Summer Wind goes over with Deck(甲板で受ける夏風に)
梅雨の雨がしとしとと降りゆく、そんなある日のこと…
「ご主人さまっ!」
「ん?何だい?ジュン」
「えっと、今度の7日なんだけど…」
「7日か…そうか、もうジュンの誕生日なんだっけ」
「うん。それで、アタシここに行きたいんだけど…ダメかな?」
と、ジュンは1枚のチラシを持ってきた。それは…
「この広告って…えっと、どれに行きたいの?」
そう、それは旅行代理店の広告チラシであった。
「えっとこの裏の…これだけど、ダメかな?」
「この、七夕のやつのことだよね?もちろん」
「うんっ…行ってみたいなって思ってるんだけど…」
「うん、ちょっと待って…その日は金曜日か…たぶん大丈夫だな」
「大丈夫なのっ?良かったあ…相談してみて」
「僕もどうしようか考えていたところだしさ、ちょうど良かったさ」
と、あらためて広告を見直すご主人さま。
「それで料金は…うん、これくらいならOKかな。せっかくのジュンの誕生日だしね」
「ありがと、ご主人さま。これで7日が楽しみになっちゃった」
「そうだね、僕も楽しみになってきたよジュン」
「それじゃあ今日ははりきって料理しちゃおっと」
「うん、それも楽しみにしてるよ。じゃあ、僕はその間に予約取っておくからさ」
「お願いだよっ、ご主人さま」
………
「それでどうだった?ご主人さま」
「うん。運良くまだ空いてたから、無事に2人分取れたよ」
「ありがとっ、これで7日は二人で楽しもうよ」
「そうだね。7日は早めに帰ってくるから一緒に行こうな」
「うんっ」
この日はそうして暮れていった…
そして当日…
「ただいまー」
「おかえりなさい、ご主人さま」
「あれ?浴衣か…浴衣で行って大丈夫なのかな?」
「大丈夫だって。あー、きちんとこれ読んでないね?ご主人さま」
と、この前の広告を掲げるジュン。
「あ、本当だ。こんなとこに書いてあるとは…」
「ご主人さまの分もきちんとあるからねっ、ほら」
そこには濃紺一本で染められていた浴衣が置いてあった。
「本当だ、それじゃあちょっとシャワー浴びたら着替えるから待ってて」
「うん、他の着替えも用意しとくね」
「頼んだよ、ジュン」
………
「どっかおかしい所は無いかな?」
「大丈夫だよ。似合ってるなあ、ご主人さまの浴衣姿って」
「そ・そうかな。そういうジュンも似合ってるよ、とっても」
「そ…そんな、ご主人さま。でも嬉しいな」
「よし、じゃあ行こうか」
「うん、えっと…財布と貴重品と鍵だよ」
「ありがとう。あとはジュンは忘れ物はないよね?」
「大丈夫、バッチシだよ」
そして二人は船が出る場所へと向かっていった…
「はい、確かに。それではどうぞ入船ください」
「よし、入るよジュン」
「うんっ」
手続きを行い、七夕クルーズのための船に入る二人。
「えっと個室は…こっちだな」
「え…ご主人さま、個室って…?」
「あ、言ってなかったっけ。2人用の個室が空いてたから取っといたんだ」
「え・あ…うん…」
徐々に顔が紅く染まっていくジュン。その顔は満更でも無さそうだ。
「まずはそこで食事してからね」
「うん…ありがと、ご主人さま」
ぴとっ
ジュンはご主人さまにぴったりと寄り添いながら部屋の方へと進んでいった。
………
食事も終えて…
「ご主人さま、ちょっと甲板の方に行こうよ」
「うん、それもそうだね。せっかくの星空だしね」
そう、この前日までは連日の梅雨空。今日は久し振りの晴れとなっていたのだ。
二人は部屋を出て甲板の方へと向かっていった。
………
そして甲板へと出た二人。よくよく周りを見れば、浴衣で着ているカップルもちらほら。
「んー!気持ち良いね、ご主人さま」
「うん、この夜風を浴びるのもいいもんだな」
「それにしても綺麗な星だね…」
「確かにこんなに綺麗な夜空、久し振りかもね」
「何だかアタシ、幸せだな…」
「僕もだよ、こんなに可愛い守護天使とともにこういう時間を過ごせるなんてさ」
「え・えっ…(ポッ…)」
ジュンの顔はすっかり真っ赤へと変化していた。
「ア…アタシも、ご主人さまと一緒にこんな時間を過ごせて幸せだよ…」
「う・うん…(ポッ…)」
と、こちらもすっかり頬が紅くなっていた。
「ジュン…」
「ご主人さま…」
チュゥゥゥッ
もう、二人にこの感情を止めるものなど何も無かった…
「大好きだよ、ジュン。世界中の誰よりもね」
「アタシだって、ご主人さまが一番大好きだよ…」
「これからも、ずっと…ずっとよろしくね、そして誕生日おめでとう、ジュン」
「うん、ずっとずっと一緒だからね。そして今日はありがと、ご主人さま」
チュッ
「それじゃあ戻ろうか、部屋にさ」
「う、うん…」
………
二人だけの個室に戻るとそこには…
「ありがとう…ご主人さま…」
ご主人さまが密かに頼んでいた、2人分の小さなケーキが置かれていた…
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あとがき
2006年度BSS4本目です。
書く内容は決まっていたので、割と素直に書けました。
7月に入ってさらに忙しくなってきましたけど、まだまだ止まりませんよ〜。
これでも未だにSSの掲載間隔が10日未満ですからっ!
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2006・07・01SAT
雅