Two Girls in order to Da Capo(再び巡り合うために…)

ある夏の暑い日のこと…
「ん?た、大変なのーっ!?」
くるみは路地に少女が座り込んで喘いでいるのを見つけた。
「だ・大丈夫なのっ!?大丈夫なのっ!?」
「…み、水…」
「え?水?水なのっ!?…えっと確か…」
ジーーーーー
くるみは持っていたカバンのジッパーを開けて…
かちゃっ
「はいなのっ、これを飲むのっ!」
と、持っていた飲み物の蓋を開けてその少女へと差し出した。
「んくっ、んぐっ…はあっ…ありがとうございます…」
「だ・大丈夫なの?」
「は、はい。何とか…本当にありがとうございます」
「でも…こんな所に女の子が一人でいるなんて危ないの」
「え?そうなんですか?」
「この辺は、ちょっと危ない場所だってご主人さまが言ってたの」
「でも…どうしよう…この辺で安全なところは無いですか?」
「それならいい所があるの、くるみに付いてくるの」
「え?あ、はーい」
その少女はそのままくるみに連れられていった…
 
と、そこは近くの公園のあずまやの中…
「ここならもう大丈夫なの、えっと…」
「あ、ありがとうございます、えっと…」
「あ…自己紹介してなかったの。くるみはくるみなの」
「あ、くるみさん。私も自己紹介しないと…私は高槻やよいです」
「やよいさんいったい何があったの?」
「え?あ、ちょっとお腹が空いちゃって…」
「えええっ!どうしてなの?」
「ちょっと朝は家で食べられなかったんです」
「んー…それならこれからくるみ、お昼ご飯にするつもりだったの。一緒に行くのっ!」
「え?でも私、お金が…なくて…うう…」
「いいのっ!」
「えっ…?」
「くるみが言い出したことなの。ここは奢ってあげるの」
「でも…それは悪いです…飲み物までもらったのに…」
「いいのっ、ここで会ったのも何かの縁なのっ」
「そこまで言うなら…お願いします」
「それじゃあくるみに着いてくるのー」
「はいっ!」
………
「…それじゃあやよいちゃんが、朝に食べられなかったのって…」
「はい、家にあんまりお金がなくて…」
「でも、やよいちゃんは凄いの。それでもこうして自分でお仕事してるなんて偉いのっ」
「でもそれは、プロデューサーにかなり助けてもらってるんです」
「それでも歌ったりしてるのはやよいちゃんなんだから、とっても凄いの」
「えへへ…何だか照れちゃいます…」
「でもでも、さっきはそのプロデューサーさんは一緒じゃなかったの?」
「今日はオフだったんです。だから一人で出かけてたら…ああなっちゃって…」
「でも、こうなったから結果オーライなのっ」
………
「このお礼は必ず今度しますから」
「いいのいいの。んー…でもそこまで言うなら一つお願いがあるの」
「え?何ですか?私が出来る範囲ならいいですけど」
「ここじゃなくていいから、一曲歌って欲しいの」
「はいっ!元気にしてもらったお礼に歌いますっ」
「でも、ここじゃきっと歌い辛いと思うの」
「んー、もっと拓けてるところがいいかなぁ」
「それなら、公園か河原が近いの。どっちにするの?」
「それだったら、河原にします。そっちの方が大きな声が出せますから」
「それじゃあレッツゴーなのっ!」
「ああっ!置いていかないでくださいー、くるみちゃーんっ!」
………
「〜〜〜〜♪ ありがとうございましたーっ」
「…凄かったの…さっきまでのやよいちゃんとは思えなかったのっ!」
「うっうー!休みの日にこうして歌うのって気持ち良いですー」
「やっぱりそれでお仕事してる人は違うの」
「えへへ、まだまだ駆け出しですけど」
「やよいちゃんなら絶対に将来有名になるの、くるみが太鼓判を押すの」
「そう言われると何だか照れちゃうかも…」
「あれ?そういえば歌ってる時からこっちを見てる人がいるの…」
「ええっ?どこですか?」
「ほら、そこなの」
「…あっ!プロデューサー!!」
「やよいーっ!迎えに来たぞー!」
と、近づいてくる青年が一人。
「やよい、探したんだぞ」
「プロデューサー、今日はオフにするって朝言ってませんでした?」
「すまんやよい、急に今日じゃなきゃダメなスケジュールを思い出してな」
「分かりました、でもどうしてここが分かったんですか?」
「歌声で分かったんだよ、担当してる娘の声くらいどんな場所でも聞こえるさ」
「プロデューサー…」
と、そこに近づいてくる青年がもう一人…
「くるみー!」
「ご主人さまっ!?」
「こんな遠くまで来てたのか、連絡してくれって言ったじゃないか」
「あ…ごめんなさいなの。でもどうしてここが分かったの?」
「こっちの方に行くとは聞いてたし、そうしたらくるみの声が聞こえたからさ」
「ご主人さま…」
「プロデューサー、そのスケジュールは急ぎですか?」
「あ、ああ。今から急げばギリギリくらいだな」
「それじゃあ行きましょう、プロデューサー」
「そうだな」
「もう準備は大丈夫なの?」
「うん。今年はかなり豪勢になったよ。みんなもう待ってるからね」
「それじゃあ帰るのっ!ご主人さま」
「そうだね」
「それじゃあくるみちゃん、またですーっ!」
「やよいちゃん、またなのーっ!」
くるみとやよいはそれぞれの大切な人と、違う場所へ向かっていった…
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あとがき
両作品のファンの方、ごめんなさい。雅です。
どうしても一回やってみたかったんです。ごめんなさい、ごめんなさい。
それにしてもやよいの口調が難しいこと難しいこと。
やっぱり一回もやったことが無いものは難しいですね。
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2007・08・04SAT
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「そういえばその子、連絡先とか聞いたか?やよい」
「え?あ、はい。後でお礼したくて住所だけは聞きました」
「よしよし、よくやった。それなら良かった」
「どうかしたんですか?プロデューサー」
「お礼とかもあるけどな、どうも一つ引っかかることがあってな」
「えっと…はい、これが連絡先です」
「ありがとうやよい。よし、これから忙しくなるぞ」
「どうしてですか?プロデューサー」
「もう少ししたら分かるよ、きっと」
…数年後、1枚のシングルが発売された…タイトルは「しあわせの朝ごはん」。
そしてそのCDのアーティスト名は…「Walnut March」…
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あとがき その2
またやっちゃいました。クロスオーバー名義の琴瑞です。
書いてたら最後はやっぱりこういう展開にしたいなと思いまして。
この2人って実は同い年なんですよね、なので途中で「ちゃん」にしたわけですが。
このこのCDのタイトルですが、くるみのキャラソンとやよいのメイン曲から取りました。
アーティスト名は…単純でしたね、面目ない…。
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2007・08・04SAT
琴瑞
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