Alexandrite's Cheek(金緑石の頬)

「なぁ、ご主人さま」
「ん、何だい?奏歌」
ぎゅぅっ すりすりすり
奏歌はいきなり抱きついてきて、私の頬へと頬擦りをしてきた。
「うわっ!ど・どうしたんだい?」
「ん?何となくや、何となく…」
「ま・まあいいけどさ」
「せやけどご主人さまの頬、ちょっとざらざらしとるな」
「それはそうだよ、だって男だしさ」
「そのざらざらしとるのも、ご主人さまの感触いうもんなんやろな」
「そう言われると、照れちゃうな…」
「せやけど、ご主人さまの感触いうのはこれだけやないな」
「え?」
ぎゅうっ
奏歌は今より下のほうへと抱きつき直した。
すりすり
「うっ…くすぐったいよ奏歌」
奏歌は私の胸へと頬擦りをした。
「せやけど、気持ちええからやめへんで」
「え…んっ…」
「ん?何やご主人さま、感じとるんか?」
「しょうがないだろ、くすっぐたがりやなんだから」
「あ、せやったん。でもやめへんけどな」
すりすりすりすり
「ご主人さまのええ匂いがするわ〜」
「う…そ・奏歌…そろそろやめてよ…」
「えー…せやけど気持ちええもん、やめたないな」
「そんなにやるなら、お返しをしてあげるよ」
「えっ!?」
チュッ
私は奏歌を持ち上げて、その右頬へと口付けをした。
「う…ご・ご主人さま…」
奏歌は顔を赤らめて私へと抱きついてきた。それは草木が雨で湿り始めた、6月の小雨の日のことであった…
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2005・06・01WED
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