ここはある日の事務所にあるボーカルレッスン用の部屋… |
律子 | 「んー…今の聴いてみてどう思う?やよい」 |
やよい | 「ちょっと物足りないなって思います。律子さんはどうですか?」 |
律子 | 「私も。どうにかならないかしら?プロデューサー」 |
P | 「俺も何かが足りない気がしてなあ…元気さと応援の気持ちは伝わってくるんだけど」 |
律子 | 「そうよね。となると、足りないのは…」 |
やよい | 「何かこうスーッと入ってくる感じじゃないですか?」 |
P | 「そうだやよい、それが無かったんだ」 |
律子 | 「爽やかさってことよね。ちょっとこのままだとアクが強いかしら」 |
P | 「でも二人の声からしたら少し難しいだろうなあ…」 |
やよい | 「うう…ゴメンなさい」 |
律子 | 「やよいが謝ることはないわよ。私だってそれができるわけじゃないんだから」 |
P | 「となると…ってなあ、誰かコーラスで足してみるか?」 |
律子 | 「それも私たちがやるはずだったやつ?」 |
P | 「ああ。そこでも変えてみれば良くなるんじゃないかと思うけど」 |
やよい | 「でもでも、誰にするんですか?」 |
律子 | 「そこよね…プロデューサーは誰がいいと思う?」 |
P | 「無難に行くなら真とか響とかだろうけど、意外と雪歩とかもいいかもなあ…」 |
律子 | 「でもどうかしらね…爽やかの中に綺麗さも入れたいわ」 |
やよい | 「綺麗な感じ…だと千早さんですよね」 |
律子 | 「でもちょっと今回の曲とのイメージは違わないかしら」 |
やよい | 「そうですね。だとすると…」 |
そこに… |
カチャッ |
小鳥がやってきた。 |
小鳥 | 「プロデューサーさん、プロデューサーさん宛てにバイク便が来ましたよ」 |
P | 「あ、届けに来てくれたんですか小鳥さん。Greetのイベントのと雪月花の番組のだな」 |
小鳥 | 「はい、どうぞ」 |
P | 「ありがとうございます」 |
小鳥 | 「でもどうしたの?三人で難しい顔しちゃってるわ」 |
P | 「いや、ちょっと今度の新曲のことで…」 |
小鳥 | 「あの曲?」 |
P | 「はい。この前楽譜を見せましたよね?」 |
小鳥 | 「ええ。デモテープを確認で聴かせてもらったけどいい曲よね」 |
やよい | 「はいっ!だけど二人で歌ったんですけど、どうしても何か物足りなくって…」 |
律子 | 「そうなんです。もう少し曲に爽やかさと綺麗さが欲しくって…」 |
P | 「難しいよなあ…せめてコーラスにでも欲しいと思って、うちの事務所でも考えたんですが…」 |
律子・やよい | 『あっ…』 |
律子とやよいは同じタイミングで何か思いついたようだ。 |
P | 「どうした?律子、やよい」 |
律子 | 「小鳥さん、ちょっと歌ってみてくれません?たぶん、やよいもそうよね?」 |
やよい | 「そうです。律子さんと同じこと考えてました」 |
小鳥 | 「ええっ!?わ、私が!?」 |
P | 「そうだな。それもアリか…意外と盲点だったなあ…」 |
小鳥 | 「プロデューサーさんまで!?」 |
P | 「ちょっと試しに歌ってみてください、小鳥さん」 |
小鳥 | 「プロデューサーさんがそこまで言うなら…ちょっとやってみます。楽譜をちょっと見せてもらえませんか?」 |
律子 | 「じゃあこの予備の楽譜を、小鳥さん」 |
小鳥 | 「ありがとう、律子さん。えっと…このコーラス?」 |
やよい | 「はいっ、お願いしまーす!」 |
……… |
軽く練習をした後、一度通しで歌って… |
律子 | 「まさかここまでイメージが変わっちゃうなんて…」 |
やよい | 「小鳥さん凄いですー!」 |
小鳥 | 「律子さん、やよいちゃん、ありがとう」 |
P | 「律子、やよい、どうだ?」 |
律子 | 「うん。まさかここまで変わるなんて予想以上だったわ」 |
やよい | 「はいー!小鳥さんに歌ってもらえると心強いかもです」 |
P | 「小鳥さん、今度の秋のま〜ちの新曲でコーラス参加してくれません?」 |
小鳥 | 「本当に私なんかでいいんですか?」 |
P | 「この二人もこう言ってくれてるんですから」 |
小鳥 | 「…分かりました。プロデューサーさんもそう言うなら、可愛い妹みたいな二人に手を貸しますね」 |
やよい | 「ありがとうございますっ、小鳥さん」 |
律子 | 「じゃあ小鳥さんの予定合わせも収録日の決定に入れないとね」 |
P | 「それは任せたぞ。可能な日付は変わらないからな」 |
律子 | 「小鳥さん、あとでちょっと今後の予定を聞かせてもらえますか?」 |
小鳥 | 「分かったわ。じゃあちょっと事務所の方に戻るわね」 |
やよい | 「うっうー、楽しみです」 |
……… |
流れ流れて収録当日の事務所… |
律子 | 「おはようございます、小鳥さん」 |
やよい | 「おはようございまーす、小鳥お姉ちゃん…じゃなかった、小鳥さん」 |
小鳥 | 「おはよう、律子さん、やよい…じゃなくてやよいちゃん」 |
律子 | 「今日はよろしくお願いします。え?お姉ちゃんってどうしたのよ、やよい」 |
小鳥 | 「前に一回あったの。私がやよいちゃんのお姉ちゃんとして1日過ごそうってことで」 |
やよい | 「何かとっさに言葉に出ちゃいました」 |
律子 | 「ふーん、でも面白いわね。じゃあ私も今日はそうしようかしら」 |
やよい | 「律子お姉ちゃんも?」 |
小鳥 | 「律子、やよいもこう言ってるからいいんじゃないかしら」 |
律子 | 「そうね。んーと…小鳥姉さん、今日はお願いね」 |
小鳥 | 「分かったわ、お姉ちゃんの頑張りを見てて。それで収録は何時からかしら?」 |
やよい | 「確か打ち合わせ終わったらプロデューサーが呼んでくるって言ってたよ、小鳥お姉ちゃん」 |
小鳥 | 「そうなの?それで収録の時は私はどうすればいいの?」 |
律子 | 「一緒でいいわ。3人ヘッドホンから別々の音が流れるから」 |
小鳥 | 「今回は…ハモりがあるのね。やよい、大丈夫?」 |
やよい | 「バッチリだよ。しっかり練習してきたもん」 |
小鳥 | 「律子、私本当にコーラスだけでいいの?」 |
律子 | 「姉さんは今回はお手伝いだから、メインは私たちに任せて」 |
小鳥 | 「それなら…うん、分かったわ。終わったらサポートするわね」 |
やよい | 「あ、プロデューサーですよ」 |
P | 「おはようございます小鳥さん」 |
小鳥 | 「おはようございます、プロデューサーさん」 |
P | 「おはよう、律子。今日は時間の方は律子に任せるからな」 |
律子 | 「おはようございます、プロデューサー。ええ、しっかりスケジュールは組んどいたわ」 |
P | 「おはよう、やよい。準備は…万全みたいだな」 |
やよい | 「おはようございます、プロデューサー。はいっ、元気満タンです」 |
小鳥 | 「もう収録に入るんですよね」 |
P | 「はい。向こうのセットもあと10分くらいで終わるらしいので」 |
小鳥 | 「よ〜し、じゃあビシッと決めるわよ律子、やよい」 |
律子 | 「そうね、やりましょ小鳥姉さん」 |
やよい | 「うんっ、頑張ろっ小鳥お姉ちゃん」 |
P | 「…え?」 |
疑問符が頭の上を飛び交うプロデューサーを余所に、三人はまるで本物の姉妹のように意気投合していたという… |