Moonstone's Sound(月長石の音)

「あれ?ネネ、一人なの」
こくり
無言のままうなづくネネ。
「どうしたの?遠くなんか見てて」
すると突然ネネが話し始めた。
「ご主人ちゃま、ネネ、ちょっと怖いんでちゅ」
「えっ!?怖いってどういうこと?」
「ネネ、みんなの声で気持ちが分かゆんでちゅ」
「うん、それは知ってるけど……」
「でも分かゆのが怖いんでちゅ」
「それって分からなくていいことまで、分かっちゃうのが怖いっていうこと?」
「そうでちゅ」
「(あぁだからさっき一人で居たんだ…。なんだかここに来た時のアカネに似ているなぁ)」
「ご主人ちゃま、今何か考えていまちたね」
「え、うん、ちょっとね。アカネも昔はそうだったなぁって思って」
「え、アカネお姉ちゃんもそうだったんでちゅか?」
「うん、アカネもそうだったんだ。人が怖いってことがね。でもここにいる守護天使と出会って、アカネは少しずつだったけど変わっていったよ」
「でもネネは人の気持ちが分かゆから……」
「ここのみんなはやさしいから大丈夫でしょ」
「うん、でもそれだとここから外に出れないでちゅ。外は人がいっぱいで怖いでちゅ」
「でもご主人様の所はもっといっぱい人がいるかもしれないよ」
「こ、怖いでちゅ」
ポフッ
ネネはご主人さまの胸に顔をうずめた。
「う〜ん、じゃぁさ僕が人が少し怖くなくなるようなおまじないをしてあげる」
「え、ほんとでちゅか?」
「うん、じゃぁちょっと目をつぶってて」
「これでいいでちゅか?」
「うん」
チュッ
ご主人さまは「大丈夫だよ、絶対に」の気持ちを込めてネネの唇にそっと口付けをした。
「ご、ご主人ちゃま〜」
ネネは再びご主人さまの胸に顔をうずめた。ちょっと顔が赤くなったからである。それは梅雨の雨が窓を濡らし続ける6月のお話であった…
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2002・03・23SAT 初版公開
2002・05・31FRI 修正第1版公開
2002・08・13TUE 修正第2版公開
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