As Listen to Excellent Melody(名曲を聴きながら)

暑さがまだ少し残る9月の中旬頃のこと…
「でもまさかなあ…僕もこんなところに来るなんて思わなかったよ」
「そうなの?みかはこういうの好きなのに」
「そうだったんだ、でもたまにはこういうのもいいかもしれないな」
「そうよね。それじゃあ入りましょ、ご主人さま」
「うん」
みかとご主人さまの二人は、コンサートを聴きにとあるホールへと来ていた。
 
そうなったのもこんな経緯からである…
「今年は本当に悩んじゃうな…もう5回目だし…」
最近守護天使の誕生日前になると、毎回頭を悩ませているご主人さまの姿がそこにはあった。
「あら?どうしたのご主人さま」
「あ、みか」
「え?もしかしてみかに関することで悩んでたのかしら?」
「うん、ちょっとね」
「最近いつもそうよね、ご主人さま」
「え?いつもって…何のこと?」
「知ってるわよ、ご主人さま。最近いつも悩んでるじゃない、誕生日のことで」
「やっぱり知ってたんだ、みか。もう5回目だからさ」
「そうよね…みかももう5回もお祝いしてもらってるのね」
「だからこそ、悩んじゃってるんだよ。同じことは二度したくないしさ」
「みかは別に同じことでも構わないわ、ご主人さまが一緒に居てくれるなら」
「うーん…あ、そういえば去年ってホテルだったっけ?」
「そうね…あれは楽しかったわ。えっと…」
ポッ ポッ
あのときのことを思い出してか、顔を紅く染めた二人。
「あの時は…ありがと、ご主人さま」
「え・えっと…どういたしまして、みか」
「あんなにご主人さまが積極的だなんて、思ってなかったわ」
「みかこそ、あんなに大胆に僕を魅了してきたじゃないか」
「あれは…あれはご主人さまの前だからだわよ」
「僕だって、みかの前でなきゃあんなに積極的になんか…」
「ご・ご主人さま、この話はやめましょ。何だか恥ずかしいわ」
「そ・そうだね」
「それで、何の話だったかしら?」
「ほら、みかの誕生日のことだよ」
「そうだったわね、そうね…あ、ご主人さま」
「ん?何だい?みか」
「ご主人さまって音楽って興味はある?」
「音楽?別に興味がないわけじゃないよ」
「確か…ちょっと待ってて、今探してくるわ」
と、みかは守護天使の部屋へと入っていった…
5分後…
「やっぱり…確かにみかの誕生日だったわ」
「え?それって何のこと?」
「ほら、これよこれ」
と、みかは一枚のチラシを差し出した。
「一度ああいうところで聴いてみたかったの、こういう曲を」
「あれ?みかってクラシック好きだったっけ?」
「最近ちょっと興味があるわ。あー、みかには似合わないと思ってるわね、ご主人さま」
「…ごめん、ちょっとだけそう思ってた」
「でもいいわ、ご主人さまなら許してあ・げ・る」
「でもよく考えたら、みかのイメージには合ってる気がしてきたよ」
「ありがと、ご主人さま」
「それにしてもさ、どこでそんなチラシを貰ってきたんだい?」
「この前ホールの近くに寄った時にもらってきたの」
「そっか、みかがいいって言うんなら、誕生日はこれに行くってことでいいけどさ」
「私はこれでいいわ。ご主人さまと一緒にゆっくりと聴いていられるから」
「そうだね…あ、だったらその前にさ、ちょっとデートしながら最後にこれにしようか?」
「いいの?ご主人さま。これだけでお金がけっこうかかっちゃうのに…」
「いいんだよ、心配しなくても大丈夫だって」
「ご主人さまったら、頼もしいんだから」
「それじゃあ決まりだね、えっと予約しなくちゃか…」
「そうね、はいご主人さま電話よ」
「うん、ありがとみか」
………
 
そのコンサートも終わり…
「どうだった?みか」
「やっぱり迫力が違ったわ…生で聴くと違うわね…」
「うん、僕もそう思ったよ。雰囲気に圧倒されちゃったな」
「そうね…何だか壮大だったわ…」
「何だか体がまだ痺れてる感じがするよ」
「今日はご主人さまありがと、みかのお願いを聞いてくれて」
「いや、いいんだよ。それが僕の役目なんだからさ」
「ご主人さまったら…でも大好きよ」
「僕だってさ」
チュッ
二人の唇はそのまま自然と繋がっていった…
「あ、そうだこれからだけどさ。何かしたいことはある?」
「みかは特には無いわよ。ご主人さまは?」
「ちょっとさ、お腹空いちゃってたんだ。みかはどうだい?」
「そうね、もうこんな時間なのよね。みかもご主人さまに付き合うわ」
「それならこの近くにさ、知ってる店があるんだけどどうかな?」
「ご主人さまが知ってる店?いいわよ、今日はご主人さまに付いてくわ」
「今日は特別だからさ、ちょっとだけならいいからさ」
「え…みかも…いいの?」
「うん、でも誰にも言わないでね」
「分かってるわ、ゆきに言ったら何を言われるか分からないもの」
「あゆみにもね。あゆみはある意味ゆきさん以上かもしれないし」
「それもそうね。あ、ご主人さま…一つお願いがあるの…」
「お願いって…何だい?」
「今日寝るとき…みかのことギュッてしてほしいわ…」
「いいよ。今日はミカの誕生日だから、それくらいのお願いなら聞いてあげるよ」
「ご主人さまの温もり…みかにちょうだい…」
「うん」
「ご主人さま、大好き…」
「みか、大好きだよ…」
チュゥゥゥッ
二人の二度目の口付けは、心を繋ぐ大事なものになったという…
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あとがき
2006年度BSS6本目です。
お盆時期にまず1本、今月初SSでしたね。
タイトルが決まってたのですが、それにあわせるのって難しいものです、やっぱり。
でも難しいからこそ、やりたくなるのが人間ってものでしょうね。そう感じています。
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2006・08・14MON
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