Importance of Dal Segno to Segno(戻る事の大切さ)

ここはとある岬、如月の寒い中に二人の姿があった…
「やっぱりちょっと寒いですね、ご主人さま」
「すぐそこはもう海だもん、寒いのは当たり前だよな」
「岬なのは知ってましたけど、まさかこんな場所だなんて思いませんでした」
「でもどうしてこんな所を知ってたの?たまみ」
「この前の朝のニュースでやってたんです。」
「なるほどね、でも車でしかやっぱりこれない場所だったね」
「はい…今思い出すだけでやっぱりちょっと怖いですっ、エヘヘ」
「やっぱりまだ怖いんだ」
「はい、こればかりはトラウマですから」
「それはしょうがないさ、トラウマばかりはさ」
「でも、ここに来ると思ったらあまり気にはなりませんでした」
「そっか…」
「ご主人さま、そういえばアレはどこですか?」
「アレって?」
「さっき名前を書いていたアレです」
「あ、うん。このポケットの中に…ほら」
「えっと…そこに付けるみたいですね」
「でも付けるのは帰るときでいいよね」
「はい…んっ、くしゅんっ」
「大丈夫かい?たまみ」
「いいですっ…あ、ご主人さま」
「ん?」
「ちょっとこの中に入ってもいいですか?」
「この中って…コートの中?」
「そうです。ダメ…ですか?」
「いいよ。ほら、入りな」
ぼふっ
たまみはご主人さまのコートに収まった。
「温かい…です、こうすると」
「僕もだよ」
二人はしばらくそのまま時間を過ごしていった…
………
「ご主人さま…」
「何だい?たまみ」
「たまみは、たまみはご主人さまの役に立ってますか?」
「ど、どうしたの?いきなりそんなこと言うなんてさ」
「最近色々考えちゃってるんです。どうしたらご主人さまの役に立てるかって」
「なるほどね、そういうことか」
ぎゅっ
ご主人さまはたまみを後ろから抱き締めた。
「ご主人さっ!…ま…」
たまみは一瞬驚いたものの、その温もりにすぐ顔を緩めた。
「あの頃を思い出してみるといいと思うよ」
「あの頃って…いつですか?」
「僕の所に来た頃のことだよ」
「ご主人さまの元に…来た頃ですか?」
「本当に僕の役に立とうとさ、らん達を抑えてまでやってたよね」
「確かにそうでした、でも今考えると悪いことしちゃったって思ってます」
「あの頃のたまみは、どこかがむしゃらだった気がするな」
「そ、そうですか?」
「僕のことを想っていてくれているのは、あの頃と変わってないみたいだけど」
「はい、気持ちはあの頃と全然変わってませんっ」
「でも、今はちょっと抑えちゃってるでしょ?」
「確かに…言われてみればそうかもしれないです」
「もうちょっとだけ、それを出してみたら?」
「でも…みんなが居ますから…」
「少しだけさ。例えば甘えるとか怒るとかをね」
「また甘えちゃっていいんですか?」
「いいんだよ、だって僕はたまみの唯一人のご主人さまなんだから」
「強く怒っちゃってもいいんですか?」
「それだって良いわけじゃないけど、ご主人さまの役目じゃないか」
「それで…ご主人さまのお役に立てますか?」
「それで癒されたり諭されたりするんだからさ」
「ご主人さま…」
クルンっ ぎゅうっ
たまみは身体の向きを変えてご主人さまを抱きしめ返した。
「温かぁい…です、ご主人さま」
「たまみ…」
「これからもずっと…ずっとよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、うん」
「だからしばらく…このままでいいですよね?」
「もちろんだよ、たまみの気が済むまで甘えてていいよ。あ、でも…」
「え?」
「ここじゃ寒いし車の中にしよっか」
「そんな…ムードが台無しです!」
「…さっそく何だか怒られちゃった気がするな」
「でも…あ、これだけここに掛けてからならいいですね」
「そうだった、すっかり忘れてたよ」
「名前はさっき来る前に書いたので、あとは掛けるだけですから」
「そうだね、それじゃあ掛けようか」
「はいっ」
カチャンッ
二人の名前が書かれた南京錠が柵へと掛けられた。
「これでよしっと。よし、それじゃあ車に戻って温かい物でも飲もうか」
「そうですね、風邪を引いたら元も子も無いですからね」
二人はそのまま車へと戻っていった。
 
「そういえばプレゼントがまだだったよね」
「えっ…ここに来れただけでも良かったのに…」
「それはそれ、これはこれだよ。はい、たまみ」
「ありがとうございます、ご主人さま」
「たまみが気に入ってくれると良いんだけどさ」
「これは…オルゴールですね」
「うん。ちょっと思うところがあって、これにしたんだけど」
「この曲ってご主人さまの…」
「そうだよ、特注で作ってもらったんだ」
「ずっと大切にしますね」
「そうしてくれると嬉しいな」
寒い車の中、でも二人の心はそんな中でも温かくなっていったという…
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あとがき
雅です。残すところオリジナル守護天使を入れて2本となりました。
今作は葛藤とでもいいましょうかね。たまみは相変わらず難しいです。
あ、そうそう連絡です。
まだまだ、来年度までやるかどうかを検討しています。やる方向になりそうな予感も…
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2008・02・22FRI
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