Vigour a Deux(二人だけの元気)

ここはとある地方都市…
やよい「みんなー、まったねー!」
スタッフ「はいOK!これで今回のロケは打ち上げー!」
パチパチパチパチパチ
スタッフから贈られる拍手。
スタッフ「高槻ちゃんお疲れさん。今回も良い感じの画が沢山貰えたよ」
どうやら子供向け番組のロケだったようだ。
やよい「ありがとうございます。今回はちょっと説明するのが多くて、自分でも大丈夫かなーって思ってました」
スタッフ「大丈夫大丈夫。NGも少なかったし、高槻ちゃんは毎回毎回成長してるよ」
やよい「でもロケを見に来てたちっちゃい子が、休憩時間に『いつも見てる』って言ってくれたのは嬉しかったです」
スタッフ「そうだよなあ。作ってるこっちとしてはそういう生の声って嬉しいもんだよ」
「お、お疲れさまやよい。この番組で地方ロケは初めてだったな」
やよい「はい。でもとっても楽しかったです」
スタッフ「お、そうだった…な。高槻ちゃんにMCが代わってからは初めてになるのか」
「今回もうちの高槻をありがとうございました」
スタッフ「こちらこそだよ。こういう番組はこの番組が初めてだって聞いたけど、毎回真剣に取り組んでくれるからね」
「それこそうちの高槻の取り柄ですから」
スタッフ「さすがは自信を持って売り出してるわけだな。あ、そうだ高槻ちゃんのプロデューサー君。アレは打ち上げの時でいいかね?」
「アレですね、用意の方ありがとうございます」
やよい「プロデューサー、アレって何ですか?」
「やよい、今日は誕生日だろ?ケーキを用意してもらったんだ」
やよい「ええーっ!い、いいんですか?!」
スタッフ「いいってことよ。高槻ちゃん今回特に頑張ってもらったからさ」
やよい「ありがとうございますっ!」
スタッフ「じゃあ撤収作業の後だから時間になったら呼ぶから待っててな」
やよい「はーいっ!」
「やよい、ちょっと邪魔にならないように向こうで先に着替えしてようか」
やよい「そうですね。今回の収録はどうでしたか?」
「上出来だぞ。今日はまた随分と気合入ってたな」
やよい「はいっ。でもでも憶えることがいっぱいで大変でした」
「そうだろうなあ。結構なセリフの量もあったし、収録時間も長かったから」
やよい「それに…プロデューサーと明日こっちでゆっくりできるっていうのが、凄く楽しみになっちゃってて」
「少し終わり頃に浮付いた感じだったのはそれだったのか」
やよい「エヘヘ、ごめんなさーい」
「いや、収録に支障が無かったから問題無いさ」
やよい「それと…えっと、何でもないですっ」
「ん?どうしたやよい」
やよい「あ…プロデューサー、そろそろ着替えないとかもですね」
プロデューサーは少し疑問に思いながらも、一緒にやよいの着替え用の場所へと向かっていった。
………
打ち上げでケーキも分けて食べ終わり…
スタッフ「今日はこっちで泊まっていくとのことだけど?」
「はい。せっかくこういう地方に来たんで日帰りじゃもったいないですし、それにやよいの記念になるかなと」
スタッフ「しかし、春休みでちょうど良かったね高槻ちゃん」
やよい「はいっ!だから今回の旅行、すっごく楽しみだったんです。でも…」
スタッフ「ん?でも?」
やよい「弟たちも一緒だったらなーって」
スタッフ「そうか。やっぱり高槻ちゃんは家族想いの子だね」
「それがやよいの良いところだとは思ってます。思いやりのある子ですから」
スタッフ「うんうん。よく分かるよ」
やよい「だけとお母さんたちが、たまにはプロデューサーと二人きりで行ってきなさいって言ってくれたんです」
スタッフ「なるほどね。じゃあ後はプロデューサー君に任せることにして我々は東京に戻ることにするさ」
「そうですか、ではお気をつけて」
やよい「また次の収録、楽しみにしてまーす」
スタッフ「おう。今日はゆっくりこっちで身体を休めて、また元気に収録に来てね高槻ちゃん」
やよい「はーいっ」
「今日もうちの高槻をありがとうございました」
ロケ隊は二人を残して帰って行った。
「よし。じゃあ俺たちはホテルに戻るか」
やよい「はい…」
「どうした?さっきまでの元気が無いぞ」
やよい「な、何でもないですっ。早くホテルに戻りましょー」
「いや、何か無理しているようにしか見えないぞ」
やよい「あの…プロデューサー、千早さんや貴音さんから聞いちゃったんです…」
「聞いたって…何のことだ?」
やよい「誕生日にプロデューサーと二人きりで遠くに行ってるのは…その…」
「…聞いたのか?」
プロデューサーはさっきのやよいの躊躇いを理解した。
やよい「あ、あのっ」
「い、いや…そんな無理してみんなに合わせることはないからな」
やよい「ち、違うんです。その…」
「あのさ、やよい。とりあえずこんなところでじゃなくて、ホテルに戻ってから話しないか?」
やよい「あっ…そうですね。じゃあお腹はもう大丈夫ですから、あとは帰ってお風呂ですね」
「そうだな。まずはそれからか」
やよい「プロデューサー…」
「ん?」
やよい「手、繋いでもらえますか?」
「それくらいならお安い御用さ、ほら」
ギュッ
やよいは差し出された手をちゃんと握った。
「じゃあ帰るか」
やよい「はいっ」
二人はとりあえず宿泊場所にしていたホテルへと戻った。
………
ここは宿泊場所のホテル。昨日までも安全のために同室にはしていたものの、さっきのこともあって少し気まずい雰囲気になっていた…
やよい「プロデューサー…」
「な、何だ?やよい」
二人はそれぞれのベッドで向かい合って座っていた。
やよい「あのっ…その…ちょっと、そっちのベッドに行ってもいいですか?」
「いいけど…」
ポフッ
やよいはプロデューサーの隣へと腰を下ろした。
やよい「エヘヘっ、プロデューサーがこんなに近いです」
「そうだな…でもどうしたんだ?急に」
やよい「そのですね…さっきの話です」
「いや、あれは貴音と千早の話であって、別に俺はだな…」
その話を遮るように…
やよい「プロデューサーは、こんな小さな女の子じゃダメですよね?」
「えっ…?」
やよい「私だってもうこんな歳だから授業とかで習ってるし、そういう歌も歌ってるから分かってるんですっ」
「やよい…」
やよい「でも貴音さんや千早さん、それに小鳥さんに比べたら私なんか色んなのが小さくって…」
「………」
やよい「それに知識だってちゃんと無いから自信が無くてだから…うー、何て言っていいか分からないです…」
少し涙目になっているやよい。
「やよい、そんなの関係無いんだ。やよいはどうしたいか、それだけのことだよ」
やよい「その…」
コクンっ
やよいはただ一つだけ、ただ迷い無く頷いた。
チュッ
やよいと交わされた口付けという名の契約、やよいの夜はいつもより長いことになりそうである…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
どもっ、飛神宮子です。
2011年誕生日SSの3本目はやよい。きっと収録が決まった時に、貴音と千早から一言あったんでしょうね。
聞かされたのが他の人ならこうはならなかったでしょうけど、やよいなら…こうなってしまうと思います。
Happy Birthday!! Yayoi TAKATSUKI.
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2011・03・25FRI
飛神宮子
短編小説に戻る