Star Serenade(星の小夜曲)
それは4月の終わりのある日の夜のこと、ご主人さまはバイトを終えいつも通りの家路に帰る途中のこと…
「あ…ご…ご…ご主人さまぁ…」
「ん?あれ、こんなところでどうしたんだい?みどり」
「うっ…うわ〜んご主人さまぁ」
理由を聞く暇も無く、みどりは泣き出してしまった。
「ど…どうしたんだい、みどり」
「みどりさんは…みどりさんはもうだめなのれす」
「えっ!?」
「みどりさん、もうみなさんに顔向けが出来ないのれす」
「えっ、それはどういうこと?」
「今日はみどりさんの誕生日なんれす…なのれみどりさん、散歩にでてたんれすよ…うっく…そうしたら帰り道が分からなくなってしまったのれす…」
「そっか…」
ぎゅっ くしゃくしゃ
そんなみどりを胸元に優しく抱き寄せて頭を撫でるご主人さま。
「ご主人さま…みどりさんは悪い子れす。こんな時間まで外にいるなんて「ふりょうさん」なのれす…」
「大丈夫だよ、こんなに可愛い不良さんなんているわけないからさ」
「ほんと…ほんとれすか?」
「うん、大丈夫さ」
「うっ…それなら良かったのれす…」
「だからさ、泣くのはもうやめようよ、みどり」
「うっ…はいれす…」
その後、ご主人さまはらん達に携帯電話で連絡をとった。その電話でみどりはみんなに「ごめんなさい」と謝った。他の守護天使は安堵の表情を浮かべ、そんなみどりを慰めた。
「じゃあ一緒に帰ろっか」
「…そうれすね」
みどりはやっといつもの笑顔を取り戻した。
「れも…ご主人さま…」
「何だい?みどり」
「手、つないれくらさい」
と、みどりは手を差し出した。
「うん…いいよ」
ぎゅっ
みどりが差し出した手を、優しく握るご主人さま。
「ご主人さま…ありがとうれす…」
「どういたしまして、そうだ、ちょっと寄って行きたいところがあるんだけどいいかな?」
「ほえ?どこれすか?」
「ちょっとね」
「???」
30分くらい歩いて行くと、いつもの公園があった。
「ふえ、公園がこんなに近かったんれすか?」
「うん、気付かなかったんだね」
「そうれす」
「じゃあちょっと、そこの芝生に座ろっか」
「はいれす」
二人は芝生に座った。その世界は電灯が2・3箇所で点いているだけで、他に音や光となるものは無かった。
「それれご主人さま、ここれ何があるんれすか?」
「まずは誕生日おめでとう、みどり」
「ありがとうれす、ご主人さま」
「ここに来たかったのはね…見たかったんだ…みどりと二人っきりで夜空をね」
「ほえ?空れすか?」
「うん」
その夜空からは満天の星々が二人に降り注いでいた。
「…ふわ…綺麗れす…ご主人さま…」
ポカンと口を開けてその空に見入るみどり。
「(今日が晴れていて本当に良かった…みどりを喜ばすこの空を見せることが出来たから…)」
「ご主人さま…」
「何だい?みどり」
「寝転がった方が、星さんがよく見えるれすね」
ぽふっ
と言いながら、芝生に寝転がるみどり。
「うん、そうだね」
ぽふっ すっ
ご主人さまは寝転がると、みどりに腕を伸ばした。
「ほらみどり、そのまま寝ちゃうと髪の毛に草が付いちゃうよ」
「え…いいんれすか?」
「うん…いいよ」
「それれしたら…」
ぽんっ
みどりは頭をご主人さまの腕に乗せた。
「ご主人さまの腕…温かいれす…」
みどりはご主人さまの腕から、ご主人さまを感じた。2人は何もせず、ただ純真に星を眺めていた。
それから1時間程後のこと、
くしゃん
みどりはくしゃみで目を覚ました。
「ご主人さま、ご主人さま?」
クー スー
ご主人さまはみどりを腕枕しながら眠ってしまっていた。
「ん?これは何れすか?」
ふと自分の薬指を見つめるみどり。そこには一つの指輪が光っていた。その指輪には緑色の珠が一つ付いていた。
「ご主人さま、起きてくらさい」
ゆさゆさ
「んんーっ。あ、僕寝ちゃってたんだ」
「ご主人さま、これは何れすか?」
「あ、これかい?これは僕と守護天使達の絆…だよ、ほら」
キラン
ご主人さまは手を差し出した。その薬指には4色の珠が付いたリングが3個ついていた。
「絆…れすか?」
「うん、その指輪を外してこのへん、温めてみてみどり」
と、指輪の継ぎ目を指すご主人さま。
「え、分かったれす」
指輪を外して継ぎ目を温めてみるみどり。すると…
「ふえ、光るんれすね」
「僕のも、ほら」
みどりの指輪の珠と、ご主人さまの指輪の緑色の珠が光り始めた。
「れも、なんれ光るんれすか?」
「んー、僕も分からないんだけどね。友達が作ってくれたものだから」
「今度あゆみ姉さんに聞いてみるれす…ん?ご主人さま、早く帰るれすよ」
「あ、そうだね」
「あ、れも、起きる前にちょっといいれすか?」
「何だい?み…」
チュッ
「みどり」と言う前にみどりの唇がご主人さまの唇を塞いだ。
「み…みどり!?」
「ご主人さま…今日は本当に嬉しかったれす…ご主人さま大好きれす…」
ぎゅっ ぽふっ
そんなみどりを優しく抱き寄せて、
「僕も大好き…だよ」
と、一言だけ言うご主人さま。
「えっと…じゃあ行こうか、みどり」
「そうれすね、ご主人さま」
ぎゅっ
二人は仲良く手を繋いで、みんなが待つ千石屋へと向かっていった…
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あとがき
今回のSSはPHS完全執筆の6本目です。
誕生日小説も2順目に入りました。書くかどうか悩みましたが、やっぱり書いちゃいました。
あ、そうそう。今回2順目のタイトルには全部「○○曲」という言葉が入ります。
日本語の色名、誕生石の日本語名、雪小説(天原さんへ寄贈)ときてネタがなくなったのもあるんですけどね。
さて、今回は62日前という驚異的な記録なのですが、もうこれ以上の記録は作りません…たぶん。
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2003・02・26WED
雅