ある日の事務所にて… |
伊織 | 「小鳥、プロデューサー知らない?」 |
小鳥 | 「あら?伊織ちゃんどうしたの?」 |
伊織 | 「今日朝から来るようにって言われたんだけど、どこ探してもいないのよ…もうっ」 |
小鳥 | 「変ね…今日はプロデューサーさんはオフのはずよ」 |
伊織 | 「…どういうことよ」 |
小鳥 | 「ちょっと待って、今確かめるわ」 |
Trrrrr… Trrrrr… |
小鳥 | 「もしもし、プロデューサーさん?」 |
P | 『もしもし、小鳥さんですか?』 |
小鳥 | 「あの、伊織ちゃんが来て怒ってますけど…」 |
P | 『あ、やっぱりですか?』 |
小鳥 | 「やっぱりですかじゃないですよ、どうしたんですか?いったいもう」 |
P | 『あのですね…大変言いにくいんですけど、伊織に送ったメールを確認して欲しいと伝えてもらいたいんですが』 |
小鳥 | 「え?わ、分かりました…伊織ちゃん」 |
伊織 | 「何かしら?」 |
小鳥 | 「あの、プロデューサーさんが送ったメールを確認して欲しいって言ってるの」 |
伊織 | 「え?分かったわ」 |
カチャッ |
と、携帯電話を確認する伊織。 |
伊織 | 「な…何よこれ!どういうことよ!」 |
小鳥 | 「何だか伊織ちゃんが騒いでるんですが…」 |
P | 『ああ、やっぱり後に送ったメールの方を見てなかったのか…』 |
小鳥 | 「そのようですね」 |
P | 『どうですか?伊織の様子は』 |
小鳥 | 「んー、何と言うか…」 |
伊織 | 「はあ…私が悪いのよね」 |
P | 『俺が行ったほうがいいか聞いて欲しいんですが』 |
小鳥 | 「分かりました。伊織ちゃん、プロデューサーさんが来る必要はある?」 |
伊織 | 「えっ?プロデューサー?そうね…もういいわ。自分が悪いんだから」 |
小鳥 | 「そういうことらしいですよ、プロデューサーさん」 |
P | 『分かりました。じゃあ何かあったら連絡お願いします』 |
小鳥 | 「はい、では今日はゆっくりしてらして下さい」 |
Pi♪ |
伊織 | 「もう…無駄足じゃない今日は」 |
すっかりふて腐れている伊織。 |
小鳥 | 「伊織ちゃん」 |
伊織 | 「何よ小鳥」 |
小鳥 | 「そんなにふて腐れないで、まずこれを飲んで落ち着いて」 |
と、お茶を差し出す小鳥。 |
伊織 | 「…ありがと」 |
こくっこくっ |
伊織 | 「ふう…いいお茶ね、うちのには負けるけど」 |
小鳥 | 「そんな、伊織ちゃんの家のお茶に勝とうなんて思ってないわ」 |
伊織 | 「でも…もう嫌になっちゃうわよ、本当に」 |
小鳥 | 「いったいどうしたのかしら?」 |
伊織 | 「聞いてよもう、プロデューサーったら…」 |
……… |
小鳥 | 「なるほど、そういうことね」 |
伊織 | 「悪いのはどっちだと思う?」 |
小鳥 | 「それは…どっちもかしら。ちゃんと確認しなった伊織ちゃんも、スケジュール管理しているプロデューサーさんも」 |
伊織 | 「やっぱりそうよね…」 |
小鳥 | 「さて、今日はどうするの?」 |
伊織 | 「そうね、どうしようかしら」 |
小鳥 | 「伊織ちゃん、時間はあるのよね?」 |
伊織 | 「まあ今日は仕事のつもりで来たしねえ…」 |
小鳥 | 「帰りはいつくらいにするつもりなの?」 |
伊織 | 「いつでもいいわ、もう。どうせ仕事が終わったら迎えに来てもらう予定だったから」 |
小鳥 | 「それなら一緒にどこかに出かけましょ」 |
伊織 | 「えっ…小鳥、仕事あるんでしょ?」 |
小鳥 | 「仕事は今日は残務処理だけだわ。それに電話関係は律子さんに任せればいいから」 |
伊織 | 「いいの…?本当に私のために」 |
小鳥 | 「いいのよ。こんな伊織ちゃんを一人になんかさせてられないわ」 |
伊織 | 「小鳥…ありがと」 |
小鳥 | 「じゃあそうと決まれば、ちょっと着替えてくるわね」 |
……… |
ここは小鳥の運転する車の中… |
伊織 | 「いい車、乗ってるじゃない小鳥」 |
小鳥 | 「3台目が必要な時に私の車になっちゃうから、どうしてもね」 |
伊織 | 「ふーん。それで必要になったことってあったかしら?」 |
小鳥 | 「まだ無いわ。それ以外で乗せることばかりよ」 |
伊織 | 「へえ…。そういえばどこに向かってるのよ」 |
小鳥 | 「アウトレットモールよ。一人じゃ行き辛くて」 |
伊織 | 「えっ…ど、どこの?」 |
小鳥 | 「うーん、埼玉の向こうね」 |
伊織 | 「埼玉の向こう…って群馬か栃木じゃない!」 |
小鳥 | 「そうは言っても、もう高速の入口よ」 |
伊織 | 「…もういいわ、あんたに任せるわ」 |
小鳥 | 「さて、時間も時間だから多少は飛ばすわね!」 |
伊織 | 「…くれぐれも安全運転だけは頼むわね…」 |
|
小鳥 | 「伊織ちゃん、伊織ちゃん」 |
伊織 | 「何?小鳥、もう着いたの?」 |
寝ていたところを起こされた伊織。 |
小鳥 | 「着いたわよ。思ったより時間かからなかったわ」 |
伊織 | 「んーっ…ふう。ここまで来るとさすがに空気は気持ちいいわ」 |
小鳥 | 「確かに東京から離れてるから少しはね」 |
伊織 | 「こういうところにこういうモールがあるんだから、日本って不思議よね」 |
小鳥 | 「まあここの会社は郊外に造るのが得意らしいから」 |
伊織 | 「へえ…そうなの」 |
小鳥 | 「伊織ちゃんはこういう所には…来ないわよね」 |
伊織 | 「ブランド品のお店は行くけど、さすがにこういう所には来ないわよ」 |
小鳥 | 「じゃあ今日は時間が許す限り回りましょ」 |
伊織 | 「…そうね、今日は仕事は忘れるわ」 |
自然と笑顔へと変わる伊織。 |
小鳥 | 「そうそう、伊織ちゃんにはその笑顔が一番よ」 |
伊織 | 「えっ…そ、そうかしら」 |
小鳥 | 「そうよ。伊織ちゃんは笑顔が一番可愛いんだから」 |
伊織 | 「ありがと…小鳥」 |
伊織の笑顔はその日、絶えることはなかったという… |