Lottery Card and Good News(福引券と福音と)

カランカランカランカランカラン
この音が全ての始まりとなっていた…
 
「ご主人さま、今は暇ですか?」
「あ、うん大丈夫だけどどうしたの?たまみ」
「これからおつかいに行くんですけど、一緒に来ていただけたら嬉しいのですが」
「いいよ、と言うことは重たいものがあるんだね?」
「はい、あれだけあったミカンがもう無くなっちゃいました」
「ええっ!?10kg箱で3日前に買ってきたのにもう無いの!?」
「昨日…くるみお姉ちゃんがほとんど食べ尽くしちゃったんです…」
「そっか…どうりでくるみからどこか柑橘系の香りがするかと思ったら…」
「6kgくらいいっぺんに食べちゃったみたいです」
「まあそれくらいくるみにかかれば一溜まりも無いのか、やっぱり」
「それで今日は普段の買い物とそれが加わってるのです」
「あれ?他のみんなはどうしたの?」
「それが…みんなあゆみお姉ちゃんとらんお姉ちゃんが、公園に連れてっちゃったみたいです」
「まあ子供は風の子とは言うけど…ま、いっか。暮れないうちに行こう、たまみ」
「はい、そうですねご主人さま」
「寒くないようにするんだよ、今年は暖冬だと言っても冬なんだからね」
「ご主人さまこそ、こんな時期に倒れられたら困っちゃいますから…ね」
二人は厚手の服を着て家を出た。
 
「L玉にする?それとも2L玉にする?たまみ」
「重さが1kg違うんですよね…値段は500円差ですけど、皮の分や詰め方を考慮すると…」
お使いを一通り終えて、最後にミカンを買いに青果店へと来た二人。
「おじさーん、3L玉はありませんかー?」
「3Lかい?あー、ちょっと待っとれー」
と、しばらくすると…
「あー、一箱だけ残っとったよ。8kgだけどいいんかい?」
「値段しだいですけど、いくらになります?」
「まあ、最後の一箱やし…こんなんでいいよ」
と、指で値段を出す青果店の店長。
「え?いいんですか?そんなに安くて」
「いいんだよいいんだよ、いつもたまみちゃんの家には色々と買ってもらってるしな」
「ありがとうございます、それじゃあその好意に甘えさせてもらっちゃいますね」
「それじゃあ…ってこれ、持っていけるのかい?」
「はい、今日はご主人さまが一緒ですから。ご主人さま、お願いします」
「そんならほい、兄ちゃん」
ご主人さまの腕に8kgの箱が載せられた。
「それでは、これでお願いします」
「ん、じゃあお釣りと…これも持ってってくれ」
「え?いいんですか?」
「いいんだよ、どうせ明日までだしな」
「ありがとうございます、えっと福引会場はどっちでしたっけ?」
「んー、確か商店街の真ん中の方だから…あっちやったな」
「あっちですね、分かりました。色々とありがとうございましたー」
「そんなら、またなー」
「ご主人さま、行きましょう」
「うん、そうだね」
二人は荷物を持って福引会場へと向かっていった。
 
会場は最終日前日ということもあってか、少しではあるが混んでいた。
「ご主人さま、何枚ありました?」
「んーと、さっき貰ったのを含めて4回分かな」
「賞品は…お米10kgが貰えればいいですね」
「そうだね、それがあったらかなり助かるなあ」
「あ、次ですよご主人さま」
「うん、どっちが回す?」
「4回分ありますから、2回ずつにしましょう」
「それもそうだね、いいのが当たるといいな」
と、番がようやく回ってきたようだ。
「お願いしまーす」
「はい、1、2、3、4回分だね。それじゃあ回して」
ガラガラガラ ポトッ ガラガラガラ ポトッ ガラガラガラ ポトッ
と、ここまで3つは末等のティッシュであったのだが…
「最後の一回、良いのが来て下さいっ!」
ガラガラガラガラ ポトッ
と…
カランカランカランカランカラン
「おめでとうございまーす!!2等大当たりでーす!!」
と、2等の賞品を見ると…。
「いやー、明日まで出ないと思ったよー。はい、2等賞品の親子温泉宿泊券だ!」
「え…あ、ありがとうございます」
「今月中までだけど、大丈夫かな?お嬢ちゃん」
「ちょうど良かったじゃない、たまみ」
「え?ちょうど良かったってどういう…?」
「ちょうどさ、もうすぐたまみの誕生日だろ?いい機会だしさ、ここに行こうよ」
「あ、そうでした…。すっかり忘れちゃってました」
「それで、たまみはこれでいいの?嫌なら友達に譲るけどさ」
「え、えっと…行きますっ、だって…」
「ん?だって?」
「こんなところでは言えません!行きましょう、ご主人さま」
「え・えっと…うん、そうだね」
二人は賞品をもらって会場から去っていった…。
………
そして当日…
車へと乗り込んだ二人。
「宿までは車だけど…大丈夫?たまみ」
「たぶん大丈夫だと思います、だって…」
「ん?」
「だって…ご主人さまと二人っきりですから」
「そうなんだ…あ、福引会場の時の『だって』と同じかな?もしかして」
「え…覚えていたんですか?」
「ん?何となく覚えてたよ」
「でも、本当に幸せです。二人っきりで一日中居られるなんて…」
「そっか…よし、それじゃあ出発するよ」
「はい、どれくらいかかるんですか?」
「そうだなあ…2時間以内で着くと思うよ。着いたらゆっくり休もう」
「そうですね、ご主人さま」
二人を乗せた車は温泉へと向けて走り出した…
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あとがき
2006年度BSS15本目です。
忙しいのも終わりまして、少しは楽になりました。
あと少しで大学も卒業です、本当に早かったなあ…って思います。
来年度は…どうしましょうかね?らんの時までに決めておきますね。
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2007・02・21WED
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