Daybreak(夜明け)
それはある冬の日のこと…
「ご主人さま、紅茶はいかがですか?」
「あ、うん…貰おうかな、あゆみ」
ご主人さまが炬燵でのんびりしていると、紅茶のセットとお茶請けを持ったあゆみがやって来た。
ススススス
あゆみはご主人さまの入っている場所の右へと入ってきた。
カチャカチャ コポポポポ コポポポポ
「はいどうぞ、ご主人さま」
「ありがとう、あゆみ。このお茶請けはどうしたんだい?」
「これでしょうか。昨日買い物に行ったときにお肉屋さんのご主人から頂いたのですわ」
「なるほどね、これって見たところお土産かな?」
「確かそうですわ。二泊三日で旅行に行かれてたらしいですわ」
「そうなんだ、じゃあ頂こうかな」
「そうですわね、いただきましょう」
ガサガサガサ はむっ あむっ んぐっ こくんっ
「柿のお菓子か…うん、美味しいな」
「はい…柿の甘みがとても出てますわ」
「こんな良い物を貰ったし、あとでお礼に行かないとだね」
「そうですわね。今度行った時にお礼しに行きましょう」
「…それにしても、どうやって隠してたんだい?」
「それはどういうことでしょうか?」
「だってくるみとかがさ、あざとく見つけそうなのに」
「そういうことですか…意外と見えていない場所があるのですわ、くるみちゃん達にも」
「ま、詳しくは聞かないことにするさ」
「はい、そうして頂ければありがたいですわ」
「でもご馳走さま、美味しかったよ」
「お粗末さまでした(絵の具道具の隙間に入れていたなんてとても言えませんわ)」
「ん?何かあったのかい?あゆみ」
「いえ、な・何でもないですわ」
カチャンッ ごきゅんっ
あゆみはとりあえず心を落ち着けるために、少し冷めていた紅茶を飲み干した。
「あ、そうだ。今度の金曜日って誕生日だよね、あゆみの」
「はい、そうですけど…でも今までの話とどのような関わりが…?」
「みかの時にさ、旅行に行ってきただろ?その時みかには言ったんだけど、らんより上のみんなには特にお世話になってるからさ。
「はあ…でも…」
「だからお世話になっている四人には、一泊旅行に連れて行ってあげようと思っててさ」
「なるほど、そういうことなんですわね」
「それであゆみはどんな所に行きたい?」
「そうですわね…最近冷えてきましたし、どこか温泉が良いですわね」
「温泉か…うん、そうしようか」
「はい、近くでもご主人さまと旅行できるだけで嬉しいですわ」
「よし、じゃあ探してみるか」
………
「はい、大丈夫ですか?…ありがとうございます。はい、16日金曜日に一泊二人で。はい、はい失礼します」
ピッ
「よし、予約が取れたよ。ちょうどよく空きがあったみたい」
「よかったですわ…今から楽しみですわね」
「うん、僕も楽しみだよ。あ、そうだ…も一ヶ所電話しないと…」
………
「あ、もしもし」
『はい、晶レンタカーサービスです』
「…よく分かってるな、晶」
『いえ、そろそろこの時期かなって思って』
「…もしかして僕の守護天使の誕生日を全部知ってるのか?」
『はい。うちの守護天使の琴瑞が行った時に聞いてきたみたいで、それを聞いたんで』
「じゃあ先に予約しといていいか?決まってるのが3つあるから」
『はい、いいですよ。いつですか?』
「…っと、12月16日から17日と2月2日から3日、あとは3月の21日から22日なんだけど、大丈夫か?」
『えーっと……はい、全部大丈夫ですね』
「じゃあとりあえず、今度の金曜日は頼んだよ」
『あ、はい。何時に行けばいいですか?』
「うーん、10時くらいに頼めるか?」
『はい、分かりました。それでは金曜日に』
「うん、ありがとな」
ピッ
「車も手配できたし、これで大丈夫だな」
「あの晶さんですか?」
「うん、OKだってさ。それじゃあ16日は一緒にね」
「はい。ありがとうございます、ご主人さま」
チュッ
「あ・あゆみ…」
ご主人さまの頬にはしばらくあゆみの唇の感触が残っていた…
そして当日…
「よし、荷物はこれで全部だね?」
「はい、一泊ですしこれくらいで充分でしたわ」
バタンッ
「じゃあ車に乗って、あゆみ」
「はい、ご主人さま」
カチャンカチャッ バタンバンッ
「よし、行くか」
ご主人さまとあゆみを乗せた車は、道を北へと駆けていった…
………
ツンツン
眠っているあゆみの頬を突付くご主人さま。
「着いたよ、あゆみ」
「えっ?あっ!?もう旅館ですの?」
「そうだよ、ずっと気持ち良さそうに寝てたね」
そこは住んでいる所から150kmほど北西にある温泉地であった。
「んもう、恥ずかしいですわ。ご主人さまに寝顔を見られるなんて…」
「でも、とっても可愛かったよ」
「もう、そんなこと言わないで下さいな」
そんな二人の光景はどこか恋人のように見えていたと言う。
「車の中に居るのもなんだしさ、早く入ろうよ」
「それもそうですわね、中に入ってゆっくりしましょうか」
二人は車を降りて旅館の中へと入っていった。
………
「ご主人さま、早速ですが温泉に入りましょう」
「うん、まあ確かに身体も冷えちゃってるしね」
「それで…さっきフロントで聞いたのですが、今日は貸切風呂が空いているらしいですわ」
「え?貸切風呂が…予約無しで大丈夫ってこと?」
「今からフロントで料金を払えば良いとのことですわ。どうでしょう?ご主人さま」
「んー、あゆみがどうしたいかによるけどさ」
「たまにはご主人さまのお背中をお流ししたいですわ…ポッ…」
「それじゃあそうしようか」
………
ガラガラガラガラ
「なかなかの広さですわね、ご主人さま」
「うん、貸切りでこれだけ広ければ言うこと無しだね」
「それではさっそく…」
「うん」
ザザザザザ ザザザザザ ジャブンッ ザプンッ
二人は身体を湯で流し、湯船に浸かった。
「はあ…気持ちいいな、あゆみ」
「そうですわね、ご主人さま」
「最近こういう風にゆったりする機会が無かったからなぁ…」
「毎日騒がしいですから、しょうがないですわね」
「あゆみもそうだったのかい?」
「そうですわね…忙しかったですけど、忙しいなりに楽しい時間が過ごせていましたわ」
「うん、それは同感だね」
二人だけの空間、二人は取り留めのない会話を続けていった…
………
その夜、二つ並べられた布団…
「ご主人さま…」
「何だい?あゆみ」
「布団をくっつけてもよろしいでしょうか?」
「え?うん、いいよ」
ズズズズ
ご主人さまはあゆみの布団を布団に入ったまま引き寄せた。
「今日は本当に楽しかったですわ」
「うん、楽しめてもらえて何よりだよ」
ぎゅうっ
あゆみはご主人さまの布団へと移ってご主人さまへと抱きついた。
「ご主人さま、最後のお願いよろしいですか?」
「えっと、何かな?」
「明日の朝、一緒に朝風呂に浸かって夜明けを見たいですわ。ダメでしょうか?」
「何だそんなことか、いいよあゆみ。明日の夜明け、二人で一緒に見ような」
「ありがとうございます、ご主人さま」
チュッ
二人は抱きついたままどちらからともなくキスをした。二人の夜がこうして更けていく…
………
「綺麗ですわね…ご主人さま」
「うん、本当だね…あゆみ」
翌朝午前6時半、貸切風呂の露天風呂に二人の姿があったという…
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あとがき
ここまで来ると気合いがものを言いますね、管理人です。。
誕生日SS11本目(管理人BSS含む)、割とすんなりと…ただ前置きが長すぎたかな…。
あゆみはネタは決まってましたが、タイトルと内容を合わせるのが大変で…。
今回のタイトルで共通点に勘付いた人が多いのではないでしょうかね。そーいうことです。
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2005・11・18FRI
雅