Wind Landscape 01(風の風景その1)

ひゅうんっ
一陣の風が駆け抜けていく。
亜美「外は凄い風だねー」
千早「プロデューサー、すみません。こんなことになってしまって」
「いや、いいんだよ。アイドルの安全を確保するのも俺の務めだからさ」
亜美「兄ちゃん、いつくらいからこんな風になってたの?」
「来る時からそれなりに吹いてただろ?強くなったのは確かボイスレッスンしてた頃だな」
亜美「あー、だから全然聞こえなかったんだ」
千早「あとどれくらいで出られそうですか?」
「ん?何か予定とかあるのか?」
千早「いえ、特にはありませんが。亜美はどうかしら?」
亜美「亜美も全然大丈夫だよー」
「それならもう30分待ってもらえるか?それくらいで片付けるからさ」
千早「分かりました」
亜美「ちょっちゲームしてていい?」
「構わないけどちゃんと片付けろよ」
 
亜美「ねえねえ、千早お姉ちゃんってこれはできるー?」
千早「私はゲームは苦手だから…」
亜美「これくらいならできるっしょ?」
千早「そこまで言うのなら、少しやってみようかしら」
プロデューサーは仕事を片付けながらも後ろの様子には聞き耳を立てていた。
「何やってるのかと思ったら…○鼓の達人か」
後ろから響く歌と太鼓の音。
千早「これは…面白いわね」
亜美「これなら千早お姉ちゃんにもできるかなって思ったんだ」
千早「亜美、これは?」
亜美「あ、これは連打すればいいんだよ。こうやって…」
ダダダダダダダダ
亜美が太鼓コントローラーの盤面をバチで叩く。
亜美「こんな感じだよ」
千早「叩き続ければいいのね」
亜美「ほら、次もまた来たよん」
千早「や、やってみるわ」
タタタタタタタ
亜美「そうそう、上手いよ千早お姉ちゃん」
千早「ありがとう、亜美」
亜美「じゃあ次は勝負しよ」
千早「え?ちょっとまだ自信ないわ」
亜美「大丈夫だよ、千早お姉ちゃんリズム感いいからいけるっしょ」
千早「そうね…それならやってみようかしら…」
………
30分後…
「おーい、二人とも終わったぞ」
亜美「えー、もう終わったのー?」
千早「亜美、プロデューサーを困らせてはダメよ」
亜美「うー、しょうがないなー。じゃあ片付けよっか千早お姉ちゃん」
千早「そうね、早く帰れるように手伝うわ」
「帰れるように準備してくるから、それまでにちゃんと片付けておいてな」
亜美・千早「はーい」 「分かりました」
 
ここはプロデューサーの車の中。
「しかし千早も随分と熱中していたな」
千早「えっ…ど、どうして…」
「音で分かるさ、二人でゲームしているような音だったしさ」
千早「つい、熱くなってしまって…」
亜美「千早お姉ちゃん、一度ハマりだすと熱中して凄かったよー」
千早「亜美…」
「千早の性格からしたらそうだろうなあ」
千早「でもたまにはこういうのも悪くは無いです」
「そうか?そう言うならそういう仕事も考えなくはないけどな」
千早「ええっ…さすがにそれはたぶん無理かと思います」
亜美「そーだよ。それは真美に回してあげなよ兄ちゃん」
「ま、ゲームは確かに真美の方がいいか。でもゲーム関係の歌のお仕事はたまに来るんだけどな」
千早「なるほど…そういう使われ方もあるのですね」
「特にファンタジー系なら、千早とか貴音の歌声は合いそうだよな」
亜美「この前のあずさお姉ちゃんのも良かったよね」
「あのゲームの歌は企画立案した人のたっての希望だったらしいな」
亜美「真美がやってた後ろで聞いてたけど、あの場面で流れてきてちょっち泣いちゃったよん」
千早「この前発売した物ですか?」
「そのシングルの2曲目の方だな」
千早「あの曲は私にはまだ表現できない部分が多くて、あずささんに見せ付けられた気がします」
「表現力はさすがだなって俺も思うよ」
千早「プロデューサー、今度は表現力レッスンをお願いします」
「分かったけど…千早はその前にポーズレッスンじゃないか?」
千早「そうですが…」
「まだグラビアは撮られ慣れてないよな。もうちょっと堅くならなければいいんだけど」
亜美「千早お姉ちゃん、カメラ苦手なの?」
千早「そういうことをそういう場所で表現するのが苦手なのかもしれないわね」
亜美「そっかー、カメラって楽しいと思うけどなー」
「それは人それぞれだ。あ、次の交差点はどっちだ?」
千早「次はまっすぐで、その次を右にお願いします」
「了解。まあ多少は表現力レッスンは増やしていくよ」
千早「ありがとうございます」
亜美「亜美はダンスレッスン増やしといてねー」
「え?亜美はダンスか?」
亜美「今度のあの曲、ダンス激しすぎだよ。すぐにバテバテになっちゃうもん」
「あー、そっか。律子から話は聞いてないか?」
亜美「律っちゃんから?」
「あの曲の振り付け、秋のまーちが一番全盛期だった頃の振付師のだぞ」
亜美「そーなんだ。じゃあやよいっちにコツとか聞いた方がいいかな?」
「そうかもしれないな。律子もあれはコツを掴んでから随分上手くなってたしな」
亜美「でもあずさお姉ちゃんも練習終わった後大変だったよ」
千早「そうなの?亜美」
亜美「うん。もう床に大の字になっちゃって、ジャージの前も全開で、シャツも汗で透けちゃってねー」
「亜美、その光景は写メとかしてないよな?」
亜美「大丈夫だよ。だってカメラなんて構える余裕無いもん」
「そういうのが漏れ出すと大変なことになるからな」
亜美「はーい…って兄ちゃん、もしかして欲しいのー?」
「そ、そんなことは…」
千早「プロデューサー!」
亜美「アハハッ、やっぱり兄ちゃんのスケベー!」
冬の風の中、千早の家まで車内からは3人の会話が絶えることは無かったという…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
今回は最初の2文だけ同じにして内容が違うSSを作ってみました。
まずは亜美と千早。
リズムを取るゲームなら千早も意外と得意な感じが…私はしますね。
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2012・11・30FRI
飛神宮子
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