Encase Makoto in White Dress(真を包む白き衣)

※この作品はこちらの画像と合わせてお読みになると一層楽しめると思います。※
 
 
「さてと、みんなに入ってる仕事を選ばないとか」
プロデューサーは一人で事務机に向かい、仕事依頼の書類群に目を通し始めた。
「お、あずささんにお酒のCMか…んー妖艶なあずささんも悪くないかも。本人の意思次第かな」
と、残す方の箱へと書類を入れた。
「次はやよいに…ん?始球式か…あー、このチームのファンとは前から言ってたっけ」
これも残す方行きに。
「んーと、千早か…ってどこだこんな企画よこしたのは……破棄だな」
お断り行きの箱へ。
「これは…真だな。はあ、やっぱりもうすぐ6月だもんなあ」
そこには…
「ブライダルショーのモデル役か…」
小鳥「あら?プロデューサーさんどうされたんですか?」
「あ、小鳥さん。いやちょっと仕事依頼の分別をしてたんですけどね」
小鳥「けっこうありますけど…どうですか?」
「小鳥さん、千早のあれはこっちまで通さないでくださいよ」
小鳥「え?あ、あれそっちに行っちゃってましたか?やっぱり」
「どういうことですか?」
小鳥「私の時点でお断りするつもりで分けておいたのが、どうしても見つからなくて」
「そういうことだったんですか、それじゃあお願いします」
小鳥「分かりました。それで今見ていた書類は?」
「これですか?真へのブライダルショーの依頼なんですけど」
小鳥「真ちゃんですか、去年はそういえば…」
「そうなんですよ、男役だったじゃないですか。それでどうしようかと思って」
小鳥「ですよねえ。でもかなりお世話になっている所ですし、無下にお断りするのもちょっと…」
「そこなんです。でも去年のは、真にはやっぱりショックだったみたいで…」
「プロデューサー!おはようございまーす!」
「お、真。ちょうど良かった」
「何ですか?プロデューサー」
「あのさ、これなんだけど…出たい?」
「これって…去年も出たあれですよね?」
「そうなんだけど…真の意見も聞きたくてさ。真が嫌ならやめるよ」
「どうしようかな…去年は男役で出させられたし」
「そこなんだよ、出るか出ないかは真次第だから。これだけは任せるよ」
「折角の申し出、断っちゃうのもなあ。でも去年のあれがあるし…」
「やめるか?」
「いや、出ます。やっぱりこういうのは経験にもなりますから」
「そうか、分かった。先方にはそう伝えておく」
………
そして当日…
「真、嬉しいお知らせをしてあげようか」
「何ですか?プロデューサー」
「そのな、今日は男役じゃないぞ」
「ええっ!?!?それは本当ですか?」
「ああ、さっき打ち合わせしてきた。本当は男役を頼まれてたんだがな」
「プロデューサーがお願いしてくれたんですか?」
「いや、もともと短髪の人用の衣装を、向こうが出したいと言う話だったんだがな」
「え、でもそんな話は聞いてないですよ」
「その担当モデルが今回急に来れなくなってな、それで頼まれたんだ」
「え?じゃあボクがやっている時の男役は誰がやるんですか?」
「それがな…若い男が他に俺くらいらしくてな…」
「ええっ!?もしかしてプロデューサーがやるんですかっ!」
「そうらしい…それで出演順は休憩前と一番最後らしいから」
「は、はいっ…んー、緊張してきたなあ」
「緊張はいいけど、頑張ってくれよ」
「分かってますって、へへっ」
「それじゃあ着替えに行くぞ」
「はいっ」
 
1時間後…
コンコン
「真ー、準備はできたかー?」
「プロデューサーですかー?入っていいですよー」
「それじゃあ入るぞー」
カチャッ
扉を開けて控え室に入るプロデューサー。
「真…だよな」
「え?プロデューサー、もちろんボクですよ」
「いや、あまりにも綺麗でさ。何だか俺には勿体無い気がするくらいだよ」
「プ、プロデューサー…そんなこと言わないでくださいよ、照れちゃうから」
「本当に似合ってて…今の真とだったら本当に式を挙げたくなったよ」
「え、えっと…こんな私だけど…もらってくれますか?」
「ああ、構わない。そんなお前だからこそ…な」
「プロデューサー、本当にノリがいいですね」
「いや、そんなことを言われたらこう言うしかないだろ」
「ですけど…プロデューサーもかっこいいですよ」
「そうか?」
「普段のジャケット姿とは違うから何だか…本当にボクのこと貰って欲しいです」
「俺でいいなら…な」
「プロデューサー…」
「真…」
「…ってこんなことしている場合でもないんじゃないですか?」
「そうだな、俺達が出るのは10分後だから」
「そういえば、進行の方はどんな感じですか?」
「そっか、忘れてたな。こんな感じだぞ」
「去年とは随分と違うんですね」
「去年はファッションショー的な感じだったけど、今年は演出も含めて見てもらう算段らしいから」
「そういう意味では本格的ということですね」
「一部は省略するとは言えな。衣装の動き易さとかも見てもらうのも目的だし」
「なるほど…あー、ケーキカットとかキャンドルサービスに…えっとこれ…」
「そういうことだ」
「もしかして来てたら、ボク女の子とキスする羽目に…」
「そういうことだったな、あの真を好きなあの子が相手だったらしいから」
「げっ…あの子が居るんですか?」
「ああ、来てるぞ。ちょうど休んだ短髪の子のところから男の人を移動してもらった」
「はあ…良かった…えっ?ってことは…」
「そういうことだ。覚悟はできてるか?」
「プ、プロデューサーの唇…えっと…」
「嫌か?嫌ならフリだけで済ますからさ、それでも構わないぞ」
「いいんですか?プロデューサーは」
「俺は構わない、むしろ真のなら歓迎するぞ」
「それならボクも…プロデューサーなら…」
「よし、分かった。それじゃあ行くか」
「はいっ」
ぎゅっ
プロデューサーと手を繋いで会場へと向かった真の顔は少し紅い笑顔だった…
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あとがき
怒涛の5本掲載3本目、飛神宮子です。
これもどんな作品になるかはすぐ思いつきました。
と言うより、真の可愛さに負けました。
あ、5本目の後書きで裏話しますので。
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2008・06・01SUN
飛神宮子
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