Opal's Lip(蛋白石の唇)
ある日の夜、悟郎は誰かの気配に目を覚ました。
「あ、ご主人様、起こしてしまいましたか」
「あれ、ユキさんか。こんな夜遅くにどうしたんだい?」
「いえ、ちょっと寝れなくて…」
「じゃ、僕もちょっとユキさんにお付き合いしようかな」
「それでは今、コップをお持ちしますね」
「あ、うん」
トクトクトクトクトク
悟郎のコップにジュースが注がれていった。
「あ、ありがとう、ユキさん」
「どういたしまして、ご主人様」
「でも何で眠れなかったの?ユキさん」
「え…ちょっと…」
「ちょっと…何だい?」
「蛇が夜行性なのはご存じですよね、それもあるのですがこんなにいっぱい寝ていると、私には暑くて…」
確かにこの部屋にはかなりの人数が寝ている。ユキさんにはちょっと酷な状況であろう。
「じゃぁちょっと扇風機でもいれようか?」
「そんな私だけのために…、それにみなさんもそれではお寒いでしょう」
「そっか…でもなぁ…僕じゃ何も出来ないし…」
「ごめんなさい、こんなことご主人様に相談をするようなことではないですわね」
「いや、いいんだよ。僕だってみんなのこと守っていかなきゃいけないんだからさ」
「そう…ですか…で…でも…」
「そんなに悲観的になることはないよ」
チュッ
「ね、じゃ僕は朝までユキさんにお付き合いすることにするかな」
「え、ご主人様お疲れでしょう、だからお休みください」
「いいんだよ、だって明日は休みだし」
「あ、そうでしたわね、それではぜひお付き合いください」
そうして悟郎は今宵2杯目の飲み物をユキに注いでもらった。それは木の葉が色付始めた十月の夜のお話であった…
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2002・03・05TUE
雅