Obedient feel(素直な気持ち)

「ふぅ…やっぱりもうこの時間は寒いね、みか」
「そうね、ご主人さま」
ご主人さまとみか、二人はみかの誕生日の夜のベランダに居た。その夜は月が無い夜であった…。
「今日はでも、色々楽しかったわ」
「うん、楽しんでもらえて嬉しいよ」
「でも…」
「でも?」
「あんなところで、いきなり抱きついてくるなんて、ご主人さまったらダイタンなんだから」
「しょうがないじゃないか。だって…って抱きついてきたのってみかの方じゃなかったっけ?」
「…しょうがないじゃない、だって本当に怖かったんだもんあの映画」
そう、今日の二人はといえば…
 
「じゃあこの映画にしようか」
「そうね、ご主人さま」
二人が入ったのはホラー色たっぷりの映画であった。そして案の定…
………
「きゃあっ!ご主人さまぁ…」
ぎゅうっ
みかは、隣の席に座っていたご主人さまの身体に思い切り抱きついた。
「ちょっ・ちょっとみかっ!」
「あ…ご・ごめんなさい…」
「まったく…怖くないからこの映画にするって言ったのはみかじゃない」
「しょうがないでしょ、みかが思ってた以上に…きゃっ」
ぎゅううっ
みかは抱きしめた腕の力をさらに強めた。
「…しょうがないな…まあいいか…」
その映画中、みかはご主人さまの身体にぴったりくっついていた。
………
 
「あとさ、昼ごはんもさ…」
「もうその事は言わないで、みか恥ずかしいのに」
 
「みか…」
「なあに?ご主人さま」
「いや、みかって意外と野菜を食べるんだって思ってさ」
「それはそうよ、だってみかはうさ…」
「ん、どうしたん…あ!みか…」
「うさ…晴らしのためよ」
「………(ごめん…みか…)」
 
「でもあれは、ご主人さまが悪かったんじゃない」
「あ、う…そうかも、ごめんねみか」
「でももういいわ、許してア・ゲ・ル!」
「ま、抱きついた事とでおあいこってことでね」
「それもそうね」
「でも、今日はおかげで疲れちゃったな、ちょっと」
「え…そうなの?」
「うん、だってみかがあんなに荷物を持たせたからさ」
「あ…そうね…。ちょっと持たせすぎちゃったかしら。でもご主人さま、頼りにしてるんだからね」
「これはもっと体力つけなくちゃ駄目だなぁ…」
「フフフ…でもいいの、みかはそんなご主人さまが好きなんだ・か・ら」
ぴたっ
そしてみかはご主人さまの唇に人差し指を押し当てた。
「えっ…?」
「もうこれ以上何も言わなくていいの、ご主人さま…」
ぎゅうっ
みかはご主人さまに抱きついた。まるでか弱い乙女のように…
「み・みかっ!?」
「ご主人さまはそのままでいいの…そのままで…」
「えっ…」
「みかは、今のご主人さまの瞳が、腕が、胸が、それから…」
チュッ
みかはご主人さまに軽くキスをした。
「この唇も大好きなんだから、ね」
「そう…なの…?」
「それはたぶん、みんなもそう思ってるわよ」
「え…みんな…?」
「うん。だから…それはたぶん…守護天使みんなが、思ってることだと思うわ」
「このままの僕がいいってことを?」
「だって、いきなり明日ご主人さまに筋肉がついちゃったら…たぶんみんなひいちゃうわよ」
「あ…ま…それもそうか」
「それに…」
チュッ
「ご主人さまは世界一いい人よ、すべてにおいて…ね」
「そんなこと言われると…ちょっと恥ずかしいな…」
「そんなに恥ずかしがる事ないじゃない」
ぎゅうっ
みかは抱きしめていた腕の力をさらに強めた。
ぎゅむうっ
ご主人さまはそのみかの身体を、温めあう形でさらに抱きしめてあげた。
「ん…温かい…ご主人さま…」
「みかの身体も…温かいよ…でも…」
「え、何?ご主人さま」
「僕の身体に…みかのさ…胸が当たっててさ」
少しだけ顔を紅くしながらご主人さまはそう言った。
「いやっ…ご主人さまってエッチなんだから…でもいいの…」
「えっ?いいって…どういうこと?」
「ご主人さまのこと好きだから、いいの」
「あ…う…うん…」
「好きな人じゃなかったら、いくら寂しくなったってこんな風に抱きついたりしないわ」
「あ…そうだよね、みか」
「それに少しみかの胸が当たってるだけで、恥ずかしがってるなんて…ご主人さまもまだまだ純情なのね」
「う…それはそうだよ、だって君たちが来たのもまだそんな前じゃないじゃない。最初の頃なんかは今よりもっと恥ずかしかったんだからさ」
「そう…なの?」
「だって突然家に女の子が3人来て、それから人数が増えていって12人になったでしょ」
「確かに…そうだったわね」
「家の中で僕だけが黒一点だったからさ、何だか気恥ずかしかったんだよね」
「そうだったの…」
「でも、いいさ。今はもうこうして楽しく、12人の守護天使に囲まれて生活しているわけだしね」
「うん、みかももう前世の寂しさなんて忘れそうなくらい…あゆみもななもたまみもあかねも…そしてご主人さまがいてくれるんだもん」
「ありがとう…みか。あ、そうだこれ」
と、ご主人さまはポケットの中から小さな袋を取り出した。
「そういえばパーティの時に渡してもらってなかったわ。開けていい?」
「いいよ、もちろん」
ペリッ つつつ
「これって…いいの?ご主人さま」
それは金色の三日月のついたイヤリングであった。
「もちろん、それはみかのための物だからさ」
「ア・リ・ガ・ト!ご主人さま」
「じゃあそろそろ中に入ろうか、寒いしさ」
「そうね…あ、でも…」
「でも何だい?みか」
「一緒の蒲団で寝ましょ、ご主人さま」
「…ん、いいよ…」
そして二人は、ベランダから家の中…そして仲良く蒲団の中へと入っていった…
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あとがき
2004BSS、開始一ヶ月でついに5作目となりました。
何だかでも…みかは難しかったなあ…。
状況は去年とほぼ一緒です、でも話の中身を変えてみました。
タイトル共通点は、この次の作品が出れば何とか分かるでしょう。
次回作はたぶん、オリジナル守護天使orあかねBSSかな…
ちなみに次々作で1年越え達成できるでしょう。(遅れてるんだか進んでするんだか…(笑))
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2003・10・08WED
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