P | 「やよい、一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」 |
やよい | 「何ですか?プロデューサー」 |
P | 「どうしてやよいは765プロに所属してるんだ?」 |
やよい | 「う?」 |
P | 「いや、家庭を助けるためってのは分かってるんだけどさ。どうして765プロを選んだんだ?」 |
やよい | 「えーと…どうしてだったっけ?」 |
P | 「え?憶えてないの?」 |
やよい | 「んー…あ!思い出しました。えっとですね…」 |
|
やよい母 | 「やよいは本当に元気よね」 |
やよい | 「そうかなあ、お母さん」 |
やよい母 | 「そうよ。だって妹たちの面倒もしっかり見てくれるのに、こんなに元気じゃない」 |
やよい | 「私は元気だけが取り柄だもん」 |
やよい母 | 「でも、おかげで本当に助かってるのよ」 |
やよい | 「えへへ、何だか照れちゃうの」 |
やよい母 | 「あ、そういえば去年も出たこれには今年も出るのかしら?」 |
やよいの母はやよいに一枚のチラシを差し出した。 |
やよい | 「う?あーっ、町内会のど自慢の応募って今日までだったの?」 |
やよい母 | 「そうよ…あら?まだ応募してなかったのかしら?」 |
やよい | 「だってお母さん、見せてくれなかったもん」 |
やよい母 | 「今日の5時までだからまだ間に合うわよ、行ってらっしゃい」 |
やよい | 「うん、行ってきまーす!」 |
と、やよいは家を飛び出して応募のための場所へと向かって行った。 |
たったったったっ どんっ |
前を見ていなかったせいか、誰かにぶつかってしまったやよい。 |
やよい | 「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」 |
??? | 「ああ、大丈夫だ。きちんと前を見て行かないとダメだな、君」 |
やよい | 「ちょっと急いでて…本当にごめんなさい」 |
??? | 「いや、いいんだ。こっちも避けなかったからな」 |
やよい | 「あ、えっと…本当にすみませんでしたっ!」 |
たったったっ |
??? | 「…今時にしては礼儀正しい子だな…」 |
……… |
そして、のど自慢当日… |
社長 | 「む?今日はこの町内で何かやっているみたいだな…」 |
765プロの社長である高木順一朗は、日課としていた散歩の途中にふと歩みを止めた。 |
司会 | 『11番は、昨年の準優勝者の高槻やよいさん。歌はふたりのもじぴったんです。どうぞ!』 |
社長 | 「あの子は確か…この前私にぶつかってきた子だな…」 |
やよい | 「♪〜〜〜♪〜〜〜」 |
社長 | 「…これは!磨けば光る逸材に違いない!」 |
社長はすぐさま、その主催者へと連絡を取った。 |
……… |
のど自慢から数日後… |
コンコン |
やよいの家を訪問する男が一人。 |
やよい | 「はーい」 |
社長 | 「こんにちは、高槻…やよい君だね?」 |
やよい | 「はい…えっと、どちら様でしょうか?」 |
社長 | 「私のことは憶えてはいないかい?」 |
やよい | 「んー…あ、この前ぶつかっちゃった…あの時はごめんなさい」 |
社長 | 「いや、あれはもういいんだ。お母さんかお父さんは家に居るかね?」 |
やよい | 「はい、お母さんは居ますけど…」 |
社長 | 「それなら呼んで来てくれないかな?」 |
|
やよい | 「それからお母さんと社長が話し合って、それでお父さんとも話し合って決まりました」 |
P | 「そういうことなのか…」 |
やよい | 「はい、えへへ」 |
律子 | 「やよいが入った時のことは良く憶えてるわよ」 |
やよい | 「そうですか?」 |
律子 | 「うん、元気な子が来たなってね。その頃はこうやってユニットを組むとは思ってなかったわ」 |
P | 「へえ、なるほどね…ということは律子の方が先だったのか」 |
律子 | 「そうよ、事務員をずっとやってたから」 |
P | 「そういえばそうだったか…それじゃあ律子の方はどうなんだ?」 |
律子 | 「え?ええっ!わ、私っ!?」 |
P | 「ああ。その事務員だったってことは知ってるけどさ、どうして765プロでやってたんだ?」 |
律子 | 「んー、まあ理由はあるけど…」 |
|
律子 | 「はあ…つまんないわね、高校生活も」 |
高校に入って数ヶ月、律子は持ち前の学力で優等生になっていたものの、生活につまらなさを感じていた。 |
律子 | 「家に帰ってもアレだしねえ、バイトでもしようかしら」 |
ガーーー |
店員 | 『いらっしゃいませー』 |
ふと本屋に立ち入った律子。 |
律子 | 「求人情報誌は…っと、あった」 |
パラパラパラ |
とりあえずざっと読みをし始めた。 |
律子 | 「うーん、高校生だとなかなかいい仕事は無いわね…」 |
そこに… |
律子 | 「ん?765プロダクション?」 |
目に留まった記事が一つあった。 |
律子 | 「高校生OK…これってアイドルの募集なのかしら?」 |
ちょっと考え始める律子… |
律子 | 「未経験者可とか書いてあるし…アイドルの募集とかではなさそうね」 |
と、とりあえず雑誌を閉じてレジへと向かい始めた。 |
律子 | 「とりあえずこの情報誌を買って考えてみますか」 |
……… |
店員 | 『ありがとうございましたー』 |
律子 | 「ふう、まあアルバイト募集の所だし…アイドル募集じゃないだろうから応募くらいは…」 |
その足で履歴書を買いに行った律子であった。 |
……… |
応募書類を送って数日後… |
Trrrrr… Trrrrr… |
Pi♪ |
小鳥 | 『もしもし。765プロダクションの音無と申しますが、秋月律子さんでしょうか?』 |
律子 | 「もしもし。はい、秋月です」 |
小鳥 | 『アルバイト事務員採用の件でお電話を差し上げました』 |
律子 | 「はい」 |
小鳥 | 『それでですが、明日土曜日の午前11時にこちらへ来て頂くことはできますでしょうか?』 |
律子 | 「明日の午前11時ですか?…はい、大丈夫です」 |
小鳥 | 『最終的な簡単な面接ですので、服装は自由で構いません』 |
律子 | 「分かりました」 |
小鳥 | 『それでは、明日11時にお待ちしております』 |
Pi♪ |
律子 | 「え?もしかして…あれで通ったってことかしら?」 |
少し驚きを隠せない律子。 |
律子 | 「まあ明日行ってみれば分かることね」 |
……… |
そして翌日の765プロダクションにて… |
小鳥 | 「秋月…律子さんね」 |
律子 | 「はい。あ、昨日電話を下さった方ですか?」 |
小鳥 | 「はい、音無小鳥と申します」 |
律子 | 「そういえば他の人は居ないんですか?」 |
小鳥 | 「…秋月さん、まさかこんな所だとは思ってなかったでしょ?」 |
律子 | 「え?…ま、まあ実は…」 |
小鳥 | 「それで応募してた人、みんな見て逃げちゃったのよね。こんな場所は嫌だって」 |
律子 | 「なるほど…フフフ…」 |
小鳥 | 「秋月さんっ!?」 |
律子 | 「それならば、俄然やる気が出ました。ここで働いてもいいかなと」 |
小鳥 | 「え…ええーっ!?」 |
社長 | 「小鳥君、まだかね?」 |
小鳥 | 「しゃ、社長、すみません」 |
社長 | 「そこに居るのは、秋月律子君だね?」 |
律子 | 「はい」 |
社長 | 「さっきの話を聞いて、君を採用することに決めたよ」 |
律子 | 「本当ですか?ありがとうございます」 |
社長 | 「まあ見ての通りこんな状態だ、まだそこまでお金を出せるかは分からぬがな」 |
律子 | 「よろしくお願いします、一生懸命頑張ってより良い事務所を目指しましょう」 |
社長 | 「お、いいねえ。その意気は気に入ったぞ」 |
|
律子 | 「…というわけです」 |
P | 「なるほどな、二人とも個性に合った入り方だったんだな…」 |
やよい | 「だけどこうしてアイドルをやれるなんて、昔は思いもしなかったです」 |
律子 | 「そうよね。私だって事務員だったのよ、それが今はこうだもの」 |
P | 「ま、いいじゃないか」 |
律子 | 「まあプロデューサーが入った理由も、社長が一目見て気に入ったからですからねえ」 |
P | 「そうだな、それに関しては俺も二人のことは言えないけどさ」 |
律子 | 「最初は思いましたよ、本当にこんなプロデューサーで大丈夫なのかなって」 |
P | 「おいおい、俺はそんな信用されてないのか?」 |
やよい | 「でもでも、プロデューサーの力は凄かったですー」 |
律子 | 「そうよね、ここまで私たちが育ったのもプロデューサーのおかげだし」 |
P | 「素材が良かったからだと思うぞ。俺は導いただけだし」 |
律子 | 「でも素人だったんでしょ?それでこうなるなんて、社長でもまさか思わなかったらしいわ」 |
P | 「そうなのか?」 |
律子 | 「そうよ、かなりの博打だったみたいだから」 |
P | 「だよな、いきなり採用した人にプロデュースを任すくらいだし」 |
律子 | 「ま、でも現状を見れば社長の目は確かだったってことよね」 |
やよい | 「そうですー。これからも頼りにしてます!プロデューサー」 |
律子 | 「そうね。頼りにしてるわよ、プロデューサー」 |
P | 「ああ。頼りないかもしれないけど、これからもよろしくな」 |
やよい | 「じゃあ…」 |
律子・P | 「そうね」 「ああ」 |
三人 | 『ハイ、ターッチっ!!』 |
パシンっ |
三人の手から高らかと音が鳴り響いた… |