Rose Madder's Card(あかね色のカード)
「ご主人さま、今日の運勢を占ってあげる」
「うん、じゃぁお願い」
あかねが日課になっているご主人さまの占いに入った。半眼になって水晶を見つめて何かを見出したあかねが言った言葉は、
「ご主人さま、私に何かをプレゼントするといいことがあるみたい」
「え…それって…」
「ご主人さま、今日は何の日か覚えているよね…」
「えっと確か…9月23日だと…秋分の日?」
「…ご主人さま、ちょっとだけ呪ってあげようか?」
「冗談だよ、あかね。そんな事僕が忘れるはずが無いじゃないか」
「そうだよね…」
「でも何が欲しい?あかね」
「…………」
そう聞くと何故かあかねは口を閉ざしてしまった。
「どうしたんだい?あかね」
「…よく考えると私は欲しい物なんか無いよ…、もうこんなにも満ちているから」
「それはみんながいるから?」
「うん…」
それからご主人さまは少し考え込んで…
「そうだ!あれにしよう。確かあれはあかねも持ってなかったはずだ」
「え、何にしたの?ご主人さま」
「知りたいなら占ってみたら?」
「意地悪な事をするね…ご主人さまも…」
「じゃぁついてくる?今から買いにいこうかと思ってたんだけど」
「そうだね…じゃぁ一緒に行くよ」
「みんなー、ちょっとあかねと出かけてくるから、後は頼んだよー」
「「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」」
こうして二人は街へと出かけていった。
「それでどこに行くの?ご主人さま」
「あれが売ってるとしたら…どこだろう?」
「ご主人さま、それって占い関係のもの?」
「うん、そうだけど」
「それなら私、あるところを知ってるよ」
「それじゃぁそこに行こっか」
「うん」
「じゃぁ案内してくれる?あかね」
「分かった、じゃぁ行こう。ご主人さま」
あかねの案内で二人は仲良くその店への道を進んでいった。
その頃、ちびっこトリオの三人は千石屋で一生懸命小麦粉を捏ねていた…。
店に着いた二人。その店は人がほとんど入らないような裏路地にあった。
ガラガラガラ
「いらっしゃい。あ、あかねちゃんじゃない。その方はもしかしてあかねちゃんが言っていたご主人さま?」
「こんにちは、そうだよお姉さん。ご主人さま紹介するね、この人がこの店の主人の吉水千晶さん。お姉さん、この人が私のとっても優しいご主人さま」
「初めまして、千晶さん」
「こちらこそ。それであかねちゃん、今日はどんな用で来たの?」
「あ、忘れてた。あのね、今日はご主人さまが私に誕生日プレゼントをくれるってことで、占い関係だったからここに来たの」
「え、今日誕生日だったのあかねちゃん、おめでとう」
「ありがとう、お姉さん。でもね、そのプレゼントをいくら聞いても秘密って言うの…」
「だってプレゼントって秘密の方が面白いじゃない。それで千晶さん、ちょっと作って頂きたい物があるんですけどよろしいでしょうか?」
「あ、いいですよ。何ですか?」
「…………………」
ご主人さまは軽く耳打ちをした。
「あーそれは面白いですね。分かりました、一時間くらいあれば何とかできるかと思いますよ」
「それじゃぁお願いしますね」
「はい」
二人はとりあえず時間つぶしのため、一旦店を出た。
その頃千石屋では油揚げを揚げる音やだし汁を煮る音がしていた…。
一時間後…再び店に戻ってきたが、あかねには外で待っていてもらった。
「例のやつ、出来ましたか?」
「はい、こんな感じになりましたがよろしいでしょうか?」
その真新しい箱の中には“茜色のタロットカード”が入っていた。
「はい、それでいくらになりますか?」
「お代はいいですよ、これは私からのプレゼントにもさせてもらいますから」
「え、そんな…悪いですよ」
「いいんですよ、まぁそこまで言うなら塗料代と箱代の1000円でいいですよ」
「それじゃぁ、1000円だけでもお支払いします」
ご主人さまは彼女に1000円を手渡した。
「ありがとうございました。これからもあかねちゃんの事を大切にしてあげてくださいね」
「はい、もちろんですよ」
「またいつかお会いできる事を楽しみにしてますよ」
「はい、それでは」
ガラガラガラガラ
「あ、ご主人さま」
「あかね、だいぶ待ったでしょ、ごめんね」
「そんな事無いよ…その手に持っているのが私へのプレゼントなの?」
「そうだよ、開けてみていいよ」
「ありがとうご主人さま」
さっそく箱を開けてみるあかね。
「え…これって…いいの?私がこんなもの貰っても」
「もちろんさ。今日はあかねの誕生日なんだからさ」
「ありがとうご主人さま。そうだ、ちょっとだけでいいからかがんで欲しいな…ご主人さま」
「え、いいけど」
ご主人さまがかがんだところで…
「これ、私からのお礼…だよ」
チュッ
アカネは自らの唇をご主人さまの唇へと重ね合わせた。
「まぁお熱いこと」
ふと後ろを振り返ると、そこには二人を見送りに出ていた千晶さんが居合わせていた。二人はもはや顔を赤くするしかなかった。
「それじゃぁありがとうございました」
「また来るね、お姉さん」
そして二人は挨拶をした後、みんなが待つ千石屋へと向かった…そこには山盛りのうどんと油揚げがあったという…。
後日……
アカネはそのタロットカードで占いをしていた。
「あかね、何を占っているんだい?」
とご主人さまが聞くと、あかねはこう言った。
「ご主人さまと私の…恋愛運…だよ…」
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あとがき
うわぁぁぁ〜こんなに長くなるはずなどなかったのにぃぃぃ。
書いてたら止まらなくなってしまった〜。
あ、ちなみにお姉さんの「吉水千晶」という名前は何となくフィーリングです。
まぁ水と晶で「水晶」を表現したかっただけなんで。
しかしながらテスト前になるとこんなにすらすら書けるなんて…
だってまだ誕生日の一週間以上前なのに…。
まぁいいか…。
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2002・09・14SAT 初版公開
2002・09・15SUN 修正第1版公開
雅