Vectorial Harmonization(方向性の調和)

ここはある日の撮影スタジオ…
伊織「プロデューサー、飲み物は?」
「ああ、いつもと違うメーカーだけど100%ならいいよな?」
伊織「しょうがないわね…いいわよ」
どうやら今は伊織の休憩中のようだ。そんな中…
パシャっ パシャパシャっ
カメラマン「いいわよー、三浦さんもう少し前に来てくれてもいいわー」
あずさ「こうでしょうか?」
カメラマン「そうそう。うん、今の笑顔素敵よー」
あずさ「ありがとうございます〜」
どうやらあずさが撮影しているようだ。
伊織「ねえプロデューサー」
「何だ?伊織」
伊織「アンタはどうして今回あずさの相方に私を選んだわけ?」
「まあ要望された年齢と予定を合わせてだな」
伊織「それにしてもアンタ、鼻の下伸びっぱなしだったわよね、さっきの撮影の時」
「バレテマシタカ、伊織様」
伊織「バレてたも何もないわよ。ずっとあずさの方見てたじゃない」
「そ、それは男としてだな…」
伊織「どうせ私は撮影の数合わせよ。予定が合えば美希でもやよいでも良かったんでしょ」
「いや、そうじゃない」
伊織「…えっ?」
「実はやよいも美希も空いていたんだ。今回はあずささんの方からの申し出なんだ」
伊織「あずさが…私を選んだってこと?」
「そういうことだな。俺も詳しいことは聞いてないから分からないけどさ」
伊織「そういうことなら…分かったわ」
 
数分後…
あずさ「プロデューサーさん、伊織ちゃんと交代だそうです〜」
「分かりました。伊織、出番だってさ」
伊織「分かったわよ。行ってくるから、今度こそ私に見惚れなさいね」
「ああ、分かったよ」
伊織は撮影場所へと向かっていった。さっきまで伊織が休憩していた場所に今度はあずさが腰を下ろした。
「おつかれさまでした。飲み物はこれで大丈夫ですか?」
あずさ「はい〜、ありがとうございます〜」
撮影場所では…
パシャっ パシャパシャっ
カメラマン「ほら水瀬さんは可愛いんだから、もっと優しい感じで」
伊織「こう?」
カメラマン「そうそう。撮るわよーそれいい表情!」
伊織「…フフっ」
伊織も何だかんだでノッてきているようだ。
「あの、そういえばさっき伊織に聞かれたんですけど」
あずさ「何でしょう?」
「どうして今回、伊織を選んだんですか?」
あずさ「どうしてもやってみたかったんです〜。ほら、普段私と伊織ちゃんって全然違う方向性じゃないですか〜」
「方向性?」
あずさ「美希ちゃんとは…胸とかありますし、やよいちゃんは同じお姉さんっぽいって言われちゃってますから」
「そう考えると伊織と接点って難しいですね」
あずさ「だからプロデューサーさんも、なかなか私と伊織ちゃんって組ませないじゃないですか」
「なるほど…それはこっちも反省しなくちゃなあ」
あずさ「それで今回、思い切ってお願いしたんです〜」
「あずささんに諭されるとは思っても見なかったですよ、ありがとうございます」
あずさ「いえいえ〜」
「それで今回の撮影、どうですか?」
あずさ「女性のカメラマンさんなんで、とても安心できていいです〜」
「やっぱり男性の時よりいいですか?」
あずさ「男の方だとやっぱり、その…ちょっとエッチですから…」
「確かに、男は感情に素直なものですから」
あずさ「プロデューサーさんもですか?」
「小鳥さんには…って何を言わせるんですかもう」
あずさ「フフフ、やっぱり」
「…あずささんには敵いませんよ」
あずさ「あら?そろそろ撮影ひと段落かしら?何か片付けてるみたいです」
「そうですね。そろそろ次の2人撮影の前の休憩の時間ですから」
あずさ「プロデューサーさん、伊織ちゃんを迎えに行ってあげてください」
「分かりました。ちょっと行ってきますね」
………
ここは二人の今日の控室。
伊織「な、何よプロデューサー、私たちをじっと見つめて」
プロデューサーはソファーに座っている二人を向かいでじっくり観察していた。
あずさ「プロデューサーさん、どうしたんですか〜?」
「うーん、確かに難しいですねあずささん」
あずさ「え?」
「さっき言ってたじゃないですか、二人が違う方向性だって」
あずさ「あ〜、それでですか〜」
伊織「な、何よ二人とも」
「あずささんに聞いたんだ、今回どうして伊織を選んだのかって」
あずさ「そうなの〜」
伊織「それで?」
「伊織とあずささんが普段は全然違う方向性だからさ、同じような部分無いかなってな」
伊織「へえ…だから?」
「あずささんが伊織を選んだきっかけはそれなんだ。伊織とは方向性が違うからだって」
伊織「…別に方向性なんて一緒じゃなくたっていいじゃない」
「えっ?」
伊織「組む時にそんなこと気にしたって仕方ないでしょ」
あずさ「確かにそうね〜」
伊織「心苦しかったりしなかったらもうそれでいいの」
「そうか…そうだよな」
伊織「まあ、あずさとはまた何かやってみたいわね」
あずさ「またやってくれる?」
伊織「もちろんよ。こっちの方からお願いするかもしれないくらい」
あずさ「ありがとう〜」
「じゃあ今度の伊織の仕事、あずささんをパートナーにしようか?真が予定合いそうに無いしさ」
伊織「それって今度の海外の?それにあずさはまずいんじゃない?迷子になったらどうするのよ」
あずさ「伊織ちゃん、私も行きたいわ〜」
伊織「…プロデューサー、あずさの管理頼むわよ」
「…分かった。お、そろそろ午後の撮影だな、準備を頼む二人とも」
伊織・あずさ「分かったわ」 「はい〜」
二人の着替えのためにドアを出るプロデューサーの心には、この先の二人のビジョンが映り込み始めていた…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
何と言うか、そういえばあまり接点が少ないという二人です。
やっぱりアイドル同士でもなかなか縁遠かったり、極端に近かったりする組み合わせってありますよね。
難しい時はとにかく惰性でスタートを掛ける、それが意外と一番だったりするものなのですよ。
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2010・08・20FRI
飛神宮子
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