In Sharp Chill...(肌を刺すような寒さの中で…)

年明け早々の土曜日…ここはとある混浴の露天風呂…
「やっぱり凄く寒いねっ、ご主人さま」
「それは朝だしさ。露天風呂だもんなあ」
「でも…ご主人さま」
「ん?何だい?つば…」
チュッ
ご主人さまが全てを言う前に、その唇は唇で塞がれていた。
「つばさっ!?」
「ご主人さま、ありがとっ」
「えっと…」
「無理だと思ったんだ、急だったから」
「やっぱりね、そう言うと思ってたんだよ」
「え?どういうことなの?」
「去年の話、らんとかに聞いてたんでしょ?」
「う…うん」
と、顔を赤らめるつばさ。
「だからつばさももしかしてって思ってたんだよ」
「ご主人さま、それじゃああの電話って…」
「ああ、あれね。あれは車の手配の電話だよ」
「そっか…」
「ほら、もっとこっちに寄りなよ」
「そんなこと言われても、恥ずかしいってばあ」
「狭いんだからさ、ほらっ」
ぎゅうっ
ご主人さまは、つばさの身体を強引に引き寄せた。
「ご主人さま、誰か来たらどうするの?」
「ふーん、つばさってさっきああいうことしたのに、そういうこと言うんだ」
「えっ…?」
「さっき、僕の唇を塞いだのは誰だったかな?」
「あっ…えっ…えっと…」
「まったく、そんなことを言う唇は…」
チュッ
ご主人さまの唇はつばさの唇へと吸い寄せられるように導かれた。
「まあ朝だし誰も来ないと思うけどさ、それにね…」
「え?それに?」
「ここ、1日一組しか泊まれないんだよ」
「ええっ!?そうだったんだ」
「うん、それに従業員がいるのは朝の7時から夜の9時の間だけだしさ」
「ってことは…あと1時間は…」
「そうだよ、僕たち以外は誰も居ないってこと」
「そっか…それじゃあ…」
ぎゅうっ
つばさはご主人さまへと思い切り抱きついた。
「ちょ、ちょっとつばさ!」
「もちろんわざとだよっ、誰も居ないんだからね」
「そうだけど、それにしても…成長してるんだな」
「…えっ…分かるんだ」
「それは分かるさ、みんな抱きついてくるんだから」
………
それは年の瀬のこと…
「ご主人さま、いいかな?」
「何だい?つばさ」
「ボクの誕生日、もうすぐだけど…あの…」
「ん?何か言い難いことなの?」
「んー、ちょっと…言い難いかな」
「でも言ってくれなきゃ分からないよ」
「そうだよね、うん。言わなくちゃ分からないもんね」
「…ん?もしかして、言い難いってことは去年のらんとかみたいなことかな?」
「う…うん」
「と言うことは他の人から聞いちゃったんだ」
「みかさんとらんからだよ…うん」
「いいんだね?そこまで言うってことは…」
「うん、ご主人さま…」
ぎゅうっ
つばさは恥ずかしさからかご主人さまへと抱きついた。
「分かったよ、つばさがそこまで言うならね」
「ありがとう、ご主人さま」
………
「何だか静かだね、ここって」
「それはそうさ、秘境の温泉だしね」
「でもどうやってこんなところ見つけたの?」
「晶が教えてくれたんだよ、ここなら誰にも邪魔されないってさ」
「そうだったんだ、少し寒いけど…いいねっ」
「良かった、気に入ってくれたなら僕としても嬉しいよ」
「ご主人さま、早く入ろっ」
「うん、ゆっくり休んで楽しもう」
「そうだね、あ…そういえばここって混浴…なんだよね?」
「そうだよ、言ってあったよね?」
「うん…ちょっと恥ずかしいけど、ご主人さまなら…」
「どうしたの?怖気づいている?」
「うん、やっぱり恥ずかしいもん。ご主人さまはどうなの?」
「僕だって恥ずかしいさ。でもゆきさんとかあゆみとかあったしさ、慣れちゃったと言えばそれまでかな」
「そうだよね…恥ずかしがっててもしょうがないもんね」
………
「昨日のでボクのが成長しちゃったのかな?」
「そうかもしれないけど、あんまり公言しちゃダメだよ」
「うん…でもらんたちは分かってるかもしれないね」
「それはそれ、特にあかねとかが何を言い出すか分からないし…」
「う…うん。でも、本当にありがとっ」
「どういたしまして…でいいのかな?」
「これでボクも成長できたのかな?」
「そんな急ぐ必要は無いと思うけどさ」
「確かにそうかもねっ、ご主人さま」
「ゆっくりゆっくり自分らしく成長すればいいんだよ」
「そっか…うん」
「よし、そろそろ上がろう。そろそろ6時半だしさ」
「そうだね、身体はどうしよう?」
「ご飯食べた後にもう一度入った時でいいんじゃないかな?」
「そうだねっ」
二人は凛として清澄な空の露天風呂から上がっていった…
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あとがき
あけましておめでとうございます、雅です。
去年のネタを引っ張ってきました。
つばさはくるみと同じく、心が女の子していてこういうことをさせたくなるんです。
ま、今年もゆっくりゆっくり書きますってヴぁ。
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2008・01・05SAT
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