My Friend(私の友達)

少しずつ街が春めいてきた頃の事…
「んー…やっと暖かくなってきたね、らん」
「そうですね、ご主人さま」
らんとご主人さまの二人は一緒にお使いに出ていた。
「こんな季節が誕生日ならんは、本当に幸せです」
「そっか、もうすぐらんの誕生日だっけ」
「はい、一年が過ぎるのは本当に早いものです」
「そうだ、じゃあ今のうちに聞いておこうかな」
「はい?何をでしょうか?」
「えっとさ、あゆみとかに話は聞いてないかな?」
「あ、その話ですか…はい、聞いてますけど…本当にらんもいいのでしょうか?」
「いいんだよ、それが僕の感謝の気持ちだからさ」
「えっと…はい」
「それでさ、どっか要望があればそこにしたいんだけど…何かあるかな?」
「それって、どこでもいいのでしょうか?」
「え?うん、どこでもいいよ。僕のお金の間に合う範囲ならね」
「いえ、どこって…場所なんですが…」
「それも心配要らないさ、晶に車を借りる手立てはついているからさ」
「えっと…少し変則的なのですがよろしいでしょうか?ご主人さま」
「ん?別に構わないよ。変則的って何だい?」
「あの、20日から21日で1泊にしたいのですが…ダメでしょうか?」
「そういうことか…たぶん大丈夫だと思うよ」
「良かったです…それならば行きたい場所があるのですが…」
「えっと、じゃあ詳しい話は家に帰ってからにしようか」
「そうですね」
二人は夕焼け空の家路を仲良く帰っていった…
………
「もしもし、晶」
『はい、何でしょう?先輩』
「あの、今度車を借りる時のことなんだけどさ」
『あ、21日から22日のことですよね。えっと、どうかしたんですか?』
「それそれ、それなんだけど1日前倒しって大丈夫か?」
『1日前倒しって…20日から21日にしてくれってことですか?』
「ああ、ダメか?無理してまでってことじゃないんだけどさ」
『えーっと…午後からならかまいませんよ。午前中ちょっと使うんで』
「本当か?それならそれでお願いできるかな?」
『はい、何時くらいにしましょうか?1時以降なら大丈夫ですよ』
「それならその1時でお願いできるか?」
『分かりました、その時間にお届けしますね』
「ああ、頼んだよ」
ピッ
「よし、車の目星もついたよ」
「ありがとうございます、ご主人さま」
「それで、らんはどこに行きたいんだい?」
「えっと…ここなんですけど…ダメでしょうか?」
「ん?なになに…え?どうしてらんがこんなホテルの招待券を持ってるんだい?」
「あの…らんの友達がここのホテルグループのオーナーの付き人をしてまして、その縁で頂きました」
「そういうことか…この券の有効期限もあってのことなんだね」
「はい。あの電話の方、借りてもいいですか?」
「いいよ、はい」
「ありがとうございます…えっと…」
ピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッピッ
………
『はい、遠野でございます。どちら様でしょうか?』
「琥珀さんですか?らんです」
『らんさんですか?お久しぶりですー。どうされました?』
「あの、先日もらった招待券の事でちょっといいですか?」
『はいー、使う日が決まったんですね?』
「あ、そうです。あの、最終日になったんですが…空いてますか?」
『そうですね…あ、大丈夫みたいです。2人でいいんですよねー?』
「はい、お願いできますか?琥珀さん」
『どうぞー、かまいませんよ。私もその日に志貴さんに連れてってもらって、行くつもりでしたからー』
「ええっ!?そうなんですか?それでは楽しみにしてます」
『はいー、では失礼しますー』
「こちらこそ、失礼します」
ピッ
「ご主人さま、それでは20日はお願いします」
「うん。えっと…今の相手が知り合いの人なのかな?」
「はい、とても優しい方でお料理も色々と教えあったりしてます」
「そうなんだ…よし、20日はまかしといてね」
チュッ
軽くご主人さまの頬に唇を付けるらん。
「はい、お願いします」
その日はそうして更けていく事となる…
 
当日…
「晶、急なお願いだったけどすまんかったな」
「いえ、いいですよ。でも昨日じゃなくて良かったです。昨日だったらこの市にさえいませんでしたから」
「え?何かあったのかい?ま、詮索するつもりは無いからいいけど」
「はい、そうしてくれると助かります。では、失礼しますね」
と、晶は超特急で街の方へと行ってしまった。
「らん、準備は大丈夫だね?」
「はい、ご主人さまの荷物とらんのはこれで全部です」
「よし、じゃあ出発するよ」
二人を乗せた車は西へと進んでいった…
………
「これはまた大きなホテルだね、らん」
「はい、ちょっとびっくりしました」
そこは15階建ての大きいホテルであった。
「あ…琥珀さーんっ!」 「え!?」
………
『琥珀さーんっ!』
「あ、志貴さん。ちょっと行ってきていいですか?」
「ん?いいけど…琥珀さん」
と、らんと一人の青年が琥珀の許へとやってきた。
「お久しぶりです琥珀さん、元気でしたか?」
「はいー、おかげさまで。らんさんこそお元気でしたか?」
「はい、今回はこんな良いホテルに招待ありがとうございました」
「いえいえ、以前からお世話になってましたから。あかりさんも先日来られました」
「あかりさんもですか?逢いたかったです…ちょっと残念でした」
「でも、今日は来てくださいましてありがとうございました。では、中へ行きましょう」
「はい」
「あ、こちらに来てくださいまし。特別招待の扱いになりますからー」
「は・はい、琥珀さん。それではご主人さま、行きましょう」
「え・あ、うん」
「志貴さん、今日は無理言ってすみませんです」
「いいんだよ、琥珀さん。翡翠はきちんと誕生日祝いをあげたけど、琥珀さんには中途半端になっちゃったし」
「らん、凄い人を友達に持ったんだね」
「はい、でもとても素晴らしくて良い友人に巡り合えて…らんは幸せです」
「そうだね、僕もそう思うよ」
「ほらー、行きますよらんさーん」
「あ、待ってください琥珀さーん」
この夜にこの2組がどうなったって?そんな野暮な事は聞かないことっ☆
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あとがき
2005年度BSSファイナルです。
今回も若干のクロスオーバー気味、誕生日が割と近かったですから。
割とゆっくりと内容を詰めて書いたつもりがこんな結果に…あれ?
来年度はまた4月から書き始めます(タイトル18個決定済み)
来年度はこれとは別にあることに挑戦します。軽く期待しておいてください。
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2006・03・13MON
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