Shining Girl(輝く女の子)
それは1月も5日を過ぎた夜半、二人は一緒の蒲団の中で互いを温めあっていた。
「ご主人さま…」
「ぐぅ…すぅ…」
「あれ?ご主人さま、寝ちゃってるの?」
「あ…ゴメン、つばさ。寝ちゃってたみたいだね、僕」
「あ、起こしちゃった?」
「いやいいよ、つばさ」
「だってご主人さま、今日ので疲れてるでしょ?だから寝ててよかったのに」
「まあね、でも大丈夫さ」
「でも今日は色々ありがと、ご主人さま」
「どういたしまして、楽しめたかい?」
「うんっ、とってもっ!」
つばさは笑顔で応えた。
「よかった…つばさに楽しんでもらえて」
「でもご主人さまが一緒なら、どこだって楽しいけどね」
それは今日の朝のこと…
「ご主人さま、早く行こうよぉ」
ガラガラガラ
と、つばさが引き戸を開けると…
「ぐぅ…ぐぅ…」
ご主人さまは床に座って眠っていた。
「あ…ご主人さま、寝ちゃってる。ここ最近忙しかったしね」
つんつん
「フフフ…ご主人さまの寝顔…可愛いな」
近付いて頬を突くつばさ。その時…
ぎゅうっ チュッ
ご主人さまは突然つばさに抱き着いてキスをした。
「ご主人さまっ!?」
「アハハ…引っ掛かったね、つばさ」
「んもぉ…ご主人さまったらぁ…」
つばさは顔を紅らめた。
「よしっ、じゃあ行こうか」
「うんっ、行こっ!あ、でもその前に…」
「ん?」
チュッ
つばさはご主人さまの頬に軽くキスをした。
「つばさっ!?」
今度はご主人さまの方が顔を紅くした。
「さっきのお返しだからね」
「ん…じゃあ行こう」
「うんっ!」
………
「「いってきまーす」」
「「「「「「「「「「「いってらっしゃーいっ」」」」」」」」」」」
バタンっ
「さーて、どこにいきたい?つばさ」
「え…えっと…」
「プールでもスポーツクラブでもどこでもいいよ」
「う…あ…ご主人さま、それってボクへの偏見だよ」
「ん?どうしてだい?」
「確かにさ、ボクは運動は好きだよ。だけどたまにはボクだって、別の場所に行きたいんだから」
「う…あ…ごめん、つばさ」
「え…い・いいよ、ご主人さま」
「それじゃあ改めて、どこに行きたい?」
「えっと…どうしよっかな…」
「そうだなあ…あ!そうだ、あそこにしようかな」
ご主人さまは何かを思い付いたようである。
「え?どこ?」
「それは着いてみての、お楽しみさ。行こっ、つばさ」
「う・うん」
つばさとご主人さまは、街に向かって歩いていった。
………
「よし、着いたっと」
「え…ここって…カラオケかぁ」
「つばさって歌も好きでしょ、だからさ」
「うんっ」
「だから今日は、思う存分歌っていいからさ」
「ありがとっ!やっぱりご主人さま、大好きだよっ!」
チュッ
つばさはご主人さまの頬にキスをした。
「こんなとこに居ても寒いだけだし、中に入ろつばさ」
「うんっ、そだね」
二人は店の中へと入っていった。
………
「つばさ、飲み物何にする?」
「うーんと、じゃあ…ウーロン茶にするっ」
「それじゃあウーロン茶を二つ、お願いします」
「はい。それではお部屋は4階のこちらになります。マイクはこちらになります」
………
「えっと…あ、この部屋だな」
「うん、そだね」
かちゃっ ばたんっ
閉ざされた空間、そこはもう、二人を邪魔するものは無い世界へと一瞬にして成り変わった。
「よーし、歌おうかっ」
「うん、一杯歌おうっ、ご主人さま」
と、そこに…
かちゃっ ばたんっ
「お飲み物のウーロン茶2つ、お持ちいたしましたー。…ってもしかして…先輩ですか?」
「え…?あ、もしかして二科月さん?」
「はい、お久しぶりです」
「うん、久しぶり。高校以来かな?」
「そうですね…それくらいになりますか…。あ、そういえばそちらの可愛い子は、どなたです?」
「え?つばさのこと?」
「つばさちゃんって言うんですね」
「彼女は、僕の従兄妹なんだ」
「あーそうなんですかぁ、てっきり彼女なのかと」
「………(ご主人さまの彼女なんて言われちゃった…恥ずかしいな…)」
少しだけ顔を紅くしたつばさ。
「それじゃあ、またの機会に」
「うん…またね、二科月さん」
かちゃっ ばたん
「う…ボク恥ずかしかったよぉ…」
「え…どうしてだい?」
「だって、ご主人さまの彼女って言われるなんて…」
「あ…う…ま・まあこうしているのもなんだし、歌おうよ」
「う…うんっ、そうだね」
………
4時間半後、店を出た二人…
「いやー、久しぶりにこんなに歌ったよ」
「うん、本当に。でもご主人さま、歌上手だね」
「え、そうかい?」
「うん、ボク聞き惚れちゃったよ」
「つばさにそう言われると、何だか照れちゃうな」
「でも、今日はいっぱい歌えて楽しかったな」
「うん。あ…プレゼント、渡してなかったね」
「え?プレゼント?」
「うん、はい」
「…っとこれって…ご主人さま…こんなに綺麗なプレゼントありがとっ!」
そう言ったつばさの手の中には、水色の石で翼の形が刻印された指輪があった。
「どういたしまして、じゃあそろそろ帰ろっか、つばさ」
「あ、ちょっと待って、ご主人さま」
「ん?」
チュッ
つばさはご主人さまがこっちを向いた隙を付いてキスをした。そして二人は寄り添うように街をあとにした…
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あとがき
2004年度誕生日SSの9作目です。
あゆみBSSをすんでのところで差しきりました。今回のは422日前です。
今年中に何とか終わらせられるかな?
カラオケにしたのは、私が行きたかったからなんです、実は。私自身、かなり持ち歌は多いですよ。
やっぱり、中森明菜の「瑠璃色の地球」…いいなあ…。
あの、途中で出てきた後輩の苗字「二科月」は、二→2/科→か→可/月→げつ→欠(けつ)で2×可+欠=歌ということです。
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2003・11・10MON
雅