Kiss by the Name of Treat(口付けという名のいたずら)

ここは10月も末の頃の事務所…ここは事務室のドアの前…
亜美「やよいっちー、準備できたー?」
やよい「こんな格好で良いの?亜美」
真美「大丈夫大丈夫、似合ってるよやよいっち」
やよい「そ、そっかなあ…ありがとう真美」
伊織「じゃあ行くわよ、プロデューサーのとこ」
亜美「意外とノリノリじゃん、いおりん」
伊織「アンタ達だけじゃ心配だからじゃない」
ガチャッ
ドアノブを回した真美。
真美「兄ちゃーん!」
「うわあっ!4人ともその格好は何だ何だ!」
やよい「プロデューサー、とりっくおあとりーとです!」
「え?あ、ああそうか。今日はハロウィンか」
亜美「兄ちゃん、いたずらがいい?それともお菓子くれるー?」
「んー…そうだ、ちょっと待ってな」
少し席を外したプロデューサー。そして給湯室から戻ってきたプロデューサーの手には…
「これ1つずつ食べていいぞ」
伊織「あら、アンタにしてはやるじゃない」
某有名ケーキ店のケーキが箱に4つ入っていた。
「昨日の夜にレコード会社の人から貰った物だけどな。今日までの期限だから食べちゃって」
小鳥「プロデューサーさーん、それって…」
「大丈夫ですよ小鳥さん。まだ冷蔵庫に入ってますから」
小鳥「私も戴いちゃっていいんですか?」
「いいですよ。あと4個しか無いんで、俺と社長と小鳥さんと律子の分にしましょう」
律子「いいんですか?私まで貰っちゃって」
「事務仕事は頭使うだろ?これで糖分補給してくれ」
律子「ありがとうございます、プロデューサー」
小鳥「じゃあ今社長に出してから、プロデューサーさんと律子さんの分も持ってきますね」
伊織「小鳥、紅茶をお願いできる?」
やよい「あ、私手伝います!」
小鳥「やよいちゃんありがとう。じゃあみんなの飲み物を会議室に持って行ってくれる?」
やよい「はーい」
………
4人は会議室に行き、ここには再び律子と小鳥とプロデューサーだけになった。
「でもお菓子じゃなかったら、何されるか分からないですよ」
律子「亜美も真美も手加減しないですからね」
「この前もスリーパーホールドと脚4の字を同時に掛けられて、死ぬかと思いましたよ」
小鳥「フフフ、好かれてるんですねプロデューサーさんも」
「いたずらされるってことは好かれているからなんでしょうけど…痛いのは正直勘弁してほしいですよ本当に」
と、そこに…
「プロデューサー、おはようだぞ!」
「ん?おはよう響。あれ?今日ってGreetは仕事入れてないよな」
「何か美味しそうな匂いがしてたからな…って、もう食べ終わったみたいだな」
「あ?ああ、これか」
プロデューサーや小鳥、律子の机には既に空になった皿が置いてあった。
「いいなあ、自分も食べたかったぞ」
「そんなこと言われてもなあ…さっきハロウィンで来た4人にあげちゃったし…」
「そっか、今日はハロウィンか…ハロウィンだな…」
何やら頭の中で思案している響。
「プロデューサー、今日衣装チェックするから衣裳部屋の鍵貸してさー」
「ん、いいぞ…あ、鍵閉めるのか?」
「うん。だって見られたら恥ずかしいしな」
「それなら小鳥さーん、衣裳部屋の鍵のスペアを響に渡してくださいー」
小鳥「どうしたんです?プロデューサーさんも持ってるでしょう?」
「この書類の手続きが終わったら衣装整理に行くんで、その時にもし鍵が無いと困るじゃないですか」
小鳥「分かりました。じゃあ響ちゃんこの鍵使って」
小鳥から鍵を受け取った響。
「んー。じゃあちょっと言ってくるさ」
小鳥「行ってらっしゃい」
………
ガチャンっ
衣裳部屋に入って鍵を掛けた響。
「そういえば街中カボチャだらけだったのに、忘れてたさー」
何やら「ドレス」と書いてある衣装ケースを漁り始めた。
「お、あったあった。やよいには悪いけどちょっと借りるな」
実はウエスト・ヒップサイズ自体はやよいと殆ど変わらない上に、身長も今の765プロではやよいに次いで低いのである。
「んっ…胸がギリギリだけど何とか入ったな」
やよいのオレンジ色のドレスに身を包んだ。
「えっとここのリボンとここのリボンを締めてっと」
腰の赤いリボンと首元の白いリボンも締めた。
「これは…胸のところかな?」
胸のところに大きな赤いハートのブローチを付けた。
「これでいいな。それじゃあプロデューサーが来るまで隠れてるさー」
パチンっ
響は電気を落としてドアからは見えない位置へと隠れた。
 
20分後…
「ふー、何とかなったな」
どうやらプロデューサーがやってきたようだ。
ガチャガチャガチャ
ドアノブを回そうとして鍵がしまっていることに気が付くプロデューサー。
「そっか…」
コンコン
「響ー、鍵開けるからなー」
ガチャンっ ガチャッ バタンッ
鍵を開けて衣裳部屋の中に入るプロデューサー。
「あれ?電気点いてないってことは、響はどこかに行ったのか?」
プロデューサーに気付かれないようにスイッチに近付くプロデューサーに近付く響。
「でも鍵返しに戻ってきてないし…とりあえず整理するか」
パチっ
電気が点いたその瞬間…
「トリックオアトリート…だぞ」
プロデューサーにしな垂れる響。
「うわあっ!ひ、響!?」
突然のことにびっくりしている。
「お菓子をくれなきゃ…いたずらしちゃうぞ…」
何だかいつもより妖艶な雰囲気の響に、顔が少しずつ紅潮し始めたプロデューサー。
「自分、今だけは吸血鬼さ。お菓子貰えないからいたずら…しちゃっていいんだな?」
「え?響?え?」
訳も分からぬ間に首元に唇を寄せられた。
「プロデューサーのこと、戴いちゃうからな」
カプッ
首元を甘噛みし始めた響。
「ひ、響…くずぐったいって…んっ…」
「まだ足りないさ…もっと貰うさ」
響はプロデューサーの両頬に手を持って行って…
「唇も戴いちゃうからな…」
チュウっ
二人だけのその空間にキスという甘い時間が流れて行く…
「…ふう、ごちそうさま」
「まったく…突然こんなことされるとはな」
「いたずらしたくなっちゃったんだ。お菓子が無いっていったからさ」
「だからって衣装に着替えて…って、衣裳部屋に行くってそういうことだったのか」
「そうさ。自分だってその…プロデューサーは好きだから、こういう形でならいいかなって…」
「でも俺にはその…」
「分かってるさ。でもまだ自分は気持ちをちゃんと伝えて無かったからさ」
「響…うん、伝わったよ…」
「待ってる間ドキドキだったんだぞ。それでつい爆発しちゃったんだ…」
「いいよ、俺にだったらそう言う風になっても受け止めてあげるから」
「ありがとな、プロデューサー」
「でもそれ、やよいの衣装だろ。大丈夫なのか?」
「丈とか別に問題無かったぞ。胸ギリギリだったけど、身長はやよいとそんなに違わないしな」
「そういえば今はうちの事務所だと、やよいの次に身長低いんだっけか」
「亜美とかに抜かれちゃったからなー」
「まああのくらいだと身長伸びるのも速いしさ」
「だからこそ、自分より小さいやよいが可愛くてさ」
「でもやよいは今は違うユニットなんだからな。あんまり構うと律子の目が怖いぞ」
「だけど一度でいいから、やよいと一緒にやりたいな」
「ま、その辺は突発とかで色々と考えておくさ」
「ありがとうだぞ、プロデューサー」
「よし、じゃあまずその衣装片付けてな。俺は外に出てるから、着替えたら呼んでくれ」
「ん。終わったら自分も衣装整理手伝うぞ」
「いいのか?」
「どうせ今日は暇だしさ。たまにはこういうのもいいかなってな」
「じゃあ頼むよ」
「あ、プロデューサー」
「何だ?響」
「甘い唇、ごちそうさまだぞ」
「お粗末さまでした…でいいのかな?」
響も一人の女の子なんだ…そう感じたプロデューサーなのであった…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
ハロウィンというイベント。でもあの絵なので良い雰囲気。それを天秤に掛けた結果がこれです。
アイマス2になると実は身長がやよい(145)の次に小さくなる響(152)。
何となくSP時代からやよいに懐いていた理由が、この作品を書いていて分かった気がしました。
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2010・09・30THU
飛神宮子
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