ここはある日の事務所… |
あずさ | 「んー、どうしようかしら〜…」 |
何やら一人の女性が悩んでいるようだ。 |
あずさ | 「プロデューサーさんは大丈夫って言ってくれましたけど、不安だわ〜」 |
そこに… |
春香 | 「どうしたんですか?あずささん」 |
あずさ | 「あら?春香ちゃん。ううん、何でもないわ」 |
春香 | 「そんな風には見えませんよ。何かあったんですか?」 |
あずさ | 「そうねえ…あ、春香ちゃんなら力になってくれるかも」 |
春香 | 「私が力になれることって…だって、あずささんって歌もスタイルもみんな私より上ですよ」 |
あずさ | 「そうじゃないの。春香ちゃんの得意なことよ〜」 |
春香 | 「私が得意なことって、うーん…」 |
あずさ | 「春香ちゃん、お菓子作りを教えてくれないかしら?」 |
春香 | 「ああっ!お菓子作りのことだったんですね」 |
あずさ | 「そうなのよ〜。今度、番組でやらなくちゃいけないの」 |
春香 | 「でもあずささんって料理は不得意じゃないですよね?」 |
あずさ | 「だけど、だってやっぱりやるなら良い物は見せたいでしょ?」 |
春香 | 「そうですね。私なんかは練習しても失敗ばっかりですけど…」 |
あずさ | 「そんなことないわ。この前の千早ちゃんとの新曲は格好良かったわよ」 |
春香 | 「ありがとうございます。でも、まだやっぱりもっと練習とかしないとかなって」 |
あずさ | 「そこは千早ちゃんとだから、やっぱり春香ちゃんが引っ張らないとね」 |
春香 | 「はいっ、頑張りますっ!ああっ、それでそのあずささんが作るお菓子って何ですか?」 |
あずさ | 「えっとそうねえ…この書類に書いてあるはずね」 |
春香とその書類に見入るあずさ。 |
春香 | 「作るのは…チョコレートケーキですね」 |
あずさ | 「この企画、きっとバレンタインだからかしら」 |
春香 | 「そうですね。えっと…どんな味がいいですか?」 |
あずさ | 「ちょっと今回は大人の味にしたいわ〜」 |
春香 | 「苦めのケーキですね、ちょっと色々考えて来てみていいですか?」 |
あずさ | 「いいわよ、お任せしちゃうから〜」 |
春香 | 「あ、プロデューサーさーん」 |
春香は近くのデスクにいるプロデューサーに呼び掛けた。 |
P | 「何だー?春香」 |
春香 | 「来週の土日って、私とあずささんって何かお仕事入ってますかー?」 |
P | 「ちょっと待ってくれ…んーと、紫陽花は土曜朝に番宣だな。infinityは…土曜の昼から夕方くらいまで収録だな」 |
春香 | 「それなら土曜日の夜から日曜日は特にありませんね?」 |
P | 「そうだな。突発的に入らなければ特にな」 |
春香 | 「あずささん、あずささんの家ってオーブンとかありますか?」 |
あずさ | 「あるわよ〜。でもあんまり使ったことは無いかしら」 |
春香 | 「あと、調理器具って一通りありますか?」 |
あずさ | 「んー、どれが無いかってよく分からないわ〜」 |
春香 | 「それなら後で必要な道具を書きだすので、無かったら言ってください」 |
あずさ | 「え?それって…」 |
春香 | 「あの…来週の土曜日に一緒に作りましょう。1回見せた方がいいんじゃないかなって」 |
あずさ | 「あー、確かに見た方が分かりやすいわ〜」 |
春香 | 「あ、でも泊まるのって大丈夫ですか?」 |
あずさ | 「大丈夫よ。友達が来ることも考えてあるから」 |
春香 | 「じゃあ夕方まで事務所で待ってますから、それから一緒に帰ってあずささんの家で練習しましょう」 |
あずさ | 「そうしましょう。ありがと〜、春香ちゃん」 |
春香 | 「どういたしましてですっ」 |
……… |
そして翌週の土曜日にあずさのマンションにて… |
春香 | 「おじゃましまーす」 |
あずさ | 「どうぞ〜」 |
春香 | 「うわあ、綺麗ですねー。でもあずささんらしい感じですっ」 |
あずさ | 「そうかしら?ありがとう春香ちゃん」 |
春香 | 「あの、それで持ってきた道具はどこに置けばいいですか?」 |
あずさ | 「こっちのキッチンに置いちゃって。ちょっと休んだらやりましょ」 |
春香 | 「そうですね。あの私の荷物はどうしたらいいですか?」 |
あずさ | 「他のは私の寝室でいいかしら。ちょっと着替えてくるから、今一緒に持っていくわね」 |
春香 | 「ありがとうございます。じゃあこれとこれをお願いします」 |
あずさ | 「分かったわー」 |
……… |
ここはあずさの家のキッチン… |
春香 | 「この作業の時にオーブンを180度に予熱しておきます」 |
あずさ | 「180度に予熱ね」 |
春香 | 「あずささんの家のオーブンって本格的なガスオーブンだったんですね」 |
あずさ | 「オーブン使った料理とかはあんまり作らないから分からないの。だから料理本の通りに作っても上手くいかないときもあるわ」 |
春香 | 「火力とかがオーブンレンジと少し違うから、ちょっとだけ違うかもしれませんね」 |
あずさ | 「そうなのねー」 |
春香 | 「だとすると、自分で加減をみるしかないかもしれないです」 |
あずさ | 「それで次は何かしら?」 |
春香 | 「この卵白を今度はハンドミキサーで泡だててください」 |
あずさ | 「あら〜?さっきは泡だて器だったわね」 |
春香 | 「メレンゲにするんで、さすがに泡だて器だと無理ですよー」 |
あずさ | 「そうなの〜」 |
|
春香 | 「これで完成です。あとは粉砂糖なんか掛けてもいいですよ」 |
あずさ | 「美味しそうね〜。でも、ポイントを押さえてしまえば簡単なのね〜」 |
春香 | 「はい。今度は一人で作ってみますか?」 |
あずさ | 「んー、明日の午前中でもう1回してみようかしら。春香ちゃん見ててくれるのよね?」 |
春香 | 「その時間なら大丈夫です。今日はじゃあ…」 |
ぐぅぅぅ… きゅるるるる… |
そこにお腹が鳴る音が二つ。 |
あずさ | 「…まずは夕食にしましょ。用意してあるから、温めて食べましょ」 |
春香 | 「…ありがとうございます。あずささんの手料理、楽しみですっ」 |
あずさ | 「春香ちゃんのお口に合うかしら〜?ちょっと用意して来るからそっちのテーブルで待ってて」 |
春香 | 「はいっ。じゃあちょっとこっちを片付けてから行きますね」 |
……… |
夕食と今作ったケーキも食べ終わり、ここは… |
あずさ | 「今日のケーキ美味しかったわ〜。ちょっと苦めの大人の味ね」 |
春香 | 「あずささんの希望がそうだったんで、合うレシピにしてきました」 |
あずさ | 「でもちょっと今日は食べ過ぎちゃったかしら、太っちゃうかもしれない〜」 |
春香 | 「むー…あずささんってどうしてそんなにスタイルいいんですかあ?」 |
シャワーを浴びているあずさの横で浴槽に浸かっている春香。そう、お風呂場である。 |
あずさ | 「春香ちゃんだって可愛らしくて素敵よ」 |
春香 | 「でもやっぱりこうして見てると羨ましいです」 |
あずさ | 「春香ちゃんには春香ちゃんの可愛さがあるわ〜。ファンの人はみんなそれに惹かれてるの」 |
春香 | 「そう…ですか?」 |
あずさ | 「ちゃんと自分に自信を持って。春香ちゃんなら大丈夫よ…ねっ」 |
つんっ |
春香のどこかを突いたあずさ。 |
春香 | 「ひゃんっ!ここは敏感なんですからぁ…」 |
あずさ | 「フフフっ、まだ成長期でしょう?春香ちゃんはまだまだこれからよ」 |
春香 | 「は、はいっ」 |
あずさ | 「じゃあ終わったから春香ちゃん交代ね」 |
春香 | 「はーい」 |
ザバンッ ザプンッ |
湯船から出る春香。入れ替わりにあずさが入った。 |
春香 | 「コレ借りちゃっていいんですか?」 |
あずさ | 「いいわよ〜」 |
春香 | 「うわあ、やっぱりあずささんって良いシャンプー使ってるんですね」 |
その夜、あずさのベッドの上には姉妹のように寝る二人の姿があったという… |
え、本番のケーキ?ちゃんと上手くいったそうですよ。余りを食べたプロデューサーも美味しいと言ったくらいですから… |