Coral Finger(珊瑚の指)

「静かだね…ご主人さま…」
「うん…」
杏珠と愛緒美は買い物に行って、私と紅玲菜は二人で留守番をしていた。
ぴたっ
と、ふとテーブルに乗っている二人の手が触れ合った。
「あ…」
「ん…」
互いに少し頬が紅くなり、ぎこちなく顔を背け合う。
「ごめん…ご主人さま…」
「え、別に謝らなくてもいいのに」
「え…あ…何となく…」
「う…うん」
「でもご主人さまって…指が長かったんだ…」
「え、そうかな?」
「だって、ほら…」
ぴたっ
紅玲菜の右手と私の左手が重ね合わされた。確かに4分の3関節くらいは差がついている。
「まあ、確かにね」
「昔…何かしてたの?」
「うん、エレクトーンをやってたからね」
「え…そうだったの…?」
「まあ、もう大分腕は落ちちゃったけどね」
「でも聞いてみたい…ご主人さまの弾いた曲」
「本当に無理…ごめん…」
チュッ
「えっ…!?」
「これで許してくれるかな?」
「…うん」
「ま、でも久し振りに弾いてみようかな」
「…本当?」
「うん」
そうしてピアノに向かったのは、少しずつ大地が春を取り戻しつつある3月のお昼のことであった…
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2004・04・15THU
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