかるって話だったんで、もう買い換えることにしました」
「そっか、それじゃあ大事に使わせてもらうよ」
「はい、お願いしますね。一応高かったんですからね」
「分かってるさ。つばさ、行こう」
「うんっ!」
二人は荷物を入れて車に乗り、目的地へと向かっていった…
「ところでつばさ、どうやってこんな場所見つけたんだい?このチラシは見た覚えが無いんだけどさ」
「んーとね、駅に行ったときに宣伝してたんだ。もう2ヶ月以上前のことだけどね」
「へー、そうなんだ。ということはもうオープンしてから結構経ってるってことか」
「うん、それに今日行きたいって思ったのは、隅の方に書いてあったんだけど…」
「ん?何かあるの?つばさ」
「毎月5日は恋人同士で来ると安くなるって書いてあったから…ね」
「えっと…うん。つばさの誕生日だしさ、今日一日は…ね」
「やったぁ!ありがと、ご主人さま」
「あ、つばさ。ここからの道はどうだったっけ?」
「えっとね、あ…一つ前の交差点を左だったみたい」
「…しょうがないか、話に夢中になってたし…戻ろっか」
「そうだね…」
………
「今日はそんなに混んでないみたいだね」
「そうだね。だってまだ正月明けだし、みんなデパートとかに行ってると思うな」
「じゃあ中に入ろうか」
「うん、そうだね」
「つばさ、これはいらないのかい?」
「あ、いるいる。ありがとっ、ご主人さま」
………
そしてテーマパークに入って…
「大人2人で、えっと…恋人料金で…」
『恋人料金ですね、でしたら…この場で恋人の証明をお願いします。』
「証明というのは…何をすればいいのでしょうか?」
『この場で口付けをもって、証明と致します。』
「え…えっと…はい。つばさ、いいかな?」
「え・う、うん…いいよ」
チュゥゥッ
二人は周りに見守られながら、確かなキスを交わした。
『はい、確かに。では、2人で2000円になります。』
「えっと…はい、2000円です」
『確かに。ではこの腕輪が入場券の代わりとなりますので。どうぞご入場下さい。』
「よし。じゃあ行こう、つばさ」
「うんっ!」
そしてつばさの誕生日が本当の幕を開けた…
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あとがき
まだまだいくよー!雅です。
誕生日SS13本目(管理人BSS含む)、もう前置きだけでSSにしちゃいました。
今年も残り少し、もうすぐ冬休みですか…。
しかしつばさは難しい、意外と文字で個性を出すのが難しいんですよね。
あ、ちなみにタイトルの共通点。今回は、Studio e.go!さんのゲーム主題歌でした。
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2005・12・17SAT
雅