ここはある日の事務所… |
ダダダダダダ |
響 | 「ハム蔵、どこ行ったーっ!」 |
響が事務所の中を探し回っているようだ。 |
響 | 「君のヒマワリの種を食べちゃったのは謝るから帰ってこーい!」 |
その頃… |
律子 | 「ふう…これで全部処理終わったわね…んーっ!」 |
コキコキコキン |
律子が首や肩を鳴らしながら事務仕事を終えて伸びをした。 |
律子 | 「もう…あれほどまとめて出すなって言ってるのにねえ…」 |
そこに… |
ハム蔵 | 【チュウッ】 |
律子 | 「え?」 |
律子の使っていた領収書の上で何やら鳴き声が。 |
律子 | 「響のハム蔵…よね?」 |
ハム蔵 | 【チュウ】 |
見つめ合う律子とハム蔵。 |
律子 | 「こっちに逃げてきたのね」 |
ハム蔵 | 【チュウ?】 |
律子 | 「フフフ、ちょっと響にいたずらしようかしら」 |
ハム蔵 | 【チュウ?】 |
律子 | 「ハム蔵、しばらくここに入ってなさい」 |
律子は事務服のポケットを指差した。 |
ハム蔵 | 【チュッ!】 |
ハム蔵はそれを理解したのか、律子のポケットに潜り込んだ。そこに… |
響 | 「ハム蔵ー!どこだー!」 |
響がやってきたようだ。 |
響 | 「あっ、律子!ハム蔵見なかったか?」 |
律子 | 「ハム蔵って響のハムスター?」 |
響 | 「うん。自分がハム蔵のおやつ食べてたの見て逃げちゃったんさー」 |
律子 | 「確かこの部屋で鳴き声は聞こえてたわね」 |
響 | 「そうか?分かった。ちょっと騒がしくなるけどゴメンな」 |
響は事務室の中を探し始めた。 |
こそっ… |
律子 | 「んっ…!」 |
律子はハム蔵が動いたのがくすぐったいのか、少しだけ喘いだ。 |
響 | 「どうした?律子」 |
律子 | 「いや、何でもないわ何でも」 |
響 | 「そうか?」 |
こそこそっ… |
律子 | 「ひゃんっ…!」 |
ハム蔵は段々我慢できなくなったのか、ポケットの中でうごめき出した。 |
響 | 「律子、本当にどうしたんだ?」 |
律子 | 「何でも…」 |
こそこそこそっ… |
律子 | 「やんっ…!」 |
響 | 「律子、もしかして…」 |
律子へと近付いてきた響。 |
律子 | 「え?だ、だから何でも無いって…」 |
響 | 「律子、そのポケットの膨らみは何だ?」 |
律子 | 「これ?これはあれよ、その…そう、癒しのためのグッズよ」 |
響 | 「そのわりに、動いてるじゃないか」 |
律子 | 「動いたっていいじゃない」 |
響 | 「そのサイズ、どう見たって…」 |
その時… |
ハム蔵 | 【チュウ?】 |
ポケットからハム蔵が外をうかがうために顔を出した。 |
響 | 「やっぱりじゃないかー!律子、騙したなー」 |
ぎゅうっ |
律子のポケットに手を伸ばし、ハム蔵を掴んだ響。 |
響 | 「ゴメンなー、ハム蔵。あとで美味しいオヤツ買ってやるから、許してなー」 |
ハム蔵 | 【チュッ!】 |
どうやらようやく落ち着いたのか、響の頭の上へと登っていった。 |
響 | 「それにしても律子はどうして嘘吐いてたんだ?」 |
律子 | 「そうねえ、仕事が終わったところに急に来たからかしらね」 |
響 | 「むー、だからって隠したのか?」 |
律子 | 「だってあれだけ騒いでたら、こっちだっていたずらの一つもしたくなるわよ」 |
響 | 「そ、そっか…確かに仕事中に自分五月蝿かったな」 |
律子 | 「まあ隠してたことは事実だから謝るわよ、ゴメンなさいね」 |
響 | 「いや、いいんだけどな」 |
律子 | 「でもどうしたのよ、今日は休みでしょ?」 |
響 | 「んー、何となく今日は自主レッスンか体力づくりでもしようかなってさー」 |
律子 | 「そんなこと言って…本当はやよいに会うためでしょ?」 |
響 | 「う…どうしてそれを…」 |
律子 | 「分かるわよ。事務所に来るなり第一声がやよいがいるか聞く言葉だったじゃない」 |
響 | 「あ、そか」 |
律子 | 「やよいは今日はおやすみよ。じゃなきゃ私がこんなことしているわけないでしょ」 |
響 | 「でも律子はいいよなー、自分もやよいと一緒のユニットが良かったさー」 |
律子 | 「それはプロデューサーに交渉しなさいよ。常設は私と固定だから無理だけど、企画ユニットなら何とかなるかもしれないわよ」 |
響 | 「そうだよなー。だから律子が羨ましいぞ」 |
律子 | 「運命よ。巡り会わせが悪かったって思いなさい」 |
響 | 「自分がここに来る前からのユニットだもんな、律子とやよいは」 |
律子 | 「確かにもう大概長いわね」 |
響 | 「律子にとってやよいはどうなんだ?」 |
律子 | 「どうって?」 |
響 | 「そのさ、どういう人なのかってことさ」 |
律子 | 「そうね私にとってやよいは…可愛くて愛おしい妹…よ」 |
響 | 「そこまで言われると…割って入るのは難しいなって思うぞ」 |
律子 | 「ここまで色々あったから、だからこそこう言えるのかしら」 |
響 | 「…そうだよな」 |
律子 | 「響はどうなの?」 |
響 | 「自分か?自分は…可愛がりたいって思える存在なのかな…」 |
律子 | 「それって…そこにいるハム蔵と同じ感じじゃないの?」 |
響 | 「いや、何かそうじゃなくて…うがー、何だか分からなくなってきたぞ」 |
律子 | 「言いたいことは分かるわよ。自分のことを好きになって欲しいんでしょ?」 |
響 | 「それなんだよ。でも、なかなかさ…伊織もいるしな」 |
律子 | 「長い間一緒にいれば、自然とそうなれるんじゃないかしら」 |
響 | 「そっかな?」 |
律子 | 「ええ。やよいはそういうこと考えられない子じゃないから…ね」 |
律子の自信のある瞳、その瞳に何かを確信した響であったという… |