Verdurous Sweetness(新緑の甘味)

このSSはこちらにカレンダーと共に掲載された3行のセリフを拡張したものです。
なので、その画像と一緒にお楽しみください。
 
ここは新緑の季節である頃の事務所…
やよい「うー…どうしよう…」
伊織「どうしたの?やよいったら」
やよい「あ、伊織ちゃん。ううん何でもないから大丈夫」
伊織「そんな元気が無くて大丈夫なわけないじゃない、もう」
やよい「だって…」
やよいは何やらそうとう落ち込んでいる様子。
伊織「何よ、アンタの取り柄は元気なことなんだから。私に相談できないこと?」
やよい「そうじゃないけど…迷惑だもん」
伊織「言ってみなくちゃ分からないでしょ」
やよい「だって、アレを弟たちに買ってあげられないなんて」
伊織「ふーん…それでアレって何なのよ」
やよい「柏餅…」
伊織「はあ?」
やよい「今日は柏餅買って帰ってくるって約束したのに…」
伊織「そういうこと…もう仕方ないわね」
やよい「えっ?」
伊織「今日の帰り、私の家に来てみない?」
やよい「どうして?」
伊織「そんなやよい、見てられないからよ」
やよい「良く分からないけど、伊織ちゃんの家に行けばいいの?」
伊織「そうよ。来れる時間はあるわよね?」
やよい「はいっ、それじゃあ帰りに寄っちゃいますね」
伊織「さて、忙しくなったわ…」
………
そして帰り…
やよい「お、お邪魔しまーす」
伊織「そんな挨拶なんていいから上がって、やよい」
やよい「はいっ、伊織ちゃん。うあー、でも伊織ちゃんの家はやっぱり凄いですー」
伊織「ほらほら、そんなところでつっ立ってないでこっち来て」
やよい「はーい」
やよいが伊織に連れられて和室へとついていくと…
やよい「うわー、いっぱいの柏餅ですー!」
そこにある三方の上には沢山の柏餅が積まれていた。
伊織「やよいのために用意したの」
やよい「ありがとう!伊織ちゃん」
と、やよいが手を伸ばそうとしたその時…
伊織「ちょーっと待った!やよい、私もタダじゃあげないわ」
やよい「ええーっ!?」
伊織「そうねえ、せっかく5月だから…」
 
十数分後…
二人の頭の上には新聞紙の兜が、そして手には新聞紙の剣があった。
伊織「このチャンバラで、やよいが一本でも取れたら全部あげるわよ」
やよい「全部貰っちゃってもいいの?伊織ちゃん」
伊織「いいのよ、でも…私に勝てるかしらね?」
やよい「うー、何だか負けちゃいそうかも…」
伊織「じゃあいくわよ!試合開始ね!」
 
その後…
シュッ
空を切るやよいの剣に対して…
パーンッ
的確に頭を捉える伊織の剣。
伊織「ほらほら、そんなんじゃこの柏餅はあげられないわよ」
やよい「うー…弟たちも楽しみに待ってるし困りますー」
伊織「それなら一発でも打ち込んでみなさいよね、にひひっ!」
やよいの頭からは、ぐしゃぐしゃになった兜が既に落ちていた。
やよい「どうしよう…」
伊織「へえ…やよいのダンスの能力はそれくらいなのかしら?」
やよい「そんなんじゃないもん!」
伊織「ほら、いつも踊ってるあの曲みたいにしてみなさいよ!」
やよい「あの曲…あっ、そっか!」
突如ステップが良くなるやよい、そして…
スパーン
やよいの一発が伊織の兜を捉えた。
やよい「あっ…伊織ちゃん、大丈夫っ?」
伊織「…ふう、負けたわ」
やよい「伊織ちゃん…」
伊織「約束は約束よ、これ全部あげるわ」
やよい「本当に全部貰っちゃっていいの?」
伊織「いいのよ、元からやよいのためのものだから」
やよい「でも…」
伊織「だって…やよいの悲しんでる姿は見たくなかったんだもの」
やよい「そんな…」
やよいは太陽のような笑顔で伊織へと答えた。
伊織「でも、そこまでやよいが遠慮するなら…」
やよい「え?」
伊織「今1個ずつ一緒に食べる、それならいい?」
やよい「一緒に?うん!」
伊織「それじゃ今、お茶を持ってこさせるから」
………
日溜まりの縁側に並んで座る二人。手には柏餅、傍らにはお茶の入った湯呑がある。
伊織・やよい「「いただきまーす」」
あむっ ぱくっ
伊織「んー、こういう甘さもたまにはいいわね」
やよい「甘くてもちもちしてて、美味しいね」
伊織「でもやよいの口に合って良かったわ」
やよい「伊織ちゃん、本当にありがと」
伊織「どういたしまして。あと今日は家まで送ってあげるわよ」
やよい「ええーっ!?そこまでしてもらってもいいの?」
伊織「だって、こんなの持ったまま帰る気なの?」
やよい「あ、そっか…でも本当にいいの?」
伊織「私が良いって言ってるんだからいいの」
やよい「伊織ちゃんっ!」
ぎゅっ
横に居る伊織を抱きしめたやよい。
伊織「や、やよいっ!?」
やよい「大好き、伊織ちゃん」
チュッ
伊織の頬と心へ、やよいのちょっぴり甘くなった唇が跡を残していった…
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あとがき
ども、飛神宮子です。
5月です。私の誕生月(2日)です。でも伊織は苦手なんですよ…。
ま、そんなこんなですがちょっと甘めになっちゃいましたね。
5月は新緑の季節。過ごしやすくてやっぱりいい頃ですよね。
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2009・05・01FRI
飛神宮子
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