Amethyst's Heart(紫水晶の心)
時はまだ寒き2月の夜中
「ねぇ、ご主人様」
「何だい?ミカ。こんな夜中になって僕を起こすなんて」
「ご主人様の布団でちょっと寝たいの」
「えぇっ!?どうしたんだい?ミカ、そんな突然に」
「ちょっと…」
ミカのちょっと悲しげな表情…その表情を見捨てる事が出来ず、
「…うん…いいよ」
「よかった…ご主人様あ・り・が・と!」
悟郎はミカを布団の中に入れた。
「あれ、ミカ、どうしたんだい?体がずいぶん冷たいじゃないか」
「ちょっと外で…月を見てたの」
「月を?」
「今日の月はね、とってもきれいな三日月だったの」
「三日月かぁ…」
「三日月の日は何だか…、あの時のことを思いだしちゃうね、ご主人様」
「うん、ミカをもらった時の月だったからね」
「ミカね、あのときのご主人様の顔、今でも憶えてる。ご主人様の顔とってもうれしそうだった」
「たぶんそうだったと思うよ。だって前からウサギを飼ってみたいって思ってたからね」
「あのときのご主人様の胸の温もり、今でも忘れられない…」
それからしばらく二人は無言になった、しかしそれは心が通じ合っていた証拠であったかもしれない。
「ご主人様!」 「ミカ!」
二人の声は同じ時を選んで発せられた。
「何だい?ミカ」
「ご主人様こそ」
「今度は一緒に二人だけで月を見ような」
「うん」
ミカは唇を悟郎に向けてきた。
「うん」
チュッ
その唇を悟郎は受け入れた。
「夜も遅いしもう寝よっか」
「うん、おやすみ、ご主人様」
「おやすみ、ミカ」
ミカは悟郎に抱きついたまま寒い夜を終えていった…
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2002・03・05TUE 初版公開
2002・08・13TUE 修正第1版公開
雅