Moving Cantata(巡の交声曲)
「なるほど…はぁ…ふうむ…あっ、これは安いです…チェック、チェックと」
冬も盛りが過ぎて春に近づきつつあるそんな日、たまみは家で広告を見ていた。
「ん?何をしているんだい?たまみ」
「何って…安いもののチェックと明日の対策です」
「明日?…あっ、明日ってたまみの誕生日か」
「はい、なので一緒にスーパー巡りにしましょう」
「え…でもそれだといつもの買い物と一緒だけどいいのかい?」
「はい、ご主人さまと二人きりで買い物が出来るのなら、たまみはそれだけで嬉しいです」
「そうなんだ…やっぱりたまみはたまみだなぁ」
「えっ、どういう意味でですか?」
「誕生日に買い物だなんて、それもセールのところでしょ」
「はい」
「やっぱりたまみは、うちの家計をしっかりと守ってくれてるんだなって」
「たまみは…それしか出来ませんから…」
「でもそれが、たまみのいいところだよ」
「そ…そうですか?」
「うん」
「そう言われると…何だか嬉しいです」
「じゃあ明日は、一緒に…ね」
「そうですね」
「じゃあもう少し、広告のチェックでもしようか」
「はい、それではご主人さまはこっちの広告をお願いします」
「うん」
………
「そっちは牛乳いくらでした?」
「えっと…一番安かったのが169円だったな、ほらここの」
「それならそのスーパーですね。じゃあ………」
「………」
………………
「じゃあ明日はこういう順番で行きましょう」
「うん、そうだね。それで、何時くらいに出ようか?」
「そうですね…そう遠くのお店もありませんけど…ご主人さま、車って出せません?」
「多分大丈夫だと思うよ。でもたまみこそ、大丈夫なの?車」
「う…それは…多分大丈夫だと思いますけど…」
「それなら晶に連絡してみるよ」
ピッピッピッピッピッ
「はいもしもし、晶です」
「あ…晶、僕だけど」
「先輩ですか、何です?」
「あのさ、悪いとは思ってるんだけど…」
「あ、車のことですね、いいですよ。でも…一つだけいいですか?」
「ん?何だい?」
「明日どうせ休みですし、車もそちらで出してしまうんで…先輩の家で守護天使達と一緒にいてもいいですか?」
「ん…ああ、いいよ。その方がみんな喜ぶと思うし。たまみの誕生日会があるから、ちょっと仕事をさせられるかもしれないけどいいかな?」
「あ、いいですよ。それくらいなら手伝ってあげますよ」
「そう…何だか悪いな…」
「いいですよ、先輩の守護天使はみんな可愛いですから」
「…まあいいか、じゃあ明日9時くらいにお願いね」
「はいー」
ピッ
「大丈夫そうです?ご主人さま」
「うん、来てくれるって」
「それじゃあ明日は9:30に…ね」
「はい」
たまみは笑顔で応えた。
翌日…
「先輩、今日は…」
「ああ、みんなのことをよろしくな」
「はい、分かりました。あれ?晶の守護天使も来たんだ」
「「おはようございまーす」」
そこには晶の守護天使で双子の、栗鼠の琴瑞(ことみ)と胡瑤(こだま)がいた。
「おはよう、えっと…琴瑞さんと胡瑤さんだっけ」
「「はい」」
「じゃあ琴瑞、胡瑤、行こうか」
「「はーい」」
晶と二人の守護天使は家へと入っていった。
「おーいたまみー、行くよー」
「はーい。あれ?今の方達は?」
「ん?今の三人は、車を持ってきてくれた僕の後輩と彼の守護天使だよ」
「あ、そうなんですかぁ」
「じゃあ行こっか」
「はい…」
「大丈夫かい?たまみ」
たまみは微かに震えていた。
「た…多分大丈夫だと思います…」
「無理しなくたっていいんだよ」
「いいえ、せっかく持ってきていただいたんですから」
「大丈夫ならいいけど…」
バタン バタン ブルルルル
二人の乗った車は一軒目のスーパーに向かっていった。
「ご主人さま、ジュースは買えましたか?」
「うん、大丈夫だったよ」
「それでは次の店に行きましょう」
「うん」
………
「これであらかた買い終わりましたね」
「うん、あ…そういえば、どうして野菜は買わなかったの?」
「それは…ちょっとした理由で…あ、ここに停めましょう」
と…ここは、商店街近くのパーキングであった。
「…もしかして野菜は商店街の青果店で買うの?」
「はい、いつも安くしてもらえるんで」
「なるほどね、じゃあ行こうか」
「はい」
二人は車を降りて商店街へと向かっていった。
「いらっしゃい。おっ、たまみちゃんじゃない」
「おじさん、こんにちは」
「今日はたまみちゃんが買い物当番かい?」
「はい…そんなところです」
「あれ?そういえばたまみちゃん、その兄ちゃんは誰なんや?」
「あ、紹介します。この人がたまみのご主人さまです」
「ほお、そうなんか。しかし今日はまた、どうしてそのご主人さまなんかと来たんや?」
「今日はたまみの誕生日なんです。なので今日は僕と一日、買い物することになったんで」
「なるほど…そういうことなら、今日はたっぷりとサービスしたるよ」
「え…いいんですか?」
「いいってことよ、たまみちゃん」
………
「何だかずいぶん得しちゃったね」
実はあの後、ほとんどの野菜を半値で売ってくれたのだ。
「はい、でもちょっと買い過ぎちゃいましたね」
「でもやっぱりたまみはすごいよ、僕だったらこれだけ買うのにお金が倍はかかっちゃうよ」
「いえ、ご主人さまが車を出してくれたおかげです」
「あ、そうだ。これ、誕生日のプレゼント」
と、ご主人さまはポケットから小箱を取り出した。その中には…
「え…たまみがこれを貰っていいのですか?」
白色の珠の付いた指輪が入っていた。
つつつつつ
それはまるであつらえたかのように、たまみの指におさまった。
「どう?気に入った?」
その言葉にたまみは…
「ご主人さま、ちょっとだけ屈んで貰えませんか?」
そして…
チュッ
そのキスをもってして応えた。そして二人は車に乗ってみんなが待つ家へと帰っていった…
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あとがき
ええと、夏休み最後の作品です。
ふう、これで2003年度分もらんを残すのみとなりました。
そう、前回からのオリキャラ「晶」の守護天使の名前、お気づきの方も居られると思いますが私のサブHNです。
さてさて、このSSでついに誕生日との日数差が平均で100日を越しました。
(らんを0日として、12人で平均した時のもので102.1日)
らんが終わり次第、一緒にグラフを公開いたします。(1年目と2年目で想像を絶する変わりようです。)
あ、ちなみに今回は176日前でした。
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2003・08・30SAT
雅