Blight Gold's Moon(深黄色の月)

暑いある日、朝起きてみるとそこにはなぜか早起きしているくるみがそこに居た…。
「あれ?どうしたのくるみ、その格好は」
ご主人様はくるみがいつもと違う格好をしているのに気付いた。
「ご主人様、くるみ似合ってないの?」
「いや、そんな事は無いよ」
くるみはいつものセーラー服ではなく、なぜかTシャツに伸びの良さそうなハーフパンツ姿であった。はっきり言うとこういう姿も似合っていると思う。
「でもどうしてそんな格好してるの?」
「だって今日はいっぱい、い〜っぱいご飯を食べるからなの〜」
「え…どうして?」
「ご主人様忘れてるの?今日はくるみの誕生日なの〜」
そう、今日は8月6日、くるみの誕生日である。
「でもどうして…って、もしかして食べ放題にでも連れてって欲しいの?」
そう聞くとくるみは目を輝かせながら、
「そうなのご主人様。もちろん連れてってなの」
苦笑いするご主人様。しかしその天真爛漫な笑顔には逆らえず、
「…しょうがないか、今日はくるみに付き合ってあげるよ」
「やったの〜」
また少しご主人様は苦笑をした。
 
財布の中身を確かめた後、
「いってきますなの〜」
「じゃぁ行ってくるね、みんな」
二人は街へと繰り出していった。そこには一つの笑顔と、一つの溜め息混じりの顔があった。
まず一軒目で3kgのカレー完食、これはくるみの胃を活発にさせるための潤滑液に過ぎなかった…。そこで軍資金\10000を稼ぎつつ次の店へ。
二軒目、超特盛ラーメン2.5kg完食。軍資金をさらに\5000追加し次の店へと向かう。
三軒目、「これはおやつなの〜」などと言いながら、おばけパフェ(通常の10人分)完食。
四軒目、ここからがまさにくるみの本領発揮であった…。食べ放題の焼肉屋、牛を約一頭分完食。
そして五軒目に向かう途中…
「くるみ、お腹は大丈夫?」
「まだまだ大丈夫なの〜、まだ腹5分目なの〜」
と言いのける始末…いったいエネルギーはあの体のどこに行ってるのだろうか…。
 
五軒目、すし食べ放題…
六軒目、ケーキ食べ放題…
七軒目、お菓子食べ放題…
八軒目、バイキング形式の食べ放題…
さすがのくるみも八軒目までくると少しお腹に来たようだ。
「ご…ご主人様…次の店に行くの…」
「そんな状態で大丈夫かい?くるみ」
「…もうだめかもなの…少し休むの…」
二人は近くの公園のベンチで休憩をとり始めた、するとくるみは、頭をご主人様のひざに預けて横になった。
「どうしたの?くるみ」
「…ちょっと食べ過ぎたの…」
「まぁ、あれだけ食べればね」
ご主人様は少し笑みをこぼした。
「だっていっぱい、い〜っぱい食べたかったからなの」
「でもそんなにいっぱい食べて、お腹壊さない?」
「大丈夫なの。…でも…あんなに食べた理由は他にもあったの…」
「何だい?その理由って」
「大好きなご主人様と…少しでも長く一緒に居たかったから…なの…」
「(そっか…くるみだって女の子だもんな…)」
「だから…」
「だから?」
「ご主人様、くるみにもうちょっとご主人様の顔をよく見せてほしいの…」
「この位でいいかい?くるみ」
と二人の顔の間が10cm位になった時、突然くるみが起き上がり…
チュッ
「え…どうしたんだい…くるみ」
いきなりの事に戸惑うご主人様。
「ご主人様ごちそうさまなの、今日の食べ放題よりもご主人様の唇が一番美味しかったの」
「(ま、いっか…。)じゃぁくるみそろそろ帰ろうか、たぶんらん達が用意してくれてるはずだからさ」
「はいなの」
こうして二人は仲良く家に帰っていった…
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2002・07・30TUE 初版公開
2002・08・03SAT 修正第1版公開
2002・09・08SUN 修正第2版(改題)公開
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