Warmth of Affection(愛情の温もり)

冬のある日のこと…
律子「寒いわね…」
「ああ、そうだな…」
律子「…って、どうにかならないの?」
「そんなこと言ったってしょうがないだろ」
律子「こんな日に野外とはね…まさかとは思ってたけど」
「俺だってまさか、野外だとは思ってもいなかったんだよ」
律子「さすがに懐炉だけで何ともなる寒さではないわね」
「まあそうだよな…」
控室は屋内とはいえ、経費節減のためなのか暖房が弱いようだ。
律子「ん?そういえばプロデューサーの出身ってどこでしたっけ?」
「俺か?俺は日本海側の海側の市だけど?」
律子「どうりで私よりずっと寒がってなかったわけね」
「まあな。地元の寒さに比べたら関東の寒さなんかそうでもないさ」
律子「いいわね。私なんか…ハックション!」
「だ、大丈夫か?」
律子「こんな寒いところで大丈夫なわけないでしょ」
「ちょっとこれ着てろ」
バッ ふぁさっ
自分のコートを脱いで律子にかけるプロデューサー。
律子「えっ?い、いいの…?」
その温もりに顔を微妙に赤らめる律子。
「アイドルに風邪を引かせるわけにはいかないだろ」
律子「そんなこと言っても、これだとプロデューサーが…」
「いや、俺は大丈夫だって。これでも雪国出身だぞ」
律子「それはさっき聞きましたけど」
「ちょっと暖房強くは…って一括管理か」
律子「最近は多いですから、しょうがないですね」
「まったく…どうすればいいんだよ」
律子「諦めるしか無いんじゃないかしらもう」
「でも、寒いんだろ?」
律子「うん…まだ、ちょっとね」
「うーん、ちょっと行ってくるか」
律子「え?こんな寒い中どこに行くのよ」
プロデューサーは何も言わずに控室を出て行った。
 
数分後…
「ほい律子、これでいいか?」
ペットボトルのホット紅茶を差し出すプロデューサー。
律子「こんな寒い中、コートも着ないで買ってきたの!?」
「別に律子のためならこれくらいどうってことないさ」
律子「私のためにそこまでしなくてもいいのに」
「ほら早く飲めよ、冷えちゃうからさ」
律子「そうね、いただきます」
かちゃっ こくっこくっこくっ
律子「ふう…」
「どうだ?温まったか?」
律子「そんなすぐに温まるわけないでしょ」
「ま、そうだろうな…っと、ちょっとそれ飲ませてくれるか?」
律子「え?い、いいけど…いいの?私の飲みかけで」
「別にかまわないさ」
こくっこくっこくっ
「はあ…いや、小銭が1本分しか無くて買えなかったんだ」
律子「そういうこ…あっ…」
「どうした?律子」
律子「今のって間接キスじゃ…」
「あっ…あ、新しいの買ってきた方がいいか?」
お互い顔を赤らめてしまった。
律子「…いいわよ、もう」
「いいのか?俺が口付けたのでも」
律子「別に知らない人が口付けたわけじゃないし」
こくっこくっ
律子「ふう…それに、せっかくのプロデューサーのおごりなんだから」
「律子、無理しなくてもいいんだぞ」
律子「無理なんかしてないわよ、いいの」
「それでいいって言うならいいけどさ」
律子「まあ寒いのも少しは良くなったけど…本当に今日は寒いわね」
「この分だと今日の夜は雪かもな」
律子「そうね、明日春香が泥だらけで来るのが目に見えるわよ」
「まあ確かに…明日は朝早く来てシャワー室の用意が必要だなきっと」
律子「確かにやよいや亜美たちも、雪だとはしゃぎそうよね」
「ああ、そっちもあったか…」
律子「見ていて微笑ましいけど…濡れて来られるのはねえ」
「明日は迎えに行かなくちゃいけないのも出てきそうだな、それだと」
律子「雪で電車とかが止まらなければいいけど…」
「それもそうだな…」
律子「そういえばイベント開始はまだかしらね?」
「あと5分くらいだろ?もう少ししたら呼びに来るさ」
律子「今日は寒いし早めに終わらせたいの…ってダメよね」
「さすがにイベントは時間が決まってるしな」
律子「でも動けば少しは温かいと思うし、どっちみち早くしたいのよ」
「なるほどな、まあこればかりはしょうがないな。よし…悪い、律子」
律子「えっ!?」
チュッ
プロデューサーの唇がいきなり律子の唇へと重ねられた。
律子「な、何するんですかっ!?いきなり」
律子の頬はすっかり紅く染まってしまった。
「いや、温かくならないかなって思ったんだけど」
律子「もう…雰囲気ってものがあるでしょ」
「でも温まっただろ?」
律子「う、うん…まあ気持ち良かったし」
「よし、もう大丈夫だな?」
律子「たぶん…ね。でも…」
「でも?」
律子「戻ってきたらまたそれで私のこと温めて欲しいんだけど…」
「ああ分かった、約束する」
律子「今度はちゃんと雰囲気作ってよね、プロデューサー」
「分かってるって、ん?ノックしてるな」
律子「そろそろみたいね、それじゃあ行ってくるわ。コート、ありがと」
「ああ、俺もすぐに見に行くからな」
プロデューサーは律子を見送りながら、その温もりと香りの残るコートを着始めた…
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あとがき
飛神宮子です。
2週間ぶりですね。バレンタインは書いたし、ネタが無くて…
あ、作中のPの出身は実質的に自分のことです。しっかし、我が地もいきなりよく積ったこと。
何で半日屋外に車を停めただけで10cmも積もるんだ(苦笑)
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2009・02・17TUE
飛神宮子
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