Traces of Past(昔の面影)

ここはある日の事務所の会議室…
美希「おはよう、ハニー」
「おはよう美希。昨日言った写真あったか?」
美希「写真じゃなくてビデオならあったんだったけど、それでもいい?」
「ああ、それならそれでいいぞ。早速見せてもらっていいか?」
美希「いいよ。でもハニーに見せるのもちょっと恥ずかしいな」
「じゃあちょっと機械を持ってくるから待ってて」
 
数分後
カチャッ ピッ
8ミリテープをテレビに接続した機械にセットしたプロデューサー。
「よし、これで大丈夫だな」
ピッ ウィーーン
テレビに何やら映像が映し出された。
「お、これは神社か?」
美希「うん。ミキは面倒だから良いって言ったのに」
「親ってこういう行事はちゃんとやりたいって思うんだよ」
美希「そうなのかな」
「そういえばこの頃の髪はまだ茶色だったんだな」
美希「だって金髪って染めてたんだもん」
「そういえばどうして金髪にしてたんだ?」
美希「何となくかな。だってミキの家って堅苦しいんだもん」
「親とか何も言わなかったのか?」
美希「別に校則は破ってないから、何も言わなかったよ」
「まあその辺は個人に任せているけどさ」
美希「ハニーは今のと昔の、どっちが好き?」
「どっちも好きだぞ。でもな、イメチェンの時は大変だったんだぞ」
美希「どうして?」
「あのなあ、女性が髪を切ったら何のことか知ってるのか?」
美希「…え?」
「失恋したとかの噂の火消しに苦労したんだぞ」
美希「そっか…でも大ごとにはならなかったよね」
「善永さんに尽力してもらったよ。かなり大変だったんだけどな」
美希「ありがと、ハニー」
チュッ
プロデューサーの頬へとキスをする美希。
「よし、まあこれならディレクターにも使ってもらえそうだな」
美希「あ、でもこのテープには他のも入ってるから編集してね」
「他のも入ってる?」
美希「うん。一応家でこの部分の頭出ししてきたんだ」
「他の部分も見ていいか?」
美希「…いいけど、ちょっと恥ずかしいな」
「そう言われると見たくなっちゃうんだよな」
美希「うー…ハニーが意地悪なの」
「そう言うなって。よし、じゃあ巻き戻してみるか」
ピッピッピッ
プロデューサーによってテープが最初まで巻き戻される。
「後でちゃんとしたテープにダビングか、データにして焼いてあげるからさ」
美希「え?いいの?」
「それくらいは提供してもらったお礼だ。そっちの方がデータ化が楽だからな」
美希「ハニー、サンキュ」
「どういたしましてっと。よし、じゃあ再生っと」
ピッ
再生され始めたテープ。そこに映っていたのは…
「これは…運動会か?」
美希「うん。でも恥ずかしいの…」
「ん?今走っている子が美希か?」
美希「ハニー、よく分かったね」
「まあよく見れば分かるさ。でもこの頃から可愛いな」
美希「そ、そっかな?」
「他の子と何か違うオーラが出ている感じがするぞ」
美希「んー、そういうのはよく分からないの」
「でもどうして恥ずかしいんだ?」
美希「だって、次の興味走だっけ?それがすっごく恥ずかしいんだもん」
「え?」
少し早送りするとその興味走の場面になった。
「アハハっそういうことか」
美希「あー、やっぱりハニー笑ってるしー」
「ゴメンゴメンって、でも先生方もよく1年生にこんな競技させたな」
美希「そうだよね。だって観覧席にいた人も、先生も、他の学年の人もみんな大笑いだよ」
「これはなあ…晒し物と言ってもいいくらいだぞ」
美希「やっと終わったの。本当にここまで見られるなんて思ってなかったの」
「まあいいじゃないか。それで次は?」
美希「次は…学芸会だったかな?」
「今度はまとも…だよな?」
美希「たぶん、確認してなかったけどまともなはずだよ」
少し早送りすると、何やらステージが映し出された。
「美希は何の役だったんだ?」
美希「憶えてないの。でも確か踊ってる役のはずなんだけど、見ても分からなかったの」
「んー…どの子だろ?」
プロデューサーも目を凝らして探し始めた。
「あ、この子じゃないか?」
美希「ホントだ。ハニー、よく見付けたの!」
「髪の色が特徴的だから、かぶり物もしてれば分からないはずさ」
美希「でも、どうかな?」
「今のダンスのキレは昔からなんだな」
美希「でもまだまだ足りないよ。これからもレッスンお願いね」
「それなら今日やって行くか?春香も呼んでるし、次の出演も近いからさ」
美希「うん。ちょっと心配だもん」
「決まりだな。じゃあまずはこのテープのデータ化だな…小鳥さんにお願いしてくる」
美希「ちゃんと返してね。大切な想い出だもん」
「分かってるさ、責任もってちゃんと返すから。しばらく借りるぞ」
美希「あーっ!でも最後だけは見ないで欲しいの!」
「何か見られたくない物でも入ってるのか?」
美希「…本当に恥ずかしいやつだもん。だから小鳥にも見ないでって言っておいて」
「でも編集しなくちゃだから、小鳥さんも見ないのは無理だと思うぞ」
美希「…分かったの。でもハニーは絶対に見ちゃダメなの!」
「しょうがないな。小鳥さんには厳重に処理してもらうように言っておくから」
美希「ハニー、絶対だよ!」
後にプロデューサーが小鳥に聞いたところ、プロデューサーは間違いなく赤面物の映像だったんだとか。
もちろん、後でちゃっかり見せてもらったことは言うまでもない話であった…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
やっとこさたどり着いた11月。
ちょっと子供っぽい画像だったのでこういう形になってしまいました。
実は微妙に去年のから繋がっていたりしますね。去年も七五三に関する画像でしたから。
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2010・10・31SUN
飛神宮子
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