Over the Fleet Wave(浦波の向こう側に)
8月に入る前の、日増しに暑さが強くなっていくある日のこと…
「ご主人さま〜っ」
一人の少女がご主人さまのところへとやってきた。
「何だい?くるみ」
「アイス買ってきたの、ご主人さまはどっちがいいの?」
「くるみが先に選んでいいよ、僕は残ったのでいいからさ」
「やっぱりそう言うと思ったの。だから同じのを買ってきたの」
「それなら僕に聞かなくても良かったんじゃない?」
「だって、ご主人さまいつも遠慮してるの。だから聞いてみたの」
「そっか、そういえばいっつも後に選んでたっけ」
「それじゃあ、はいなの。今はやっぱり氷系のお菓子なのー」
「やっぱりこれか…作者め…」
「ん?何か言ったの?ご主人さま。何か変な言葉が聞こえたの」
「いや、気のせいだよ気のせい。それじゃあ食べようよ」
「はいなの、いっただっきまーすなのっ」
と、そのおやつ中のこと…
「あ、そうだくるみ。今度の日曜ってちょうど誕生日だっけ?」
「え…あ、そうだったのっ!」
「それでさ、今年はどうしたい?くるみは」
「んー…毎年食べ物ばっかりだったの。だけど…」
「ん?だけど?」
「でも、それってくるみらしいけど、女の子らしくないと思うの」
「別にそんなことは気にしなくたっても良いと思うよ」
「でもでも、だから…今年はいつもと違う誕生日にしたいの」
「そっか、じゃあどうしたいの?くるみに合わせるからさ」
「んー、ご主人さまは何かやりたいことは無いの?」
「僕かい?僕はそうだなあ…あんまり思いつかないなあ」
「うーん…どうしたらいいのかな?あ、そうなのっ!」
「ん?何かやりたいことが見つかったのかい?」
「ご主人さま、今は時間あるの?」
「んー、まあ時間があるからいいけどさ」
「それなら、これからデパートかおっきなスーパーに行くのー」
「え?え?何をやりたいの?いったい」
「いいから、くるみに着いてくるのーっ」
「分かったよ、でもこれ食べ終わってからね。食べ終わったら連れてってあげるからさ」
「やったなの、それじゃあレッツゴーなのっ」
「…ってええっ!もう食べ終わっちゃったの?あれだけあったのに」
「これくらい、くるみのお腹なら朝飯前なの」
「そっか、よしっじゃあ行こう」
「はいなのっ」
二人はおやつを食べ終え、街へと出掛けていった。
近くの大型スーパーに来た二人。
「それで何を買おうと思ってるんだい?」
「えっと、くるみが持ってなかった物なの。ご主人さまは確か持ってるはずなの」
「ん?何だろう?僕は持ってる物だよね…」
「ほら、ここなの」
「ここって…そっか、僕は去年も行ったからなあ。くるみは一回も行ったことなかったっけ?」
「そうなの、だからご主人さま…くるみを海に連れてってなの」
「いいよ、それじゃあまずくるみの水着を買わないとか」
「そうなの、だからくるみの水着を選んでほしいの」
「そっか…って僕が選んでもいいの?」
「ご主人さまのためのものだから、ご主人さまに選んでほしいの」
「分かった、選んであげるよ。せっかくの誕生日だからさ」
………
30分後…
「これにするの、ご主人さま」
「うん、とっても似合ってると思うよ。くるみの元気なところが出てるしさ」
「ご主人さま、これ買ってなの〜」
「えっと、いくらだったっけ?女の子の水着だからちょっと恥ずかしいからさ」
「うん、分かった行ってくるの。えっと…あ、1980円なの」
「はい、2000円」
「それじゃあ行ってくるのー」
そして当日…
「くるみ、準備は出来た?」
「ご主人さま、大丈夫なの。ご主人さまこそ車の準備は大丈夫なの?」
「もう持ってきてもらってるから大丈夫だよ、鍵も渡してもらってるしさ」
「よし、それじゃあレッツゴーなのっ!」
「うん、行こうくるみ」
「あ、ご主人さまお財布なの。あとこれも忘れてっちゃだめなの」
「ごめんごめん、僕のほうが全然準備出来てなかったんだね」
「もう、しっかりしてなのご主人さま」
「よし、これでOKだな。それじゃあみんな、行ってくるねー」
「行ってくるのーっ!」
二人は元気良く車へと向かって行った。
1時間後…
ツンツン
「着いたよくるみ、起きて起きて」
「ん…もう着いたの?随分速かったの」
「そんなに遠くじゃないって言ってたでしょ。くるみ、これ塗って」
ご主人さまは日焼け止めのクリームを差し出した。
「ありがとうなの、ご主人さま」
「着替えは浜茶屋に場所を頼んであるからさ、そこで着替えたら海に入ろう」
「分かったの、今日はたっくさん遊んでたっくさん食べるの〜っ」
………
バシャッ バシャバシャッ
「ご主人さまー、えいっなのっ!」
「やったなくるみ、それっ!」
「んっ!…あっ、ご主人さまあれ何なのっ!?」
「え?何?何のこと?」
「スキありなのっ、そーれっ!」
「うわっ!」
ジャバンっ
くるみに派手に体当たりされて海の中に倒されるご主人さま。
「あはははははっ、たまにはこういうのもとっても楽しいのー」
「うん、くるみとこういうところもたまにはいいな」
「今日はもっともっと楽しむのーっ」
「そうだね、今日は目一杯楽しもう、くるみ」
ご主人さまの浦波の向こう側、どこまでも広がる海と空とそしてくるみの笑顔が輝いていた…
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あとがき
2006年度BSS5本目です。
梅雨明けしましたねー、東北以外はとりあえず。
なので今日は夏らしいSSを。くるみもたまにはこういう風にするといいですね。
もうすぐ8月、いよいよ夏本番ですよっ!
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2006・07・30SUN
雅