Pure White's Midnight(純白の深夜)
ゆきは誕生日パーティーも終わり、自分以外を寝かしつけるとご主人さまに誘われた。
「あら、まだ起きておいででしたか?」
「うん」
「ご主人さま、お疲れでしょう。先にお眠りになられても良かったでしたのに」
「そんな…ゆきさんだって誕生日だったのに、結局寝かしつけることまでやらせちゃったし…」
「いつも私が好きでやっている事ですし、ご主人さまが気にする事ではないですわ」
「でも…いつも、ありがとうね、僕もやりたいんだけどさすがに疲れてるから…」
「そんな、お礼なんていいです。お疲れのご主人さまの変わりのお勤めですし」
「んーとじゃあ、一緒に飲まない?」
「え…どうしてです?」
「え、それは…まあいいじゃない、飲もうよ」
「フフッ、たまにはそういうのもいいですわね、お酒でなかったらお付き合い致します」
トクトクトクトク
二人のグラスにシャンパンが注がれた。
「ご主人さま…これはお酒では?」
「うん、まあお酒だけど弱いから大丈夫だよ」
「でも…それにこれはお高かったでしょう」
「いいんだって、これはゆきさんのために買ってきたシャンパンなんだからさ」
「それならば戴きます」
「それじゃあゆきさんの誕生日をお祝いして、乾杯」
「乾杯」
チン
二人のグラスが綺麗な音で触れ合った。
ゴクッゴクッ
「美味しいですわご主人さま、やはりこれはかなりお高いものですわね」
「まぁ、そんなに安いものでもなかったかな」
「本当にありがとうございます」
「どういたしまして、ゆきさん。もう少し飲む?」
「あ、戴けるのならもう少し…」
トクトクトクトクトク
ゆきとご主人さまのグラスに二杯目のシャンパンが注がれた。
ゴクッゴクッ
二人の喉はシャンパンによって再び潤わされた。喉に残るシャンパンの香と炭酸が体に心地良い。
「あ、そういえばプレゼントをまだ渡してなかったね」
「え、こんなに良いものを頂きましたのに…もう結構です」
「でも、これは受け取って。これは僕から大切な天使への気持ちだからさ」
ポッ
言ったご主人さまも、言われたゆきも、お酒で若干紅く染まった顔をさらに紅く染めた。
「ご…ご主人さま…そんな言葉…恥ずかしいです…」
「うん…言った僕もさすがに恥ずかしいよ」
「でも嬉しいです…私の事をそういう風に思っていていただけていて」
「僕は…僕の素直な気持ちを言っただけなのに、こうやって改めて言うと…やっぱり何だかテレくさいや」
「私も…いつもは他の守護天使の方と一緒になって、ご主人さまをお守りしてますので…こんな風に二人だけの時間(とき)で…先程の台詞は…なんだか恥ずかしいです…」
二人の間にしばらく言葉は無くなった。それが二人にとって、正しき選択であるかのように…。
そして…
「ゆきさん!」「ご主人さま!」
二人の言葉は同じ時を選んで発せられた。二人ともこれ以上の沈黙が気恥ずかしかったのであろう。
「な…何でしょうか?ご主人さま」
「ゆ…ゆきさんこそ何だい?」
「ご主人さま…顔が随分とお紅くなっておりますわよ」
「ゆきさんこそ…随分と頬が紅く染まってるよ」
「こ…これはご主人さまのお酒のせいです」
「ぼ…僕だって…これはシャンパンのせいだって…」
それから二人は無言になって見つめあい、そして…
チュゥゥゥゥッ
キスをした…それも誰の誕生日よりも永い時間(あいだ)…。
「ご主人さま…」
「ゆきさん…」
「こんな感情を持ってはいけないはずなのに…でも私、ご主人さまのこと…」
そのゆきの次の言葉を、ご主人さまは人差し指でふさいだ。
「みんな言わなくてもいいよ、僕だってゆきさんのこと…」
ゆきもご主人さまの次の言葉を、人差し指でふさいだ。
「フフッ、これでおあいこですわね」
「え…あ…うん、そうだね」
その時のゆきはどこか艶かしかった。
「あ…あの…ご主人さま…」
「ん…何だい?ゆきさん」
「ちょっとだけ…ご主人さまに寄り添っても…」
コクッ
ご主人さまは何も言わずにただ頷いた。
ピタッ
ゆきはご主人さまに体をあずけるかたちとなった。
「(こういう時のゆきさんって…可愛い…)」
そんなことを思いながらご主人さまは、
くしゃっくしゃっ
ゆきの髪を優しく撫でてやった。
「(ご主人さまったら…さりげなく…でも何だか…暖かい…)」
しばらく二人は無言で互いの心の温もりを確かめあった。
「あ…ゆきさん…忘れてた…結局まだ、プレゼントを渡してなかったよね」
「ご主人さま…何をいただけるのです?」
「僕がゆきさんに付けてあげてもいい?」
「はい…。大好きなご主人さまに付けていただけるのなら…」
「じゃあ、つけるね」
パチ パチ
ゆきの耳元に、純白の雪の結晶の形がついたイヤリングが付けられた。
「ご主人さま…ありがとうございます…とても素敵です」
「どういたしまして、気に入ってもらえて嬉しいよ」
「ご主人さま…ご主人さま…大好きです…」
チュゥゥゥゥッ
ゆきは無意識にご主人さまを抱き締めて、そして口付けをした。さっきと同じ、いやさっきよりずっと永い時間…。そしてキスが終わりし瞬間、時計の短針と長針が12を刻んだ
「…そろそろ寝ようか…ゆきさん」
「はい…」
二人は同じ蒲団に入って、互いの温もりを感じあいながら寒き一夜を終えていったという…
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あとがき
今回のSSはPHS完全執筆の3本目となりました。
当初このゆきさんのBSSは、どういう風に書こうか迷いました。
いつもと同じようなパターンじゃ面白くないと思ったので
でも最終的にはパーティー後の話として綺麗に書けたので良かったです。
何だかんだ言ったって結局…甘々ラブラブな話になりました。
ちなみに私はラブラブな話には一切リミッターがかかりません。(笑)
ただ…あと少しで危うく18禁になりそうだった…それが心残りかな。
(どっちの意味で心残りなのかは、ご想像にお任せします。)
何だか最近、どんどん書き上げていくスピードが上がっていくなあ…。
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2002・12・23 NAT/MON
雅