Glinting Sunlight from Eastern Sky(東天からの一閃)
時は11月に入りばな、まだ夜も明けぬ朝4時半…
「ご主人さま、朝だよー」
元気だけどどこか静かにご主人さまの耳元へと声が届いていた。
「…ん?え…ななだよね?」
「そうだよ、ご主人さま。ほら、今日は約束だったよね?」
「そうだったね、みんなを起こさないように…なるべく静かに…っと」
起こされたご主人さまの眼はまだ眠たそうだ。
「ところでななはどうやって起きたの?」
「えっと…よく分からないけど、何だか起きれちゃったみたいだよ」
「そっか、きっと楽しみにしてたからじゃないかな?」
「うん、そうかも。ご主人さま、着替えは大丈夫?」
「あ、うん。蒲団の中に入れてたから今着替えるよ」
と、蒲団に入ってパジャマから普段着へと着替えるご主人さま。
「よし、これでいいな。ななは大丈夫かな?」
「うん。はい、ご主人さま上着だよ」
「ありがとうなな、それじゃあ静かに行くよ」
「うん」
他の皆を起こさないように二人は家の外へと出ていった。
カチャッ パタン カチャカチャ
そして…
「それじゃああらためて…おはよう、なな」
「おはようだよっ、ご主人さま」
「よし、行こう。後ろでしっかりと掴まっててね」
「うん…ううっ、やっぱりちょっと寒いなあ」
「確かに寒いな、それじゃあちょっとおまじないだよ」
チュッ
ななの唇へとそっと口付けをするご主人さま。
「ご・ご主人さま…」
「これで少しは温まったかな?なな」
「う・うん…ありがとうね、ご主人さま」
「どういたしましてっと。よし、じゃあ後ろに乗ってね」
「うんっ」
カチャカチャ カタンッ
自転車の鍵を外し、スタンドを上げて…
「それじゃあしゅっぱーつしんこーっ」
自転車はまず河原の方へと道を進んでいった…
その道中…
「寒くない?なな」
「ちょっと寒いけど、こうしてご主人さまにぎゅっとしてるから温かいよ」
「そう言われると、何だか照れちゃうな」
「でも、本当だもん。こうしてご主人さまと一緒だと…気持ちいいんだよ…」
ぎゅうっ
「ご主人さまを今だけは独り占めだよっ!」
「ちょ・ちょっとななっ…まあいいか…」
そうして二人を乗せた自転車が向かった先とは…
ガーーーーー
二人はコンビニの中へと入っていく。
「いらっしゃいませ。あれ?ななちゃん?」
「うんっ、久し振りだねお姉ちゃんっ」
「そうね、夏以来かしら。今日は随分早いんだ」
「うん…ちょっと眠いけど、ご主人さまと一緒に見たい物があったから」
「そうなんだ、それで朝ご飯かな?ちょっと早いけど」
「うん、お姉ちゃんのオススメって何かな?」
「んー、そうね…ななちゃんはどんなのが好きなのかしら?」
「そうだなあ…甘いのが一つとしょっぱいのが一つ欲しいな」
「それならそうね…これとこれがオススメよ」
「それじゃあこれにするね、ご主人さまこれでいいよー」
「分かった、それじゃあこれと一緒にお願いします」
………
「よし、一気に行くからしっかりつかまっててね、なな」
「うんっ!」
カチャッ バタンッ
二人を乗せた自転車はさっきとは方向を変え、山のほうへと向かっていく…
「着いたー!」
「うん、着いたね」
二人は近くの小高い丘へと辿り着いた。
「ご主人さま、早く早くーっ」
「待ってなな、こんな暗いのに迷子になったら困るから」
「あ、うん。それならご主人さま、ななの手をぎゅうってしてっ!」
「うん、いいよ」
ぎゅっ
ななの手とご主人さまの手がしっかりとつながれた。
「ご主人さま急ごうよぉ、早くしないと出てきちゃうよ」
「うん」
二人は丘をさらに上を目指して歩いていった。
「ここらへんでいいかな?」
「うん、いいと思うな。えーっと、どっちの方かな?」
「多分あっちの方かな?このへんで座って待ってようよ」
「うんっ」
と、二人が芝生へと座って数分のこと、空は俄かに明るくなっていく…
「うわあ…きれい…こんなに朝日ってきれいだったんだあ…」
「うん、苦労してここまで来たかいがあったね」
この光の描く一閃に二人は見とれて、それ以上の言葉は出なかった。と…
くちゅんっ
「ん?なな、大丈夫かい?」
「う・うん。ちょっと寒いけど大丈夫だと思うよ…」
「ほら、もっと僕の方に来てここに入ってよ」
「えっ、いいの?」
「僕はななのご主人さまだよ。拒否でもすると思うかい?」
「ううん、それじゃあ…えいっ」
ぽすっ
ななはあぐらをかいて座っているご主人さまを背にして、身体をすっぽりと納めた。
ぎゅうっ
「温かい…温かいな、ご主人さまのお腹…」
「ななだって…こうしているとななの心まで伝わってくるよ」
二人は登り始めた朝日をただただ見つめ続けていた…
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あとがき
2006年度BSS9本目です。
大学の活動の忙しさと体調不良でSS更新ペースが下がったことをお詫び致します。
今後はしばらくの間、SS更新のほうを一ヶ月2本と致します。
ななはタイトルからもう、これしか無いと思って一日で書いちゃいましたよ、はい。
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2006・10・23SUN
雅