Monochrome Sphere Wind(黒白の天風)

風も徐々に冷たくなり、段々と日が短くなってきたそんなある日…
ブルルロロロロ
西に向かう車、ご主人さまとみかはその中に居た。
「ねぇ、ご主人さま」
「何だい?みか」
「本当に良かったの?あのホテル、とっても高いのに」
「いいんだよ。大事な天使の誕生日くらい、わがままを聞いてあげるのが男ってもんだからさ」
「ご主人さま…やっぱりダ・イ・ス・キッ!」
ぎゅうっ
「こ・こらっ!そんな急に抱きつかないでって、みか。僕は運転中なんだからさ」
「あっ、ごめん…ご主人さま」
「ま、いいけどさ」
「じゃ、代わりに…」
チュッ
みかはご主人さまの左頬へと唇を付けた。
「ありがと、ご主人さま」
「…う・うん…」
「ご主人さま、紅くなるなんて純情なのね」
「そんな事をされて紅くならない人がいるかな?」
「それもそうね」
ズズズズズ
信号で止まる車、そして…
チュッ
「えっ(ポッ)…ご主人さまっ!?」
にわかに紅く染まっていくみかの顔。
「紅くなるだろ、みか」
「ん、そうね」
ブルンッ ブロロロロルルル
信号が変わり、再び西へと向かい車は走り出した…
 
バタンッ バタン
「ここなのね、ご主人さま」
「うん、この街で一番大きいのがあるのがここだったからさ」
二人が着いた先、そこは…
「「いらっしゃいませ」」
そこは街一番の大きさを誇るホテルであった。
「こんなホテルに泊まれるなんて、夢みたい…」
「それにしても、急だったけれど空いててラッキーだったよ」
………
「ねえ…ご主人さ・ま」
「ん?何だい?みか」
「みかのお願い、聞いてくれる?」
「うん、僕のできる範囲のことならね」
「みかの誕生日なんだけど、行ってみたいところがあるの」
「いいけど、いったいどこなんだい?」
「プールのあるホテル、一回行ってみたいんだけど…ダ・メ?」
「んー、今からで空いてればそれでもいいかな。実はさ…あ、ちょっとつばさ達も居るからちょっと耳を貸して」
「え?あ、うん」
「実はさ、らんとあゆみとみかとゆきさんにはいつもお世話になってるからさ、一泊くらいの旅行に連れていってあげようと思ってたところなんだ」
「えっ…!?それって…」
少しだけ頬を紅くするみか。
「べ・別にそんなことは無いよ…たぶん…」
そんなみかから頭を離して、顔を紅くしつつ一応の弁明をするご主人さま。
「で・でもご主人さまなら、みかは構わないわよ」
「え・えっと…うん」
と、そこに…
「あれ?みかさんにご主人さま、どうしたの?そんなに顔を紅くしちゃってさ」
「何でもないわ、つばさ」
「うん、何でもないよつばさ」
「???…まあいいけどさ」
つばさはそのままどこかへと行ってしまった。
「じゃあ、みかの言ったのでいいの?」
「うん、まあだからちょうど良かったさ」
「じゃあ決まりねっ!」
「そうだね、じゃあ何とかして予約を入れてみるよ」
「あ・り・が・とっ!ご主人さま」
チュッ
みかはご主人さまの頬へと一つキスをした。
………
そしてチェックインを済ませた二人。
「何かお荷物はございますか?」
「あ、いえ特に」
「それではご案内します」
 
バタンッ
部屋へと入ったご主人さまとみか。
「ふー、やっぱりこういうホテルは部屋も豪華だね、みか」
「うん、ご主人さま」
「えっと、じゃあ行こうか」
「えっ?どこへなの?」
「ここに来たもう一つの目的があっただろ、みか」
「あ、そうね。忘れちゃってた」
「こーらっ」
こつんっ
ご主人さまはみかの頭を一つ小突いた。
「んくっ!」
「ほらっ、行こうよ」
「そうね、あっ…ご主人さま」
「何だい?みか」
「プールに行くまで、手…繋いで」
「うん…いいよ」
ギュッ カチャッ バタンッ
二人は水着などを持ってプールへと向かっていった。
………
「ご主人さまーっ!」
「あ、み……」
ご主人さまはみかの純白の水着姿に見惚れてしまっていた…
「どうしたの?ご主人さま。もしかして、みかのこの水着に見とれているの?」
「え・あ、うん…」
「え・えっと…そんな風に言われると恥ずかしいわ…」
ご主人さまのあまりに率直で純粋な答えに、みかは顔を赤らめてしまった。
「でも、本当に綺麗だよ、みか」
「あ・ありがと、ご主人さま。ご主人さまも何だかカッコいいわよ」
そんな一方のご主人さまの水着は漆黒のパンツタイプのもの。
「え・うん、ありがとう」
「こんな所で休んでいるのもあれだから、泳ぎましょ」
「それもそうだね、じゃあ泳ごうか」
そこは平日ということもあり、人も多くなく恋人のような時間を二人はゆっくりと過ごした。
 
「それじゃ、部屋に戻りましょ」
「うん。でも夕食まで時間があるし、一回部屋に戻ったらちょっと外に出ようか」
「それもそうね、ご主人さま」
「夕食が終わったらお風呂に行こうか、ここの風呂は温泉だってさ」
「そうだったの?それじゃあそうしましょ」
………
その夜…
「ご主人さま…」
「あれ?みかのベッドはあっちじゃないの?」
「一緒に…寝たいの…」
「えっと…」
「ダ・メ?」
「…うん、いいよ。今日くらいみかのわがままを聞いてあげなくちゃね」
「ありがと、ご主人さま」
ガバッ ススススス パタッ
ご主人さまの掛け布団を肌蹴て、中へと入るみか。
「今日はみかのわがままを聞いてくれて、ありがとっ。(あ…何だかご主人さま、いい匂い…)」
「どういたしまして。たまにはいいかな、こういうのもさ。(みかの香り…いい匂いだ…)」
「ご主人さま…大好き…よ」
「僕もだよ、みか」
ギュッ ギュゥッ
二人はどちらからともなく互いの身体を抱きしめあった。そして…
チュゥゥッ
どちらからともなく二人は口付けをした。
「それじゃあ寝よっか」
「そうね、ご主人さま」
パチンッ
部屋の電気が落とされ、二人を夜の風と星の光が包んでいった…
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あとがき
連続当日仕上げ、そしてタイトル選出ミスったなぁ…雅です。
誕生日SS8本目(管理人BSS含む)、まあ無い頭を振り絞ってネタを出してみました。
次のあかねの方を先に書こうかと思ったくらい、ネタに悩みましたよ、ほんとに。(次のあかねは既にネタが決定済み)
次はあかねBSS、ゆっくり確かなものを書きたいと思います。
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2005・09・12MON
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