Full Moon Rhapsody(満月狂想曲)
2月の2回目の日曜日のこと…
「ん?これは何だろう?」
こたつの上には一冊のノート、名前の場所に『ゆき』とだけ書かれていた。
「ゆきさーん、おーいゆきさーん」
と言ってはみたものの、布団の中で微睡み中のゆき、ご主人さまは苦笑いしつつ…
「何だろ?ゆきさんには悪いけど、ちょっと読んでみるかな」
パラッ
「!!??」
………
『1月29日(日) 天気:晴れ
今日はご主人さまが私の誕生日のことを私に相談されました。
どこかに連れて行ってくれるということでしたので、私はあゆみさんと同じ温泉をお願いしました。
ご主人さまはそれに快く承諾してくれました。
ご主人さまが電話をすると平日だったこともあって割とすんなり取れたようです。
雪の割と深い場所で、あゆみさんと違う温泉に連れて行ってくれるとのことです。
そこは美肌の湯だそうです、これ以上に綺麗綺麗に…いえ、ご主人さまのためにもっと綺麗になりたいです』
「何だかゆきさんらしいというか何というか…でもゆきさん、毎日日記をつけてたんだ」
『車はまた晶さんにお借りする手筈だそうです、今度お礼をしなくてはいけませんね』
「いつものことだからいいのに、ゆきさん…」
『それにしても今考えると、みかさんもあゆみさんも綺麗になって帰ってこられましたけど、
どうしてでしょうか?気になるところなので明日聞くことにしましょう』
「…あの後、あゆみとみかに怒られたんだよな、物凄くゆきさんに問い質されたって」
『ともかく楽しみな事が出来ました。2月2日が今から楽しみです』
「…次も見てみようかな、起きないでねゆきさん」
『1月30日(月) 天気:曇
誕生日のことで今日は心が浮ついていたようです、反省しないと駄目ですね。
皿洗い中にお皿を一枚割ってしまいました』
「どうりで31日のゴミに、割れた皿が入っていたわけだ」
『昨日の事をみかさんやあゆみさんに問い質してみたところ、2人とも顔を真っ赤にしてしまいました。
薄々は感付いてましたけど…』
「そうだよな。ゆきさんは年長者だし、やっぱり感付いてたか」
『あゆみさんが詳しく話してくださいました。ご主人さま…私にもお願いします…ね。
でも、話をしている時のあゆみさんはどこか幸せそうでした。
明日・明後日で行く準備をする事にしましょう』
「次は…31日か」
『1月31日(火) 天気:曇り時々雪
今日は雪が降りました、やはり綺麗なものです。
私が生まれたのもこのような雪の時期でしたから、感慨深いものがあります』
「雪か…雪のように白かったよな、蛇の時のゆきさんって」
『ついつい見とれてしまって、少し身体が冷えてしまった事は反省しなくては…
明後日はご主人さまにこの身体を温めていただきましょう。本当に楽しみです』
「あれ?日記これだけなのかな?もう次は1日のだし…でもちょっと恥ずかしいな、これ」
『2月1日(水) 天気:雨のち雪
今日の日中は雨でした。昨日より暖かかったようですっかり昨日の雪が溶けてしまって残念です。
明日の準備をする頃に、その雨も雪へと変わったようです。
ご主人さまの着替えも用意しましたし、他の物もみんな準備を終わらせました』
「そういえば、この前は久し振りにゆきさんの私服を見た気がするな」
『今日は早めに床に着きたいと思います。明日は7時に出るとのことですし。朝ご飯を食べてから出たいと思いますから。
みなさんの分も作っておくことにしましょう』
「いったいゆきさん、何時に起きたんだろう?僕まで早く起こされたしな」
『明日が本当に楽しみです…ご主人さま…』
「……あれ?2月2日の日記が無いな、どうして…って書ける状況でもなかったっけ」
と、1ページめくると…
ペラッ
「…あ、2月3日が二つある…そういうことか」
『2月3日(金)その1:2月2日(木) 天気:雪
昨日は日記を書くことができませんでしたから、今日2日分書こうと思います。
昨日は本当に楽しかったです。ご主人さまと一緒のお食事もできましたし、
ご主人さまと一緒の温泉も、その上何より…恥ずかしいのでこれ以上は書かないことにしましょう』
「…うん、そうしてくれると助かるな」
誰にも聞こえない相槌を打ち続けるご主人さま。
『でもこれでご主人さまのことが一層…好きになることができました。
ご主人さまとのこの日のこと、一生忘れる事は無いと思います』
「僕もだよ、ゆきさん。楽しかったし、別の表情も見ることが出来たし」
『この日のことはこれくらいにしておきます、心の中にしっかりと記録できましたから』
「うん…そうだね、ゆきさん」
『2月3日(金)その2 天気:雪→晴れ
一泊というのはやはり名残惜しいものです、後ろ髪を引かれる想いで帰ってきました。
楽しい時間というのはやはり早く過ぎてしまうものなのですね…
明日、いえ今日からまた今日のことを活力にして頑張りたいと思います』
「ありがとう。ゆきさんが居るからこそ、この家は成り立っているんだよな」
『昨日と今日でご主人さまの温もりをたくさん戴きました。
…このようなことを思ってはいけないのは分かっています。
けれど私、ご主人さまのことが…』
ガバッ
微睡んでいたゆきが突如起き上がった。
「ご主人さま、まだ起きられ…ってご主人さまっ!!」
「あ、えっとこれはその…ごめんっ、ゆきさん」
「…こんなことで声を荒げて申し訳ありません。でもご主人さま、女の子の日記を勝手に読むのはいけないことですわよ」
「本当にゴメンゆきさん、つい読み耽っちゃって…」
「でも今回は片付けていなかった私にも非はあります、なのでこれ以上は言えません」
「えっと…うん」
「ご主人さま、明日も早いのでしょう?そろそろお眠りになった方が…」
時計の針は既に12と1の間に在った。
「それもそうだね、それじゃあ寝ようかな」
「それではおやすみなさい、ご主人さま」
「うん。おやすみなさい、ゆきさん」
チュッ
軽めのキスを交わし、ご主人さまは眠りに就いた。
そんな時でも、空には月は変わらずに満月を描いて輝いていた…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
新年初の誕生日SS。雅です。
誕生日SS14本目(管理人BSS含む)、今回はさらに趣向を変えて日記形式に。
今日一日でなんとか書き上げました。これ以上伸ばすのは…ちょっとと思いまして。
次はたまみ、BSSも佳境に入ってまいりました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2006・01・13FRI
雅