Crimson Sky(茜色の空)
冬の寒き雨水の日のこと…
「ご主人さま、ちょっといいですか?」
「いいけど、何だい?たまみ」
「んにゃっ!」
ぽふっ
「た・たまみ…」
たまみはご主人さまと炬燵の隙間に頭を入れ込み、そのまま横になった。
「んー…気持ちいいです…ご主人さまぁ」
「たまみ…どうしたんだい?急にこんなに甘えてくるなんて」
「たまみが甘えちゃダメですか?たまみは甘えちゃいけないんですか?」
「ううん、そういうわけじゃないんだ。いきなりだったからさ」
「それじゃあ…いいんですね?」
「うん、別に甘えたいんならいくらだって甘えたっていいよ」
「良かったぁ…ご主人さまのお膝の上、温かくていい気持ちです」
「そうなのかい?」
「はい、とっても。あ!そうでした」
「ん?何かあったの?」
「そうでした、本当は別の用件があったんです。あの…たまみの誕生日、お願いがあるんです」
「そっか、もうたまみの誕生日だったっけ。えっと、どんなお願いなの?」
「誕生日の日、ご主人さまと一緒にお出掛けがしたいなって思ったんです」
「お出掛けか、別に構わないよ。それでどこに行きたいの?」
「え…えっと…どこに行きたいっていうのは特に無いんですけど…」
「え?」
「デ・デートみたいなことをしてみたんです、ダメですか?」
「…いいよ。たまみがそれを望んでいるのなら、それを叶えてあげるさ」
「ありがとうございます、ご主人さま。それじゃあこのまま…んーっ…おやすみなさいです…」
たまみはそのまま眠りへと就いた。
「お…おい、たまみ。まあいっか、それじゃあ僕も…」
カチャッ カタン カチャカチャ カツンっ
ご主人さまは自分の眼鏡とたまみの眼鏡を外して炬燵の上に置いて、そのまま眠りこけてしまった。
………
そして誕生日当日…
「んー、何だか久し振りだな…」
「え…何がですか?ご主人さま」
「いやさ、最近はずっと車を使ってたからさ。みんなの誕生日に車を使わないのは久し振りだなって」
「そういえばそうでしたね、みんな結構遠くに行ってますから。でも…」
「でも?」
「こうしてゆっくりご主人さまと歩くのも、悪くないですよね」
「そうだね…たまにはゆっくり行くのも良いもんだよ、本当に」
「あ・あの…ご主人さま…手をつないでもらえますか?」
「いいよ、まだ車は苦手なんだろ?」
「はい…まだちょっと…トラウマは消えないです…」
「それはしょうがないさ、そう簡単に消えるものでもないし。それじゃあはい、たまみ」
「はい、ご主人さま」
ぎゅうっ
たまみは差し出されたご主人さまの手の平を、その手でしっかりと握り返した。
そのまま二人は街の方へと歩みを進めていった。
「それで、どこに行きたい?どこでもいいよ」
「それじゃあ…映画館なんてダメですか?」
「映画か…よし、そうしようか。今日はたまみに合わせるからね」
「ありがとうございます、えっと映画館ってどこでしたっけ?」
「えーっと…確か駅の向こう側だったはずだから、そこの地下道を通って行こう」
「そうですね。それじゃあ早く行きましょう、映画は待ってくれませんから」
………
映画も見終わり…
「次はどこに行きたい?」
「んー…喫茶店に行ってみたいです。普段は入れませんから」
「そっか、普段はさすがに入れないもんね。それなら良いお店知ってるけど、そこにしようか」
「はい、ご主人さまにお任せします」
と、二人はその足で喫茶店へと向かった。
カチャッ カランカラン
「いらっしゃいませ、お二人様ですか?」
「はい」
「お煙草はお吸いになりますか?」
「いえ、できれば禁煙でお願いします」
「はい、ではこちらへどうぞ」
ちょうど昼時と三時から外れたからか、すんなりと席へつけた二人。
………
「ご注文の方、お決まりでしたらどうぞ」
「えっと、僕はコーヒーとナポリタンにしようかな。たまみはどうする?」
「たまみは…クラブサンドとアイスミルクでお願いします」
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
「あ、あとこのパフェを一つお願いできますか?」
「はい、かしこまりました。お飲み物は、いつお持ちしましょうか?」
「食事と一緒でお願いします」
「はい、かしこまりました。それではメニューの方お下げいたします」
「あの映画、本当に面白かったですね」
「うん、まさかあんな展開になるとは思いもしなかったよ」
「でも最後がちょっとありきたりな展開だったのが残念でした」
「そうかなぁ?僕は良い感じだったと思うけどなぁ…」
と、そこに何やら店内から妙な声が…
『にゃぁ〜、本当にこれ美味しいです』
『ち…千紗ちゃんそんなに大声出すほどかい?』
『にゃ?千紗、そんなに大きい声でした?』
『う・うん、ちょっとね。でも喜んでもらえて良かったよ』
『おにーさん、本当に今日はありがとうです』
『どういたしまして、いつも印刷を頼んでるお礼も兼ねてるからね』
『千紗、こんなに祝ってもらえるなんて…本当に千紗は幸せ者です』
『そんな大げさな…でもありがとう。そう言ってもらえて嬉しいよ』
『おにーさん、今日はうちに来てくれるですか?』
『うん、もちろん寄らせてもらうさ。今日は千紗の誕生日だからね』
『にゃぁ〜、ありがとうです』
「あの子も誕生日なんだ。こういう巡り合わせってあるもんなんだね」
「何だかちょっと嬉しいです。ちょっぴり恥ずかしくもありますけど」
「それもそうか…あ、来たみたいだよ」
「はい。それじゃあこれを食べ終わったら、次はショッピングにしましょう」
「うん、そうしよっか」
その日の帰り…夕方の空は澄んだ茜色に染め上がっていた…
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あとがき
2005年度BSSラスト前です。
若干のクロスオーバー気味、一度やりたかったネタだったので。
テスト期間書きたい症候群の再発ではありませんが、ちょっと気分転換に書きました。
あと、オリジナル守護天使を除けば、2005年度もらんを残すのみ。
気合いで乗り切ります。
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2006・02・03FRI
雅