Plain Fantasia(野の幻想曲)

梅雨も終わり、暑くなってきた頃…
「ご主人さま…」
「ん?何だいもも」
「明日は何の日か…覚えていますか?」
「うん、もちろんだよ。ももの誕生日でしょ?」
「はい」
「何がしたい?もも」
「もも…ももは…ご主人さまと二人っきりで過ごせるなら…キャッ!恥ずかしいです…」
ももは恥ずかしさのあまり、頬を手で覆った。
「二人っきりかぁ…去年は動物園だったし…あっ!そうだっ、じゃあ今年は、美術館にしようよ」
「美術館…ですか?」
「うん、確かあゆみが言ってたんだ。今、動物の写真展をやってるってさ」
「ももの仲間の写真も…あるんですか?」
「たぶんあると思うよ、それにももは静かな場所がいいだろ」
「はい…それなら…」
「うん、二人っきりでね」
「ふ…二人っきり…ですか…?」
ぽっ
ももは顔を紅らめた。
「そんな恥ずかしがる事はないじゃない、去年だって誘ってきたのはももじゃない」
「あ…そうでした…」
「じゃぁ明日は一緒にね」
「はい」
ももは満面の笑みで答えた。
 
翌日
チュンチュンチュン
時は朝の6時半…すずめの鳴き声が聞こえる頃…
「ご主人さま…起きて下さい」
「ん…んーっ。あ、おはようもも」
「今日は晴れましたね、ご主人さま」
「よかったよもも、せっかくの誕生日に水がささなくてさ」
「そうですわね、ももちゃん、ご主人さま」
「あ、あゆみも起きてたんだ、おはよう」
「おはようございます、ご主人さま。ほかならぬももちゃんのお願いがあったので」
「え?もも、あゆみに何かお願いしてたの?」
「はい、でも何かは秘密です」
「えー、教えてよーもも」
「それはだめですわよね、ももちゃん」
「はい」
「???」
ご主人さまの頭の上には、いくつものハテナマークが並んでいた。
 
「準備は出来た?もも」
「はい、いつでも大丈夫です」
「それじゃぁみんな、行ってくるね」
「行ってきま〜す」
「「「「「「「「「「「行ってらっしゃーい」」」」」」」」」」」
ももは一つの紙袋を持って、ご主人さまと一緒にドアを出て行った。
 
駅に入った二人…そう、美術館は2駅ほど先にあるのだ。
「もも…大丈夫かい?」
「ご主人さま…怖いです…」
「大丈夫だよ、電気で動いてるからって別にももを食べちゃうとかはしないしさ」
「ほ…本当ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
ギューッ
ももは紙袋を持ってないほうの腕をご主人さまの腰に絡めた。
「で…でもやっぱり怖いです」
「大丈夫だよ、僕がついてるから」
パーン
「ほらもも、電車が来たよ」
「はい」
もうこの時点で震えが止まらないもも。
「乗るよ、いいね」
「は…はい」
ぷしゅー
ドアが開き、ももとご主人さまは中へと入っていった。
ぷしゅー
「こ…怖いです…」
ももはご主人さまをつかむ手をいっそう強めた。
「大丈夫だって、もも」
チュッ
ご主人さまはももの緊張を和らげるために、その頬にキスをした。
「ご…ご主人さまっ!」
「あともう一駅だから、頑張ってね」
「はい…」
ご主人さまのキスのおかげで、ももは電車をクリアーした。
 
電車を降りた二人は、美術館へと向かっていった。
「あ、ここですか?ご主人さま」
「うん、ここが美術館だよ」
「おっきい…です…」
「そうだね、うちと比べたらだいぶ大きいかな」
「入りましょ…ご主人さま」
「うん、そうだね」
ご主人さまは二人分お金を払って、中に入っていった。
「あ、ここからだね」
「はい」
そこには色んな動物の写真パネルが展示してあった。
「あ、これはリスさん…かわいいです…ご主人さま」
「そうだね…」
「ゾウさんだ…おっきいです…」
「うん」
「ご主人さま…これはおさるさんですか?」
「うん、アイアイっていう猿だね」
「あの歌の…ですか?」
「うん」
そんな会話が続いていたが…
「キャッ!」
いきなりももがご主人さまに抱きついてきた。
「ん?どうしたの?」
「ごめんなさい、ご主人さま。いきなりこんな写真だったから、びっくりしちゃいました」
「ん?…あ、納得」
その写真パネルには、ライオンが雄叫びを上げている写真が写し出されていた。
「大丈夫だよ、もも。噛み付いたりしないからさ。(しかしどうやってこんな写真を撮ったんだろうか?)」
「で…でも…」
「(わ…話題を変えないと…。)あ、そうだ。もも、お腹すかない?」
時計の短針はすでに1を指していた。
「はい…」
「それじゃぁさ、そろそろお昼ごはんにしようよ」
「それなら…はい、ご主人さま」
「え?それって…お弁当かい?」
「はい…あゆみお姉ちゃんに手伝ってもらって…作りました」
「あ、朝の秘密って言ってたやつね」
「はい、そうです」
「それじゃぁ、あそこから中庭に出れるから、そこで食べようよ」
「はい」
 
ぽふっ
芝生の上に座る二人。
「はいご主人さま…お手拭です」
「あ、ありがともも」
「どういたしまして…」
「それじゃぁ…」
「「いただきます」」
パクッ
「あ、おいしいよ、このサンドイッチ」
「あ…ありがとうございます…(ご主人さまを思って作ったかいがありました。)」
「あ、もも」
「何ですか?ご主人さま」
「ここに玉子がついてるよ」
サッ パクッ
「ご…ご主人さまっ!」
突然の事に顔を紅くするもも。
「ごちそうさま、もも」
ただその一言をご主人さまは添えた。
 
その後、色々と写真を見て、美術館を出る頃にはもう夕方になっていた。
「あ、そうだ。まだプレゼントを渡してなかったね、もも」
「え…?プレゼント…ですか?」
「はい、もも」
「あ…ありがとうございます…ご主人さま」
それは茶色の珠の付いたブレスレットであった。
「これは…?」
「あ、るるが持っているのと一緒だよ」
「ここを温めると…光るんですね」
「うん、そうだよ」
ももがその継ぎ目を温めると、ご主人さまの指輪の珠も光り始めた。
「でも…こんな物を…ももがもらってもいいんですか?」
「いいんだよ、それはもものためのものだからさ」
「ありがとうございます、ご主人さま」
チュッ
ももはご主人さまの唇にキスをした。
「それじゃぁ帰ろうか」
「はい」
ももの満面の笑みとともにご主人さまは、家へと戻っていった…
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あとがき
今回のSSはPHS半執筆です。
なんだか「はい」が多かったなぁ…。
えっと、今日漸く天使のしっぽデジタルコレクションを入手しました。
遅いですね、はい。まぁそれは置いといて、今回は難しかったです。電気という弱点がありましたから。
えっと今回は66日前、るるのBSSと同じ記録ですね。次は…くるみですか…書くぞ〜っ!
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2003・04・26SAT
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