Sky Blue's Present(勿忘草色の贈り物)

その日、ご主人様は男が行くにはちょっと恥ずかしいところに買い物に行っていた、それも梅雨の中休みの晴れ間に。なぜそんな事をする羽目になったかといえば数日前にるるが誕生日だったという事に気づいたご主人様が何をプレゼントするか悩んでいた時にあるテレビのCMにるるが釘付けになっていたところを見逃さなかったからである。
「以上1点でよろしいですか?」
「はい」
「それでは7350円になります」
「(う、意外と高いんだなぁ…)はい、それじゃぁこれで」
「1万円からでよろしいですね」
「はい」
「それではお釣りの大きいほう2000円と細かいほう650円です。ありがとうございました」
ご主人様はそそくさとその場を立ち去っていった。
 
その頃アパートでは、
「ご主人たまはどこらお〜?」
るるがご主人様を探していた。
「なな姉たん、もも姉たんご主人たましらないぉ〜?」
「知らないです…」
「知らないけどどうしたの?るる」
「いないんならいいぉ…」
「「???」」
二人の頭の上には沢山の?が付いた。
「そういえばななちゃん、他のお姉ちゃんたちは?」
「え、あや、あやや、お姉ちゃんたちもみんないない…」
そう、いつの間にか家には3人しかいなかったのである。
「どうしてなんでしょう…」
「さびしいお〜、ご主人たま〜、姉た〜ん、うわ〜ん」
ついにるるが泣き出してしまった。しばらくすると、
ザーーーーーーーーー
「あや、雨だ。るるが泣いたから降ってきちゃったよ」
「どうしましょう…るるちゃんお願い、泣き止んで」
 
その頃ご主人様は帰り道の途中で
「うわっ雨だ、あんなに晴れていたのに…しょうがない走って帰ろう」
タッタッタッタッタッタッ
ご主人様は家に向かって走り出した。しばらく走ると他の守護天使にも逢った。
「あ、ご主人さま」
「らん、それにみんな。それにしてもひどい雨だね」
「はい、でもなんでこんな急に降ってきたんでしょう。あんなに晴れていたのに」
「あの、私心当たりが一つあるのですけれども」
「何だい?あゆみ、その心当たりって」
「もしかしてるるちゃんが泣いているのではないでしょうか、あの三人だけ置いてきてしまったので」
「え、あ、じゃぁ誰か僕が出てるのって伝えてくれた?」
「「「「「「「「「いえ」」」」」」」」」
みんな顔を見合わせた上で声を合わせてそう答えた。
「じゃ、とにかく急いで帰ろう。るるが心配だからさ」
「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」
全員は急いで家へと向かっていった。
 
その頃家では、
「るるちゃん大丈夫だよ。きっともうすぐ帰ってくるよ」
「ほんと……ほんとらお…?」
「うん、絶対帰ってくるから、もう泣かないで」
「うっ…うん…わかったぉ…」
ようやくるるは泣き止んだ。その時、
「「「「「「「「「「ただいま〜」」」」」」」」」」
ずぶ濡れになったご主人様と守護天使が入ってきた。
「ご・ご・ご主人たま〜」
るるがずぶ濡れになっているご主人様に抱きついてきた。その小さい体を抱き上げて、
「ごめん、るる。寂しい想いをさせちゃって。誕生日おめでとう、るる」
「「えっ…!?」」
ななとももはお互いの顔を見合わせた。
「あれ?二人とも知らなかったの?るるが誕生日だってこと」
「うん」「はい」
「ごめんね、普段一緒だから知ってると思ってたんだ。ま、それじゃぁパーティを始めようか」
「「「「「「「「「「「「は〜い」」」」」」」」」」」」
ずぶ濡れになっている全員が着替えてから、るるの誕生日パーティが始まった。
雨もやみ、パーティも潮時になって、
「るる、はい、これプレゼントだよ。開けてみて」
パカッ
「ん…あ…ご・ご主人たま…ありがとぉ〜」
その箱の中には口紅が入っていた。
ぬりぬり
早速るるはそれをぬってみている。それは薄い桃色の口紅だった。そして、
「ご主人たま、大好きらぉ〜」
チュッ
ご主人様の頬には可愛い唇のマークがついた。するとその時窓の方から
「あ、虹だ!」 「虹です…」
ふと外を見上げていたななとももがそう言った。
「ほんとだ…綺麗だね、みんな」
虹の光に頬の口紅のラメがいつまでも光っていた…
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2002・06・04TUE 初版公開
2002・09・03TUE 修正第1版(改題)公開
2002・09・08SUN 修正第2版(再改題)公開
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